2023年3月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】レット症候群治療薬「Daybue」やメルケル細胞がん治療薬「Zynyz」など
「Zavzpret」米ファイザー
CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)受容体拮抗薬「Zavzpret」(一般名・zavegepant hydrochloride)は、片頭痛の急性期治療に使用する経鼻スプレー。臨床試験では、主要評価項目の「投与後2時間での頭痛・厄介な症状の消失」でプラセボに対する優位性が示され、投与後最短15分で痛みが軽減することが確認されました。予防適応で経口薬の開発も進んでおり、臨床第2相(P2)試験を実施中です。
「Daybue」米アカディア・ファーマシューティカルズ
「Daybue」(trofinetide)は、米国初のレット症候群治療薬。レット症候群は主にMECP2遺伝子変異によって引き起こされるまれな神経発達障害で、女性に多く発症することが知られています。同薬は豪ネオレン・ファーマシューティカルズが創製したIGF-1のアミノ末端トリペプチドアナログ。アカディアは2018年に北米での権利を取得し、開発を進めてきました。北米以外の地域ではネオレンがP3試験を実施中です。
「Zynyz」米インサイト
抗PD-1抗体「Zynyz」(retifanlimab)は、成人の転移性または再発性の局所進行メルケル細胞がん治療薬。客観的奏効率と奏功期間で良好な成績を示したP2試験の結果をもとに迅速承認を取得しました。インサイトは米マクロジェニックスから2017年に同薬を導入。非小細胞肺がんや肛門管扁平上皮がん、子宮内膜がんなどでも臨床試験を進めています。
「Joenja」オランダ・ファーミング
「Joenja」(leniolisib phosphate)は、米国で初となる活性化PI3K-delta症候群(APDS)治療薬。12歳以上の患者に使用されます。APDSはまれな進行性の原発性免疫不全症。同薬はスイス・ノバルティスが創製した選択的PI3Kδ阻害薬で、ファーミングは2019年に独占的ライセンスを取得しました。欧州でも申請中です。
「Rezzayo」米シダラ
抗真菌薬「Rezzayo」(rezafungin)は、カンジダ血症と侵襲性カンジダ症の治療薬。代替治療が限られる、またはない患者に対し、週に1回投与します。これらの適応に対する新薬は約10年以上ぶり。米国では商業化権を持つ米メリンタが販売を行う予定です。日本ではシダラが権利を保持。日米以外の地域では英ムンディファーマがライセンスを有しており、昨年、同社が欧州で申請を行いました。
【適応拡大】「Tafinlar」+「Mekinist」の低悪性度神経膠腫など
「Livmarli」米ミラム・ファーマシューティカルズ
アラジール症候群に伴う胆汁うっ滞性そう痒症治療薬「Livmarli」(maralixibat chloride)は、生後3カ月~1歳未満の小児に対象を拡大しました。アラジール症候群患者の大半は1歳未満で診断されるといい、早期からの治療が可能になります。同薬は胆汁酸トランスポーター阻害薬で、欧州ではミラムが昨年12月に生後2カ月以上の患者を対象に承認を取得。日本では武田薬品工業が権利を持っており、アラジール症候群と進行性家族性肝内胆汁うっ滞症の適応でそれぞれP3試験を実施中です。
「Tafinlar」+「Mekinist」スイス・ノバルティス
BRAF阻害薬「Tafinlar」(dabrafenib)とMEK阻害薬「Mekinist」(trametinib)の併用療法は、BRAF V600E変異陽性の低悪性度神経膠腫に適応拡大。全身療法を必要とする1歳以上の小児患者が対象となります。同時に、従来の固形剤に加えて液体製剤も承認されました。臨床試験では、標準治療と比べて奏効率と無増悪生存期間の中央値を有意に改善。日本でもP2試験を進行中です。
「Evkeeza」米リジェネロン・ファーマシューティカルズ
ホモ接合体家族性高コレステロール血症治療薬「Evkeeza」(evinacumab)は、5~11歳の小児に対象が広がりました。脂質低下療法の補助療法として使用します。ピボタル試験では、脂質低下療法を受けている患者に追加投与することで、24週目にLDLコレステロール値をベースラインから48%減少させました。同薬は抗ANGPTL3抗体で、米国と欧州では12歳以上を対象に2021年に承認。日本ではP3試験が行われています。