海外大手製薬企業の2022年12月期決算のハイライトを、ビジュアルをまじえてお届けします。随時更新(最終更新2月27日)。
米ファイザー(1月31日発表)
売上高1003億3000万ドル(約13兆547億円、前期比23%増)、純利益313億7200万ドル(43%増)。新型コロナウイルスワクチン「コミナティ」は378億600万ドル(3%増)、新型コロナ治療薬「パクスロビド」(日本製品名・パキロビッド)は189億3300万ドルを売り上げた。肺炎球菌ワクチン「プレベナー」やトランスサイレチン型心アミロイドーシス治療薬「ビンダケル/ビンマック」なども売り上げを大きく伸ばし、抗凝固薬「エリキュース」も堅調だった。23年12月の売上高は、29~33%減の670億ドル~710億ドルを予想。コミナティは64%減の135億ドル、パクスロビドは58%減の80億ドルを見込む。
スイス・ロシュ(2月2日発表)
売上高632億8100万スイスフラン(8兆9800億円、前期比1%増)、純利益135億3100万スイスフラン(9%減)。医薬品事業の売上高は前期比1%増の455億5100万スイスフラン。新型コロナウイルス感染症の治療にも使われる抗IL-6受容体抗体「アクテムラ」(27億100万スイスフラン、22%減)が落ち込んだものの、多発性硬化症治療薬「Ocrevus」(60億3600万スイスフラン、17%増)や血友病治療薬「ヘムライブラ」(38億2300万スイスフラン、27%増)などが拡大。22年に発売した加齢黄斑変性/糖尿病黄斑浮腫治療薬「バビースモ」の売上高は5億9100万スイスフランだった。23年12月期はコロナ関連の治療薬や検査薬の売り上げが大幅に減少すると予想しており、売上高は恒常為替レートで1桁台前半の減収となる見通し。
米メルク(2月2日発表)
売上高592億8300万ドル(約7兆6238億円、前期比22%増)、純利益145億1900万ドル(18%増)。免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」が前期比22%増の209億3700万ドルを売り上げたほか、HPVワクチン「ガーダシル/ガーダシル9」も22%増と好調だった。新型コロナウイルス感染症治療薬「ラゲブリオ」の売上高は56億8400万ドル(前期は9億5200万ドル)。23年12月期は売上高572億~587億ドルを予想。ラゲブリオの販売が大幅に減少する見込み。
米アッヴィ(2月9日発表)
売上高580億5400万ドル(約7兆5739億円、前期比3.3%増)、純利益118億4500万ドル(2.6%増)。自己免疫疾患領域の製品である抗TNFα抗体「ヒュミラ」(212億3700万ドル、2.6%増)、抗IL-23p19抗体「スキリージ」(51億6500万ドル、75.7%増)、JAK阻害薬「リンヴォック」(25億2200万ドル、52.8%増)が業績をけん引した。23年12月期は減益を見込んでおり、調整後EPS(1株あたり純利益)は10.70~11.10ドル(22年12月期は13.77ドル)と予想。米国でバイオシミラーが参入したヒュミラが大きく売り上げを落とす見通し。
米ジョンソン・エンド・ジョンソン(1月24日発表)
医薬品事業の売上高は525億6300万ドル(約6兆8500億円、前期比1.7%増)。多発性骨髄腫治療薬「ダラザレックス」が前期比32.4%増の79億7700万ドルを売り上げたほか、乾癬・クローン病治療薬「ステラーラ」や前立腺がん治療薬「アーリーダ」などが堅調だった。新型コロナウイルスワクチンの売上高は21億7900万ドルで、前期から8.6%減少した。他事業を含む全社の売上高は949億4300万ドル(1.3%増)、純利益は179億4100万ドル(14.1%減)。23年12月期は全社で969億~979億ドルの売り上げを見込む。
スイス・ノバルティス(2月1日発表)
売上高505億4500万ドル(約6兆5200億円、前期比2%減)、営業利益91億9700万ドル(21%減)、純利益69億5500万ドル(71%減)。慢性心不全・高血圧症治療薬「エンレスト」(46億4400万ドル、31%増)や多発性硬化症治療薬「ケシンプタ」(10億9200万ドル、194%増)などが好調で、新薬を中心とするイノベーティブ・メディスン事業の売上高は為替変動の影響を除いて前期比4%増の413億ドルだった。後発医薬品子会社サンドの売上高は92億ドル。前期にスイス・ロシュ株の売却益を得た反動で利益は大幅に減少した。23年12月期は恒常為替レートで1桁台前半~半ばの増収を予想。下期にはサンドのスピンオフを行う予定。
英アストラゼネカ(2月9日発表)
売上高443億5100万ドル(約5兆8100億円、前期比19%増)、営業利益37億5700万ドル(255.8%増)、純利益32億9300万ドル(前期は1億1500万ドル)。SGLT2阻害薬「フォシーガ」(43億8100万ドル、46%増)や血液がん治療薬「カルケンス」(20億5700万ドル、66%増)などが好業績を牽引。新型コロナウイルス感染症関連では、ワクチン「バキスゼブリア」が54%減の17億9800万ドルとなった一方、治療薬「エバシェルド」は21億8500万ドルを売り上げた。23年12月期は、恒常為替ベースで1桁台前半~半ばの増収を予想。新型コロナ関連製品の売上高は大きく減少する見込み。
