12月21日、2度目の中間年改定となる2023年度薬価改定の骨子が決まりました。ポイントをビジュアルを交えて解説します。
全品目の48%で薬価引き下げ、削減額は3100億円
来年4月に行われる2023年度薬価改定は、「乖離率が平均の0.625倍を超える品目」を対象に行われることになりました。今年の薬価調査の平均乖離率は7.0%だったので、その0.625倍にあたる乖離率4.375%超の1万3400品目(全収載品目1万9400品目の69%)が対象になります。
今回の改定では、急激な物価高騰や安定供給問題への特例的な対応として、不採算に陥った医薬品の薬価を引き上げる「不採算品再算定」を実施。1100品目の不採算品すべてが対象となり、薬価が引き上げられます。さらに、近年問題となっている「ドラッグ・ラグ」への対応として、新薬創出・適応外薬解消等促進加算を特例的に増額。ルール通りに加算を適用すると薬価が下がる150品目について、現行薬価との差額の95%を補填します。
厚生労働省によると、23年度改定では全収載品目の48%(9300品目)で薬価が引き下げられます。46%(9000品目)は薬価を維持し、6%(1100品目)は不採算品再算定の適用によって引き上げとなります。
こうした改定で削減される薬剤費は3100億円。特例措置や各種改定ルールを適用する前の実勢価改定の影響額を機械的に試算すると4830億円の削減となり、これと比較すると影響は1730億円圧縮されました。
改定範囲は前回同様「平均乖離率の0.625倍超」
初の中間年改定となった21年度改定と今回の改定を比べてみると、改定の範囲は「平均乖離率の0.625倍超」で同じですが、平均乖離率は21年度が8.0%、今回が7.0%だったので、実際の対象範囲は今回のほうが広くなっています。
21年度改定では、新型コロナウイルス感染症の影響に対する特例措置として、薬価の引き下げ幅を一律0.8%緩和しました。今回はそのような一律の緩和措置は行われませんが、物価高・安定供給対策として不採算品再算定の適用が、ドラッグ・ラグ対策として新薬創出加算の増額が、それぞれ臨時・特例的に行われます。
21年度の中間年改定による薬剤費の削減額は4300億円でした。今回は特例措置によって3100億円の削減となり、21年度と比べると1200億円程度、影響が緩和されることになります。
改定に向けた議論で製薬業界は、原材料費の高騰や安定供給への対応で「薬価を引き下げる環境にない」と主張。改定を行う場合は引き下げ率を緩和するよう求めていました。不採算品や新薬創出加算品には一定の配慮がなされたものの、「平均乖離率の0.625倍超」という改定範囲を狭めることができなかったのは痛手となります。財務省は全品目対象・全改定ルール適用の「完全実施」を求めており、2年後の中間年改定も0.625倍を出発点に対象を広げるかどうかの議論になりそうで、改定対象を「乖離率が著しく大きい品目」にとどめたい製薬業界としては旗色が悪くなったと言えそうです。
(公開日:2022年12月19日、最終更新日:2022年12月22日)