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アムジェン幹部「米国の薬価抑制で希少疾患の重要性高まる」―ホライゾンを3.8兆円で買収

更新日

ロイター通信

(写真:ロイター)

 

[ロイター]米アムジェンは12月12日、アイルランドのホライゾン・セラピューティクスを278億ドル(約3.8兆円)で買収すると発表した。実現すれば、今年この業界で最大の買収となり、アムジェンは希少疾患治療薬のポートフォリオを強化する。

 

2社との競争制す

アムジェンはホライゾンの株式1株あたり116.5ドルを現金で支払う。これは、先週末の終値に20%近いプレミアムを上乗せした水準となる。

 

ホライゾンの株価は12日に15%上昇し、112.36ドルで同日の取引を終えた。同社は11月下旬、アムジェン、仏サノフィ、米ジョンソン・エンド・ジョンソンの3社と買収の可能性について予備的な協議を行っていることを明らかにしており、それ以降、株価は12月9日までに23.5%上昇していた。一方、アムジェンの株価は1%未満の下落となり、267.78ドルで12日の取引を終えた。

 

アムジェンは買収を通じて、甲状腺眼症治療薬「Tepezza」と痛風治療薬「Krystexxa」という2つの成長製品を手に入れる。主力の関節リウマチ治療薬「エンブレル」が競争激化に直面し、乾癬治療薬「オテズラ」などの主要製品も今後数年で特許切れを迎えようとする中、新たに獲得する製品が防波堤になることを期待している。

 

TepezzaとKrystexxaはいずれも米FDA(食品医薬品局)からオーファンドラッグの指定を受けており、通常の新薬より長い市場独占期間が付与されている。米国のバイデン政権は、今年成立したインフレ抑制法(IRA)に基づき、公的医療保険メディケアに薬価交渉の権限を与えるが、オーファンドラッグはこの対象に含まれない可能性が高い。

 

アムジェンのグローバル・コマーシャル・オペレーションの責任者であるマード・ゴードン氏はインタビューで「われわれはIRAの以前からこの会社に関心を持っていた」とした一方、「主に生物学的製剤を使って希少疾患の分野に参入するという戦略は、IRAによって重要性が高まっている」と指摘した。

 

ホライゾンのTepezza、28年に38.5億ドルの売り上げ予測

アムジェンは買収費用を手元の現金と借り入れによってまかなう計画で、シティバンク、バンク・オブ・アメリカの2行と285億ドルの信用契約を結んでいる。

 

アムジェンは、買収が来年前半に完了し、2024年から収益に貢献することを期待している。エンブレルの売上高は今年7~9月期決算で前年同期比14%減の11億ドルと落ち込んだ。一方、ホライゾンの最主力品であるTepezzaは21年に16億6000万ドルを売り上げ、前年から倍増。リフィニティブのデータによると、アナリストらはTepezzaの売上高が28年に38億5000万ドルに達し、エンブレルは同年に18億9000万ドルまで減少すると予測している。

 

ホライゾンのもう1つの主力品であるKrystexxaの21年の売上高は5億6550万ドルだった。28年には13億6000万ドルまで伸びると予測されている。

 

ウィリアム・ブレアーのアナリスト、マット・フィップス氏は「この買収は明らかにアムジェンに多くの成長資産をもたらす」と指摘する一方、多額の負債が伴うことが懸念だとしている。

 

アムジェンは現在、数十億ドル規模の潜在市場を目指して注目の肥満治療薬を後期段階の治験でテストしている。アムジェンにとっては、8月に行った米ケモセントリクス買収(37億ドル)に続くM&Aとなる。

 

(Manas Mishra/Bhanvi Satija/Khushi Mandowara/Abinaya Vijayaraghavan、編集: Rashmi Aich/Sriraj Kalluvila/Bill Berkrot、翻訳:AnswersNews)

 

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