仏サノフィ(2月3日発表)
売上収益429億9700万ユーロ(約6兆1140億円、前期比13.9%増)、純利益67億2000万ユーロ(8.0%増)。抗IL-4/13受容体抗体「デュピクセント」が恒常為替レートで前期比43.8%増の82億9300万ユーロを売り上げ、業績を牽引。トラベルワクチンやブースターワクチン需要の回復でワクチン事業は6.3%の増収となった。23年12月期は、調整後EPS(1株当たり利益)で1桁台前半の成長を見込む。
米ブリストル・マイヤーズスクイブ(2月2日発表)
売上高461億5900万ドル(約5兆9409億円、前期比0.5%減)、純利益63億4500万ドル(15%減)。抗凝固薬「エリキュース」(117億8900万ドル)や免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」(82億4900万ドル)は前期から10%売り上げを伸ばしたが、後発医薬品との競争が激しくなっている抗がん剤「レブラミド」が大きく売り上げを落とした。23年12月期は約2%の増収を見込んでいる。
英グラクソ・スミスクライン(2月1日発表)
売上高293億2400万ポンド(約4兆6700億円、前期比19%増)、営業利益64億3300万ポンド(48%増)、純利益156億2100万ポンド(前期比約3倍)。医薬品事業の売上高は112億6900万ポンド(37%増)で、新型コロナウイルスに対する中和抗体「ゼビュディ」は前期比約2.5倍の23億900万ポンドを売り上げた。抗HIV薬の売上高は57億4900万ポンド(20%増)。23年12月期は恒常為替レートで6~8%の増収を見込む。新型コロナ関連の製品の影響は含まない。
米イーライリリー(2月2日発表)
売上高285億4100万ドル(約3兆6734億円、前期比1%増)、純利益62億4500万ドル(12%増)。GLP-1受容体作動薬「トルリシティ」が74億4000万ドル(15%増)と好調で、乳がん治療薬「ベージニオ」や乾癬治療薬「トルツ」、SGLT2阻害薬「ジャディアンス」なども堅調だった。23年12月期は売上高303億~308億ドルと増収を予想している。
米ギリアド(2月2日発表)
売上収益272億8100万ドル(約3兆5970万円、前期比0.1%減)、営業利益73億3000万ドル(26.1%減)、純利益45億6600万ドル(26.4%減)。抗HIV薬「ビクタルビ」(103億9000万ドル、20.5%増)やCAR-T細胞療法「イエスカルタ」(11億6000万ドル、66.9%増)などの販売が伸びたものの、新型コロナウイルス感染症治療薬「ベクルリー」の売上高が前期比29.8%減の39億500万ドルと落ち込んだ。23年12月期は、製品売上高260~265億ドル(22年は270億円)と減収の見通し。ベクルリーは約20億ドルを予想する。
米アムジェン(1月31日発表)
売上高263億2300万ドル(約3兆4250億円、前期比1%増)、純利益65億5200万ドル(11%増)。関節リウマチ・骨粗鬆症治療薬「プラリア」(36億2800万ドル、12%増)や高コレステロール血症治療薬「レパーサ」(12億9600万ドル、16%増)などが好調。肺がん治療薬のKRAS阻害薬「ルマケラス」は2億8500万ドルだった。23年12月期は260億~272億ドルの売り上げを予想。ホライゾン・セラピューティクス(アイルランド)買収の影響は含まない。
デンマーク・ノボノルディスク(2月1日発表)
売上高1769億5400万デンマーククローネ(約3兆3621億円、前期比26%増)、純利益555億2500万デンマーククローネ(16%増)。「リベルサス」「オゼンピック」などの糖尿病向けGLP-1受容体作動薬が前年比56%増と好調で、肥満症治療薬「Wegovy」も前期比346%増となる61億8800万デンマーククローネを売り上げた。23年12月期は恒常為替レートで13~19%の増収を見込む。
米モデルナ(2月23日発表)
売上高192億6300万ドル(2兆5985億円、前期比4.3%増)、純利益83億6200万ドル(31.5%減)。新型コロナウイルスワクチンの売上高は184億ドルで、前期から4%増加した一方、研究開発費や販管費の増加によって利益は減少した。23年12月期は、同年納入分として約50億ドルの購入契約を結んでいる一方、研究開発費・販管費として約60億ドル(うち研究開発費は約45億ドル)を見込んでおり、赤字になる可能性がある。
米バイオジェン(2月15日発表)
売上高101億7300万ドル(約1兆3600億円、前期比7%減)、純利益29億6160万ドル(71%増)。抗CD20抗体のロイヤリティ収入が17億100万ドル(3%増)と伸びた一方、「タイサブリ」などの多発性硬化症治療薬(計54億3020万ドル、11%減)や脊髄性筋萎縮症治療薬「スピンラザ」(17億9350万ドル、6%減)など主力品が売り上げを落とした。アルツハイマー病治療薬「アデュヘルム」の売上高は480万ドル(前期は300万ドル)だった。23年12月期は1桁台半ばの減収を見込む。