2022年12月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】遺伝子治療薬「Adstiladrin」や年2回投与の抗HIV薬「Sunlenca」など
「Rezlidhia」米ライジェルファーマシューティカルズ
IDH1阻害薬「Rezlidhia」(一般名・olutasidenib)は、IDH1遺伝子変異を有する再発・難治性の急性骨髄性白血病治療薬。変異型IDH1に結合することで2-ヒドロキシグルタル酸の濃度を下げ、骨髄系細胞の正常な分化を回復させると期待されています。ライジェルは2022年8月に米Formaセラピューティクスから全世界を対象に同薬の権利を取得しており、米国以外の国では提携を通じて開発を進めていく考えです。
「Krazati」米ミラティ・セラピューティクス
「Krazati」(adagrasib)は、米国で2剤目となるKRAS G12C阻害薬。「局所進行または転移性の非小細胞肺がん」の適応で迅速承認を取得しました。対象は、1つ以上の全身療法を受けた患者。臨床試験での奏効率は43%で、奏功期間は中央値で8.5カ月でした。
「Adstiladrin」スイス・フェリングファーマシューティカルズ
「Adstiladrin」(nadofaragene firadenovec)は、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)ベースの遺伝子治療薬。適応は高リスク・BCG不応の筋層非浸潤性膀胱がんで、乳頭状腫瘍の有無にかかわらず上皮内がん(CIS)のある患者が対象です。膀胱がんに対する遺伝子治療は米国初。日本でも臨床第3相(P3)試験を実施中です。
「Sunlenca」米ギリアド・サイエンシズ
年2回投与のHIV感染症治療薬「Sunlenca」(lenacapavir)は、ファーストインクラスのカプシド阻害薬。ほかの抗レトロウイルス薬と併用します。対象となるのは、治療経験が多く、多剤耐性を有する成人患者。長時間作用型の皮下注剤とともに、注射剤の投与前に服用する錠剤も承認されました。欧州でも昨年8月に承認されており、日本ではP3試験の段階にあります。
「Lunsumio」米ジェネンテック
抗CD20/CD3バイスペシフィック抗体「Lunsumio」(mosunetuzumab)は、再発・難治性の濾胞性リンパ腫治療薬。2つ以上の全身療法を受けた患者が対象です。80%の患者で持続的な奏功がみられたP2試験の結果をもとに迅速承認されました。欧州では昨年6月に承認を取得。日本ではP3試験を実施中です。
「Nexobrid」イスラエル・メディウンド
「Nexobrid」(anacaulase)は、重度の熱傷に対する熱傷焼痂除去剤。パイナップル茎から得られる精製物を有効成分としており、タンパク質分解作用によって熱傷で壊死した組織を除去します。欧州でも承認済み。日本では先月、導出先の科研製薬が承認を取得しました。
「Briumvi」米TGセラピューティクス
抗CD20抗体「Briumvi」(ublituximab)は、再発型の多発性硬化症治療薬。B細胞を効率的に減少させる作用を持っており、臨床試験ではピリミジン合成阻害薬teriflunomideと比べて再発率を有意に低下させました。
【適応拡大】「Actemra」の新型コロナ、「Vraylar」の大うつ病性障害補助療法など
「Tecentriq」米ジェネンテック
免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-L1抗体「Tecentriq」(atezolizumab)は、切除不能または転移性の胞巣状軟部肉腫(ASPS)に適応拡大。同適応に対する治療薬は初めてとなります。ASPSは若年層に多く見られる疾患で、予後が悪いことで知られています。
一方、2017年に迅速承認を取得した「局所進行または転移性の尿路上皮がん」の適応は取り下げました。検証的P3試験で全生存期間の主要評価項目を達成できなかったためです。
「Vraylar」米アッヴィ
抗精神病薬「Vraylar」(cariprazine hydrochloride)は、抗うつ薬による治療を受けている成人大うつ病性障害患者の補助療法として新たに承認されました。同薬はドパミンD3/D2受容体部分作動薬。米国では統合失調症、双極性躁病、双極I型障害の適応で承認されており、欧州ではゲデオン・リヒター(ハンガリー)が「Reagila」の製品名で販売しています。日本ではアッヴィが統合失調症治療薬としてP3試験を進めています。
「Actemra」米ジェネンテック
抗IL-6受容体抗体「Actemra」(tocilizumab)は、入院中の新型コロナウイルス感染患者に使用できるようになりました。対象は、コルチコステロイドの全身投与を受けており、酸素補給、人工呼吸器またはECMOを必要とする成人患者。同薬は2歳以上の入院患者に対して2021年6月に緊急使用許可(EUA)を取得しており、2~18歳未満の小児に対しては引き続きEUAの下で使用されます。
「Wegovy」デンマーク・ノボノルディスク
肥満症治療薬「Wegovy」(semaglutide)は、12歳以上の小児に対象を拡大。承認のもととなったプラセボ対照の国際共同P3試験では、小児患者のBMIを16.1%減少させました。同薬はGLP-1受容体作動薬で、成人の肥満症の適応では米国で21年6月、欧州で22年1月に承認を取得。日本でも申請中です。
【バイオシミラー】独フレゼニウス カービのadalimumab
「Idacio」独フレゼニウス カービ
「Idacio」は、米国で8剤目となる米アッヴィの抗TNF-α抗体「Humira」(adalimumab)のバイオシミラー。世界37カ国ですでに発売されており、米国ではアッヴィとのライセンス契約に基づいて今年7月以降に販売を開始する予定です。