(写真:ロイター)
[ロイター]新型コロナウイルスワクチンメーカーの米ノババックスの株価が3月1日、急落した。事業継続をめぐって不透明感が高まったためで、株価は一時28.3%安い6.64ドルまで下落。最終的に26%近く下げてこの日の取引を終えた。
創業35年で新型コロナワクチンが唯一の製品である同社は2月28日、2023年の収入や米国政府からの資金支援、Gaviワクチンアライアンスとの係争をめぐって「重大な不確実性」があると表明した。
Gaviはロイターに対し、事前購入契約の一環としてノババックスに支払われた前払い金を回収する権利を留保すると述べ、法的手続きが進行中だとしてそれ以上のコメントは避けた。
ノババックスのワクチンは従来型のタンパク質ベースのワクチンだ。米モデルナや同ファイザー/独ビオンテックのワクチンに採用されたmRNA技術に懐疑的な人を取り込むことを期待していたが、製造上の問題で実用化が遅れ、主要市場での普及は低調だった。
ノババックスのワクチンは21年12月にEU(欧州連合)で、22年7月に米国で使用が許可された。しかし、米国で接種されたのは8万回分にとどまり、EU/EEA(欧州経済領域)諸国でも約1300万回分の供給に対して接種されたのは21万9395回分にすぎない。
参入の遅れ響く
ノババックスはほかの新型コロナワクチンメーカーと同様に、今後想定されるワクチンの接種方法の変更に向けて準備を進めている。世界各国の規制当局は、季節性インフルエンザの予防接種と同じように年1回接種を行うことを検討している。
メーカーは毎年、流行株にあわせてワクチンを変更する必要がある。ノババックスのジョン・ジェイコブスCEOは、タンパク質ベースのワクチンはmRNAワクチンよりも製造に時間がかかるため、同社は短期的なリスクに直面していると話している。
ジェフリーズのアナリストは、ノババックスのピーク時の市場シェアを25%から15%に引き下げ、目標株価も引き下げた。Bライリー証券のアナリストも目標株価を引き下げている。
調査会社サード・ブリッジのヘルスケア・グローバルセクター・リード、リー・ブラウン氏は「各国がポストパンデミックに移行する中、参入の遅れを考えればノババックスが抱える課題は当然のものだと言える」と指摘。「ブースター市場には大きなポテンシャルがあるが、そこでノババックスが主要なプレイヤーになることは期待できない」と述べた。
ノババックスの株価は最高値となった21年2月の331.68ドルから97%下落。昨年1年間で93%下げており、年間のパフォーマンスは過去最低となった。
(Amanda Cooper/Natalie Grover/Amruta Khandekar/Bhanvi Satija、編集:Uttaresh Venkateshwaran/Mark Potter/Shinjini Ganguli、翻訳:AnswersNews)