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ニュース解説

後を絶たない医薬品の「不正製造」に歯止めはあるのか

今年に入り、国が認めていない方法で医薬品を製造したとして、後発医薬品メーカー2社が相次いで業務停止命令を受けました。後を絶たない医薬品の不正製造。歯止めはあるのでしょうか。

 

「超品質」虚しく

小林化工が製造販売した経口抗真菌薬「イトラコナゾール錠50『MEEK』」の一部ロットにベンゾジアゼピン系睡眠薬リルマザホン塩酸塩水和物が混入した問題で、福井県は2月9日、同社に医薬品医療機器等法(薬機法)に基づく業務停止命令を出しました。

 

業務停止の期間は過去最長となる116日間。同社によると、問題の製品は344人に処方され、3月8日時点で245人に健康被害が出ています(3月8日時点)。このなかには、車の運転中に意識を失うなどして事故を起こした人が38人いて、昨年12月には服用した70代女性が死亡しました。

 

さらに3月3日には、業界最大手の日医工にも業務停止命令が下りました。同社は、品質試験で「不適合品」となった製品を、製造販売承認書と異なる方法で「適合品」となるように処理して出荷。品質管理体制にも不備が認められました。

 

不正は10年ほど前から行われていたといい、昨年2月の富山県とPMDA(医薬品医療機器総合機構)による立ち入り調査をきっかけに発覚。同年4月から今年1月中旬にかけて75品目を自主回収しました。同社が掲げる「超品質」のスローガンも、今は虚しく響くばかりです。

 

後発品メーカー39社が加盟する日本ジェネリック製薬協会は、小林化工を除名、日医工を5年間の会員資格停止とする処分を行いました。澤井光郎会長(沢井製薬会長)は「ジェネリック医薬品の信頼を著しく失墜させた」などと両社を断じ、「協会として大変重く受け止めている」と陳謝。「全会員会社を挙げて信頼回復を図っていく」としています。

 

相次ぐ行政処分

小林化工のケースでは、製造工程で原薬を継ぎ足した際、本来入れるべき原薬が入った容器を別の容器と取り違えたことが原因で、混入が起きたとされます。工程途中での継ぎ足しは国が認めた製造手順から逸脱しており、最終的な品質試験で異常を示すデータが出ていたにもかかわらず、検証を行わず出荷していました。

 

業界関係者からは「普通ならあり得ない」「どうしてこんなことが起こったのか」といぶかる声も聞かれますが、一方で近年、不正製造で行政処分を受ける製薬企業が後を絶ちません。

 

【不正製造による行政処分】(時期/社名/処分内容): 2016年1月/化学及血清療法研究所/業務停止命令(110日間)業務改善命令 |2016年4月/日本ビーシージー製造/業務改善命令 |2017年6月/山本化学工業/業務停止命令(22日間)業務改善命令 |2019年8月/松浦薬業/業務停止命令(34日間)業務改善命令 |2019年12月/協和発酵バイオ/業務停止命令(18日間)業務改善命令 |2021年2月/小林化工/業務停止命令(116日間)業務改善命令 |2021年3月/日医工/業務停止命令(32日間) |※厚生労働省や自治体の発表をもとに作成

 

2016年1月には、化学及血清療法研究所が、主力の血液製剤を承認書と異なる方法で製造していたとして110日間の業務停止命令を受けました。厚生労働省から解体も含む抜本的な組織の見直しを求められた化血研は、18年7月に明治ホールディングスなどが出資する「KMバイオロジクス」に主要事業を譲渡。化血研は研究助成など専ら公益事業を行う組織となり、医薬品の製造販売からは撤退しました。

 

その後も、日本ビーシージー製造、山本化学工業、松浦薬業、協和発酵バイオに対し、承認書と製造実態に相違があるとして、業務停止命令などの行政処分が行われています。化血研が虚偽の製造記録を作成するなどして長年にわたり不正を隠蔽していたことを踏まえ、厚労省などは16年1月以降、製造業者に対して無通告での立ち入り検査を実施しており、日医工のケースも、この抜き打ち検査で発覚。小林化工への行政処分を受け、厚労省は、無通告での検査を徹底・強化するよう、都道府県にあらためて要請しました。

 

改正薬機法でガバナンス強化

相次ぐ不祥事を受けて2019年11月に成立した改正薬機法では、製薬企業などに法令順守体制の整備を義務付ける規定が盛り込まれました。改正法では、薬事に関する業務に責任を持つ役員を置くことが定められ、品質管理などに総括的な責任を負う総括製造販売責任者(総責)の責務も明確化。総責はこれまで薬剤師に限定されていましたが、経営陣に意見を述べるなど総責としての役割と責任を果たせる立場(職位)の薬剤師が社内にいない場合は、薬剤師でなくても総責になれる例外規定も設けられました。

 

【改正薬機法によるガバナンス強化の図解】(*:新たに法律で定められた事項): 「製造販売業者・製造業者」は「*薬事に関する業務に責任をもつ役員」を有する。/「総括製造販売責任者・製造管理者」へ「*意見尊重・措置義務」/「総括製造販売責任者・製造管理者」へ「*■法令順守のための指針の提示 ■法令順守のための体制整備 ■必要な能力・経験を持つ責任者の選任」/「総括製造販売責任者・製造管理者」は、「製造販売業者・製造業者」へ「*書面による意見申述」/*総括製造販売責任者は原則薬剤師。薬剤師を置くことが著しく困難な場合、一定の要件を満たず薬剤師以外の技術者を一時的に総責とすることができる。

 

改正法は今年8月1日に施行される予定ですが、厚労省は小林化工への行政処分を受け、法令順守体制の整備を早急に行うよう、業界団体あてに通知を出しました。

 

「ジェネリック医薬品の需要増に伴い、生産数量・生産品目数も急増したが、これに対応できる人員、設備が整っておらず、逼迫したスケジュールの中で業務に追われていた」。日医工が公表した外部調査の報告書には、不正が横行した背景がこのように書かれています。

 

政府の積極的な使用促進策を追い風に、後発品の使用割合はこの10年で2倍以上に拡大。急増する生産に管理体制が追いついていなかったのは明白でしょう。後発品は薄利多売のビジネスですが、近年では薬価への締付けも強まっていて、毎年改定の初年度となる今年4月の薬価改定で後発品はほとんどが引き下げを受けます。メーカー数も多く競争は過当で、各社はそうした中、「安定供給」「品質」「収益確保」の間で綱渡りを続けています。

 

 【後発医薬品のシェア】: 2005年/32.5% |2006年/33.7% |2007年/34.9% |2008年/35.4% |2009年/35.8% |2010年/37.9% |2011年/39.9% |2012年/43.4% |2013年/46.9% |2014年/51.6% |2015年/56.2% |2016年/61% |2017年/65.8% |2018年/72.6% |2019年/76.7% |2020年/78.3% |※数量ベース。厚生労働省の資料をもとに作成

 

だからといって品質管理をおろそかにすることは許されませんし、不祥事の土台には個別企業のコンプライアンス欠如があることは言うまでもありません。一方、再発防止に向けては、業界が抱えるこうした構造的な課題にも目を向けていくことが必要でしょう。

 

不正製造は後発品メーカーだけの問題ではありません。長期収載品を中心に後発品メーカーが製造を受託している先発医薬品も少なくありませんし、立て続けに行政処分が下されたことは医薬品全体への信頼を揺るがしています。業界を挙げて信頼回復に取り組むことが求められます。

 

(前田雄樹)

 

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