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アクセリード、成長へ踏み込むアクセル…規模拡大で「世界的CRDMOに」

更新日

前田雄樹

創薬支援などを手掛けるアクセリードが、成長へアクセルを踏み込みます。4月1日付で就任した池浦義典社長は3日の記者会見で、早期に売上高を1300億円まで拡大させるとともに、グローバル大手CRO・CDMOと同水準の利益率を目指す方針を表明。将来的には研究者を5000人まで増やす野心的な目標を掲げており、水平分業が広がる中、規模拡大で世界的なCRDMOを目指します。

 

 

CROで1000億円、CDMOで300億円

アクセリードの中核的な事業会社であるAxcelead Drug Discovery Partners(ADDP、神奈川県藤沢市)は、武田薬品工業の創薬機能の一部をスピンアウトする形で2017年1月に創薬支援事業を開始。20年に持株会社のアクセリード(東京都港区)を設立し、持株会社体制に移行しました。21年には米バイオ医薬品企業アークトゥルス・セラピューティクスとmRNAワクチン・医薬品の受託製造を手掛ける合弁会社ARCALIS(千葉県柏市)を設立。現在は、アクセリードの傘下にADDPやARCALISなど4社が収まる事業体制となっています。

 

【アクセリードの事業体制】帝人/帝人ファーマの研究機能を活用した創薬支援の合弁会社設立で合意|非臨床CRO(創薬支援)/Axcelead Drug Discovery Partners/2017年に武田薬品工業のプラットフォームを承継して事業を開始|CDMO(mRNA医薬品)/ARCALIS/米アークトゥルスとの合弁会社2021年設立|DDS(経皮投与技術)/PassPort Technologies/2019年から協業2021年に100%子会社化|創薬DX/A-Digital/日立ハイテクからCHIPS事業を承継2022年に100%子会社化

 

4月1日付でアクセリードの社長に就任した池浦義典氏は、ADDPの立ち上げ時から社長を務め、21年にアクセリードのCTO(最高技術責任者)に就任。ADDP設立以前は、武田薬品の炎症疾患領域創薬ユニット長や湘南研究所サイトヘッドなどを歴任しており、約30年間にわたる研究経験をもとにアクセリードグループの創薬支援事業を率いてきました。

 

グローバル大手と同水準の利益率目指す

池浦氏は3日に開かれた就任記者会見で「アクセリードグループはグローバルなCRDMO(CRO+CDMO)を目指す」と強調。「CRO(創薬支援)事業で1000億円、CDMO事業で300億円の売り上げを達成したい」との目標を示しました。ADDPのCRO事業を主とするアクセリードグループの現在の売上高は100億円程度。目標の達成時期については現時点で「できるだけ早期に」と述べるにとどめましたが、CRO事業の海外展開やCDMO事業の本格的な始動によって急成長を狙います。

 

環境変化を背景に製薬業界では水平分業が進んでおり、これを追い風にCROやCDMOのマーケットは大きく拡大。グローバル市場には、チャールズリバー(米)、ウーシー(中国)、サムスン(韓国)、キャタレント(米)、ロンザ(スイス)といった大手のCRO・CDMOがひしめいており、アクセリードと同様にCROとCDMOを組み合わせたCRDMOとして事業を展開している企業もあります。

 

会見で池浦氏は、アクセリードの競合優位性について「ほぼすべての従業員が製薬企業での経験を持ち、創薬に必要なすべての機能が1つの会社に揃っている」と話し、こうした大手のグローバル企業と同水準の利益率を目指していく考えを示しました。

 

研究者5000人採用

成長のカギとなるのが規模の拡大です。アクセリードは将来的に社内の研究者を5000人まで増やすという目標を掲げています。国内の医薬品製造販売業者で研究部門に従事する人が2万4838人(2021年度、厚生労働省の医薬品・医療機器産業実態調査)であることを考えると、5000人は極めて高い目標です。

 

アクセリードは今年2月、帝人と創薬支援サービスを手掛ける合弁会社の設立に向けて基本合意書を交わしました。帝人ファーマの創薬研究機能(技術、施設・設備、人員)の一部を合弁会社に移し、合弁会社はこれを中核的な経営資源として事業を展開。池浦氏は「これにより創薬支援事業の機能強化、人材、技術、キャパシティの面で非常に大きな発展を遂げることができる」と話しました。

 

池浦氏は「今回の帝人との提携のように、日本に新たな創薬モデルを構築できるようなスキームをつくっていきたい」とし、今後も同様の取り組みを進めていく方針。23年度中に複数の提携を進めたいとの考えを示しました。国内企業との提携だけでなく、海外CROなどのM&Aも視野に入れています。

 

CDMO、mRNA工場が今年本格稼働

CDMO事業では、福島県南相馬市に建設しているmRNAワクチン・医薬品の原薬工場が今年、稼働を始める予定。ARCALISはすでに、MeijiSeikaファルマ、豪CSLの子会社CSLセキーラスとmRNAワクチンの受託製造について協議を始めており、ほかの企業からもコンタクトがあるといいます。

 

COVID-19ワクチンでの実用化を商機ととらえ、mRNAワクチン・医薬品の分野には国内外の多くのCDMOが参入しています。アクセリードは、ARCALISとADDPの連携によって創薬からGMP製造まで一貫して受託できる点を強みとしてプレゼンスを確保したい考えで、両社は昨年7月から「統合型」の創薬支援サービスを開始。アクセリードは今年1月、mRNA医薬品に6年ほど前から取り組んでいるバイオベンチャーのナノキャリアと包括的な協業に関する契約を結ぶなど、この分野を強化しています。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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