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ニュース解説

アルツハイマー病、明暗分かれた新薬開発

更新日

ロイター通信

(写真:ロイター)

 

[シカゴ ロイター]スイス・ロシュは、アルツハイマー病治療薬として開発してきた抗アミロイドβ抗体ガンテネルマブについて、2つの最終治験で認知機能の低下を抑制する効果を証明できなかったことを受け、臨床試験のほとんどを終了すると発表した。

 

ガンテネルマブ、臨床試験のほとんどを終了

ロシュは11月14日、2つの臨床試験で失敗したことを発表している。両試験の詳細な結果は、米サンフランシスコで開かれたアルツハイマー病臨床試験会議(CTAD)で同月30日に報告された。

 

CTADでは、ライバルであるエーザイと米バイオジェンが、成功した抗アミロイドβプロトフィブリル抗体レカネマブの臨床試験結果を発表し、承認に向けた前進を印象付けた。一方、ロシュのガンテネルマブは軽度認知障害と初期のアルツハイマー病を対象とした試験で統計学的に有意なベネフィットを示さなかった。

 

両剤はいずれも、アルツハイマー病の発症に関与するとされるタンパク質アミロイドβを脳内から除去するよう設計されている。臨床試験の結果によると、レカネマブは投与18カ月時点の症状悪化をプラセボに比べて27%抑制することに成功したが、ガンテネルマブはGraduate1試験で8%、Graduate2試験で6%の症状悪化を抑制するにとどまった。

 

この差は、脳内のアミロイドβを取り除く能力の差に起因していると考えられる。CTADでの発表によると、ガンテネルマブの投与開始2年後にアミロイドを除去できた患者の割合は、Graduate1試験で28%、Graduate2試験で25%だった。一方、レカネマブは投与18カ月後に68%の患者がアミロイド陰性となった。

 

アルツハイマー病創薬財団(Alzheimer’s Drug Discovery Foundation)の最高科学責任者、ハワード・フィリット博士はガンテネルマブが失敗した理由について、化学的性質、投与量、投与方法の違いなど複数あると指摘。この薬剤が期待通りにアミロイドを除去できなかったという事実は明らかにその一因だと付け加えた。

 

ロシュ「潜在的な改善アプローチに焦点」

アルツハイマー病の分野には、失敗と失望が散らばっている。ガンテネルマブもこれまで何度か失敗しており、2014年には軽度のアルツハイマー病患者への低用量投与でベネフィットを示さず、20年にはワシントン大医学部が行った遺伝性アルツハイマー病患者を対象とした試験にも失敗した。フィリット氏は「明らかに、このクラス(抗アミロイドβ抗体)には効いているものと効いていないものがある」と話している。

 

ロシュの広報担当者は電子メールによる声明で、初期のアルツハイマー病を対象としたガンテネルマブのすべての臨床試験を停止することを明らかにした。停止する試験には、Graduateの延長試験や、アミロイド陽性で認知障害のない患者を対象としたSkyline試験が含まれる。広報担当者は「Graduate試験では、ガンテネルマブのアミロイド除去効果が想定より低いことがわかった。Skyline試験でも同様の結果が予想され、継続するには不十分だと考えている」と述べている。

 

ロシュは、アルツハイマー病治療薬としてtrontinemabというガンテネルマブとは別の製剤を開発している。trontinemabは、ガンテネルマブに血液脳関門通過技術を適用したもので、より多くの抗体を脳内に届けることを期待している。

 

ロシュの神経変性領域のグローバルヘッドを務めるレイチェル・ドゥーディ氏は声明で「われわれはアルツハイマー病にコミットしており、新たな治療法に向けた潜在的な改善アプローチに焦点を当てていく」と述べた。

 

(Julie Steenhuysen、編集:Bill Berkrot、翻訳:AnswersNews)

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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