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「コロナクリフ」に直面する欧米製薬企業…ワクチン・治療薬、売り上げ急減

更新日

ロイター通信

ファイザー/ビオンテックの小児用新型コロナウイルスワクチンの空のバイアル(米ペンシルベニア州の薬局で2022年5月撮影、ロイター)

 

[ニューヨーク ロイター]新型コロナウイルス感染症のワクチン・治療薬で数十億ドルを稼ぎ出した欧米の製薬企業は、それらの急激な売り上げ減少に直面しており、投資家からは手にした資金を賢く使うよう圧力を受けている。

 

米国のファイザー、モデルナ、ギリアド・サイエンシズ、メルク、独ビオンテック、英アストラゼネカといった欧米の製薬企業は、2022年に新型コロナウイルスワクチン・治療薬から約1000億ドルの収入を得たと推定される。

 

企業やアナリストの予測によると、これらに最も多くの費用を払っている国々を含め、世界中で在庫が積み上がっており、23年の売り上げは昨年から3分の2近く減少する可能性があるという。ワクチン接種や過去の感染による集団免疫は、治療薬への需要を押し下げる要因となる。

 

特許切れとジェネリック医薬品参入によって売り上げが急激に減少する「パテントクリフ(特許の崖)」は製薬企業にとって宿命だが、これに対しては何年も前から対策を練ることができる。モーニングスターのアナリスト、ダミアン・コノーバー氏は「医薬品やワクチンの開発と売り上げは通常、長期間に分散するものだが、新型コロナの場合、非常に短い期間に集中している」と指摘。急激な収入減少は、企業に新たなパートナーとの取引や提携を促すはずだと話した。

 

「効果的に資金を使っていないことに不満」

BMOキャピタル・マーケッツのアナリスト、エヴァン・セイガーマン氏は、企業は新型コロナワクチン・治療薬の販売で得た資金を変革的な取引に使うべきだと話す。同氏は、ファイザーが54億ドルを投じた米グローバル・ブラッド・セラピューティクス買収と、116億ドルを投じた米バイオヘブン・ファーマシューティカルズ買収を引き合いに出し、「ファイザーはポートフォリオ構築のために大型の買収を行ったが、もっと大きくてインパクトのあるM&Aを行う必要があると思う」と語った。ファイザーはパンデミックの恩恵を最も受けた製薬企業で、mRNAワクチン「コミナティ」と経口抗ウイルス薬「パキロビッド」から22年に560億ドル以上の収益を上げた。

 

ファイザーの新型コロナウイルス感染症治療薬「パキロビッド」(左)とメルクの同ラゲブリオ(イタリアの病院で2022年2月撮影、ロイター)

新型コロナウイルス感染症治療薬「パキロビッド(海外製品名・Paxlovid)」と「ラゲブリオ」(イタリアの病院で2022年2月撮影、ロイター)

 

ファイザーは、これらの収益が23年には215億ドル程度まで落ち込むと見込んでいるが、この予想は楽観的すぎると考えるアナリストもいる。JPモルガンのアナリスト、クリス・ショット氏は「新型コロナ関連の収益が24年以降、増加するかどうかについては依然として懐疑的だ」とし、ワクチン接種率は昨年のブースター接種以上に大きく低下する可能性があると指摘する。

 

ワクチンメーカーのモデルナも、今年の売り上げは大幅に減少すると予想している。同社にとって唯一の製品である新型コロナワクチンは昨年、約184億ドルを売り上げた。アナリストは今年はそれが70億ドル程度に減少すると予想している。同社は今月末に22年12月期決算を発表する予定だ。オッペンハイマー・アンド・カンパニーのアナリスト、ハルタイ・シン氏は「23年、24年の収益減少に備え、モデルナが効果的に資金を使っていないことに不満を抱いている」と話している。

 

モデルナの株価はここ数カ月で上昇している。しかし、2月3日の終値173.25ドルは、21年8月に500ドル近くまで上昇した「パンデミックハイ」と比べると65%以上下がっている。シン氏は「手をこまねいている間に株価が不調となった企業の例もある。モデルナもその道をたどる可能性がある」と警告している。

 

出荷を待つモデルナの新型コロナウイルスワクチン(米ミシシッピ州にある医薬品流通会社の配送センターで2020年12月撮影、ロイター)

出荷を待つモデルナの新型コロナウイルスワクチン(米ミシシッピ州にある医薬品流通会社の配送センターで2020年12月撮影、ロイター)

 

「成長の原動力ではない」

ほかの企業は、新型コロナ関連の事業から受ける影響はより小さいと見ている。米メルクのロブ・デイビスCEOはインタビューで、同社の経口抗ウイルス薬「ラゲブリオ」について「われわれはラゲブリオを成長の原動力として期待しているわけではない」とし、「われわれはラゲブリオを、必要な時に有意義な変化をもたらす機会だと考えてきた」と述べた。

 

メルクは同薬の昨年の売上高を57億ドルと報告している。アナリストは、今年の売り上げは10億ドルを下回ると予想している。同社の22年の総売上高は590億ドル超だった。

 

米イーライリリーは昨年、新型コロナ向けの抗体製剤で20億ドルの収益を得たが、今年は売り上げを見込んでいない。米FDA(食品医薬品局)は昨年11月、同社の抗体製剤bebtelovimabについて、流行中のオミクロン株の亜種に効果がないとして緊急使用許可を取り下げた。同社のデイビッド・リックスCEOはインタビューで「われわれは新型コロナにうまく対処した。稼いだ資金でわれわれが行ったことは、主に研究開発への再投資だ。昨年はリリーにとって記録的な研究開発費を投じた年となった」と語った。

 

(Michael Erman/Patrick Wingrove/Khushi Mandowara、編集:Caroline Humer/Bill Berkrot、翻訳:AnswersNews)

 

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