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ヒトへの感染例も…世界的に流行する鳥インフルエンザ、ワクチンの備えは

更新日

ロイター通信

仏カステルノー・トゥルサンのアヒル農場(2023年1月24日撮影、ロイター)

 

[ロンドン ロイター]インフルエンザワクチンを手掛ける製薬企業は、世界的に流行している鳥インフルエンザが種の壁を超えてヒトに広がった場合、数カ月以内に数億回分のヒト用ワクチンを製造することができるとの見通しを示している。

 

現在流行しているのは「H5N1クレード2.3.4b」と呼ばれるウイルスだ。世界各国で記録的な数の鳥が死に、哺乳類への感染も確認されている。ヒトに感染するケースは極めてまれで、WHO(世界保健機関)はヒトへの感染リスクはまだ低いとしている。

 

ワクチンメーカー3社(英グラクソ・スミスクライン、米モデルナ、豪CSLセキーラス)の幹部はロイターに対し、将来のパンデミックに対する備えとして、現在循環している亜型により適合したヒト用ワクチンのサンプルをすでに開発中か、これからテストするところだと述べた。仏サノフィのように、既存のH5N1ワクチン株の在庫があり、必要に応じて製造を開始する「準備が整っている」とする企業もある。ヒト用よりもはるかに大きな市場になり得る家禽用鳥インフルエンザワクチンの開発に乗り出そうとする企業も出てきた。

 

「COVIDよりはるかにひどい買い占め」懸念

グローバルヘルスの専門家らは、ヒトへの投与が可能な鳥インフルエンザワクチンのほとんどは富裕国に偏っているため、あまりに心もとないと言う。

 

多くの国のパンデミック計画では、ワクチンの供給が限られている間は最も弱い立場の人々を優先して接種を行うべきだとされている。COVID-19の際は、多くのワクチン保有国で国民の大部分が接種したあと、他国への共有が検討された。

 

ワクチン研究に資金を提供するCEPI(感染症流行対策イノベーション連合)の最高責任者を務めるリチャード・ハチェット博士は「新型インフルエンザが流行すれば、COVID-19の時よりはるかにひどいワクチンの買い占めと『ワクチン国家主義』の問題が起こる可能性がある」と指摘する。

 

新型インフルエンザに関する国際的な枠組みでは、WHOは世界で供給されるワクチンの10%を低・中所得国に割り当てることになっている。ただ、WHOはCOVID-19で起こったことを踏まえ、ほかの種類のパンデミックについては世界供給量の20%の保証を求めている。

 

WHOは新型インフルエンザワクチンの供給について、メーカー14社と法的拘束力のある合意を結んでいる。WHOによると、協定にはGSK、サノフィ、CSLセキーラスといった季節性インフルエンザワクチンの大手メーカー6社が含まれるという。

 

WHOは新型インフルエンザのパンデミックでワクチンの買い占めが起こる可能性についてコメントしていないが、そうした懸念に対応するために「各国が競争でなく協力する」仕組みを構築中だとしている。さらに、メーカーと加盟国がそれぞれの責務を果たすことを「十分に確信している」と強調している。

 

万が一、新型インフルエンザのパンデミックが起こった場合、ワクチンメーカーは季節性インフルエンザワクチンの生産を中断し、かわりに新型インフルエンザワクチンを生産することになる。ワクチンメーカーはすでに数億回分を生産する能力を持っている。

 

パンデミック用ワクチンは、ヒトを対象とした臨床試験で得られた安全性や免疫原性に関するデータに基づいて事前に承認されている。これは、季節性インフルエンザと同じプロセスであり、ウイルス株の調整は必要となるにしても、あらためてそれで臨床試験を行わなくて済むことを意味している。実際の感染予防効果はリアルタイムで収集されることになる。

 

WHOによると、H5型インフルエンザに対して承認されているワクチンはすでに20種類近くある。既存の抗インフルエンザウイルス薬も影響を緩和するのに役立つだろう。

 

新しいアプローチ

一方、大量生産には課題がある。承認されているワクチンの一部は旧来の生産方法を採用しており、ワクチンに使うウイルスを鶏卵で4~6カ月かけて培養する。大規模生産に移行するには数カ月かかる可能性があり、CSLセキーラスのグローバルメディカルストラテジー責任者、ラジャ・ラジャラム氏は「最初のドーズを作るのは簡単だ。最も難しいのは大量に生産すること」と指摘する。

 

専門家らは長年にわたり、季節性と新型の両方で、ワクチン開発の新たなアプローチを提唱してきた。COVID-19ではmRNA技術の可能性が証明された。mRNAワクチンはウイルス自体を培養する従来の方法と異なり、病原体の遺伝情報を活用するため、変化するウイルスにより迅速に適応することができる。

 

モデルナの感染症担当エグゼクティブディレクター、ラファエル・ナハバガウアー氏によると、同社のmRNAワクチン研究は新型インフルエンザから始まり、COVID-19によって改良されたという。

 

同社は今年前半に、新しい鳥インフルエンザの亜型に合わせたmRNAパンデミックワクチンの小規模なヒト試験を開始する予定だ。ナハバガウアー氏は、モデルナはアウトブレイクシナリオに「非常に迅速に」対応できると強調するが、季節性インフルエンザを対象に開発中のワクチン候補は臨床試験結果がまちまちで、パンデミックワクチンの臨床試験は注意深く見守られることになる。

 

(Jennifer Rigby/Sybille de la Hamaide、編集: Hugh Lawson/Michele Gershberg、翻訳:AnswersNews)

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