(写真:ロイター)
[ロンドン ロイター]EU(欧州連合)は4月26日、医薬品業界を管理する法律の改正案を公表した。新薬の市場独占期間の短縮などが盛り込まれており、イノベーションへの投資をEU域外に移すと警告する医薬品業界との対立に発展することとなった。
EUのステラ・キリアキデス保健担当委員は記者団に対し、過去20年間で最大となる医薬品法の見直しは、国によって医薬品へのアクセスや価格が大きく異なる状況を解消し、EUのすべての人が革新的新薬とジェネリック医薬品にアクセスできるようにすることが目的だと語った。
改正案で欧州委員会は、ジェネリック医薬品が市場に参入するまでに新薬に与えられる基本的な市場独占の期間を現行の10年間から8年間に短縮することを提案。ただし、新薬を2年以内に27の全EU加盟国で発売すれば2年間、独占期間を延長できるとの条件も用意している。
キリアキデス氏は、こうした見直しによって「新薬にアクセスできる人が7000万人程度増える」と延べた。
患者や消費者団体は、EUの改正案におおむね賛同している。欧州公衆衛生同盟(EPHA)は、業界に対して寛大なインセンティブを改める今回の提案を「EU全体の人々にとって大きな勝利だ」と評価した。
EUと加盟国は今後、改正案の詳細を詰める作業に入るが、それには何年もかかる可能性がある。キリアキデス氏は、欧州委は今回の改革によって「単一の欧州医薬品市場」を構築し、新薬開発投資における欧州の魅力が維持されることを期待していると述べた。
「イノベーションに害」「企業は投資先を選べる」
一方、独バイエルなどの大手からバイオテックに至るまで、製薬業界側は今回の改革は逆効果であり、欧州が最新の治療法に手が届かなくなると指摘している。
デンマーク・ノボ・ノルディスクのラース・フルアーガー・ヨルゲンセンCEOは26日に発表した声明で「今回の提案は、欧州のイノベーションと競争力にとって害である」と批判。英グラクソ・スミスクラインは「資本と投資をどこに振り向けるか、企業には選択肢がある」とし、EUは「成長と競争力のための規制を行わなければならない」と述べた。
今回の改正案では、重要な抗生物質製剤の不足を防ぐため、供給上の問題の可能性をこれまでより早くEUに通知することを企業に義務付ける。さらに、医薬品規制当局を合理化し、新しい治療法の承認審査にかかる時間を短縮することも目指している。
(Maggie Fick、編集:Josephine Mason/Mark Potter/Emelia Sithole-Matarise、翻訳:AnswersNews)