経営再建中の日医工が昨年12月28日、事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)による債権者会議で取引金融機関から事業再生計画への同意を取り付けました。スポンサー企業からの出資が完了し、経営トップが交代する今年春ごろから、経営再建が本格化します。事業再生計画の概要と、拡大路線を突き進んできた日医工のこれまでの歩みを、ビジュアルを交えて解説します。
事業再生計画 具体策明かさず
日医工の経営再建を支援するのは、投資ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズと医薬品卸のメディパルホールディングス(HD)。両社が出資する「ジェイ・エス・ディー」が日医工に200億円を出資し、完全子会社化します。日医工は今年3~4月に上場廃止となる予定で、20年以上にわたって経営トップの座に君臨してきた田村友一社長は、増資が完了する今年3月ごろに退任します。
15の取引金融機関は、最大で債権の約6割にあたる985億円を放棄。返済条件の変更にも応じます。
昨年12月28日に公表された事業再生計画の骨子には、▽富山工場の生産改善▽不採算品からの撤退とコストの削減による収益構造の改革▽遊休資産の売却による財務基盤の強化▽スポンサーコンソーシアムによる品質保証・品質管理体制の強化支援と医薬品の販売体制再構築支援――の4点を盛り込みました。ただ、撤退する品目やコスト削減策、赤字が続く米子会社セージェントの扱いなど、具体的な内容は明らかにしていません。
日医工は今後、計画に沿って経営再建を進め、2026年3月期の黒字化と債務超過解消を目指します。
規模拡大が仇に
日医工は1965年に田村社長の父・四郎氏が設立。創業家の長男として89年に入社した田村氏は、2000年に父から経営のバトンを引き継ぐと、同業を次々と買収して規模を拡大します。12年4月にスタートした中期経営計画では「ジェネリック世界トップ10」をビジョンに掲げ、16年には約750億円で米後発品企業セージェント・ファーマシューティカルズを買収して米国市場に進出しました。
その後も、エーザイの後発品子会社や武田テバファーマの一部事業を買収するなど、拡大路線を邁進。エーザイ子会社の買収を発表した18年4月の記者会見では「高いシェアを持つことで市場優位性が増す」と語るなど、規模への強いこだわりを隠しませんでした。
エーザイ子会社の買収を発表した記者会見で写真撮影に応じる田村社長(左、2018年4月)
一方、その裏では主力の富山第一工場で品質不正が横行。21年3月には富山県から32日間の業務停止命令を受けました。外部調査の報告書によると、同工場では遅くとも09年ごろから必要な試験をすべて行うことができない状態になっており、遅くとも11年ごろには出荷試験で不適合となった製品を別ロットで再試験したり、再加工したりするなど不正な処理を行うようになったといいます。報告書は、急拡大する生産量に体制が追いつかず、品質管理より出荷を優先する風土が不正の原因だと指摘しました。
巨費を投じて参入した米国事業は赤字続きで、22年3月期決算に800億円超の減損損失を計上。1050億円の最終赤字に陥り、事業再生ADRを申請しました。米国事業では7~9月期決算でも474億円の減損損失を計上し、9月末時点で356億円の債務超過に転落。急激な規模拡大が仇となった形で、拡大路線を主導してきた田村社長は退場を余儀なくされました。