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アルツハイマー病薬、エーザイ・バイオジェンのリード堅く…ロシュのガンテネルマブ、P3で主要評価項目達成ならず

更新日

ロイター通信

(写真:ロイター)

 

[ロイター]スイス・ロシュのアルツハイマー病治療薬候補は、2つの臨床第3相(P3)試験で疾患の進行を遅らせる効果を明確に示すことができず、開発競争はライバルのエーザイと米バイオジェンが明らかにリードすることとなった。

 

失敗は「明白」

ロシュは11月14日、早期アルツハイマー病を対象としたガンテネルマブの2本のP3試験「Graduate1」と「Graduate2」で主要評価項目を達成することができなかったと発表した。

 

ロシュは約1000人の患者を対象に、同じデザインの2つのP3試験を行った。結果、プラセボと比較してGraduate1では8%、Graduate2では6%、相対的な臨床症状の悪化を抑制したが、統計学的な有意差はなかった。

 

クレディ・スイスのアナリストは、同薬がピーク時に年間売上高100億ドルに達する可能性を20%と見ており、ベレンベルクのアナリストはその確率を50%と見積もっていた。クレディ・スイスのアナリストは試験の失敗を「明白だ」と表現している。

 

ロシュの株価は4.4%下落し、7週間ぶりの安値となった。一方、ライバルのバイオジェンと米イーライリリーの株価は時間外取引でそれぞれ3.8%、2.3%上昇した。

 

アナリストらは、この試験結果はロシュの研究能力に対する株式市場の信頼に影響を与えると指摘している。同社にとっては、今年初めにがん免疫療法薬として有望視されていたチラゴルマブの試験に失敗したのに続く打撃だ。

 

関連記事:新たながん免疫療法 抗TIGIT抗体に暗雲?ロシュのチラゴルマブ 2つの治験でPFS延長せず

 

ルツェルナー・カントナルバンクのアナリストは投資家向けレポートで「ロシュの開発パイプラインは、この銘柄をお気に入りリストに入れておくには失望させられることが多い」と述べている。

 

ガンテネルマブは、アミロイドβの凝集体に結合し、脳内からアミロイド班を除去するよう設計された抗体医薬だ。アミロイドβはアルツハイマー病の発症に重要な役割を果たしていると考えられている。

 

今回の後退は、来年3月にロシュグループのCEO(最高経営責任者)に昇格する診断薬部門の責任者トーマス・シネッカー氏にとって試練となる。彼は、伝統的ながんへの注力から脱却するために多角化を成功させたセヴリン・シュヴァン氏の後任となる。

 

レカネマブ「最大の競争リスク取り除かれた」

アミロイドβを標的とするアルツハイマー病治療薬の開発は失敗の連続だった。しかし、ライバルのエーザイとバイオジェンは今年9月、共同開発したレカネマブの試験で驚くべき成功を収めた。両社は早期アルツハイマー病患者を対象とした大規模臨床試験で、レカネマブがプラセボに比べて臨床症状の悪化を27%抑制したと発表した。ベアード・アナリストのブライアン・スコニー氏は投資家向けのレポートで「ロシュの試験失敗によって、レカネマブに対する最大の競争リスクが取り除かれた」と指摘している。

 

関連記事:エーザイ・バイオジェン レカネマブ最終治験で「勝利」症状悪化27%抑制

 

ロシュの抗体は主に大きなアミロイド構造を標的としていたのに対し、エーザイとバイオジェンのレカネマブはアミロイド蓄積の初期段階をターゲットにしている。ロシュが14日に発表したのは試験の主な結果のみで、詳細なデータは今月30日に米サンフランシスコで開かれるアルツハイマー病臨床試験会議(CTAD)で発表される予定だ。

 

ロシュの神経変性領域の責任者であるレイチェル・ドゥーディ氏は、試験結果は期待を下回るもので落胆しているとし、「われわれはアミロイドの低下と臨床転帰の間に関係があることを示すつもりだ。ただ、期待したアミロイドの低下が得られなければ、期待した臨床転帰も得られないということだ」とロイターに語った。

 

国際アルツハイマー病協会は声明を発表し、今回の試験結果は残念だが、アミロイドβの除去と臨床症状の悪化抑制の関係について示唆を与えるものであり、ほかの研究アプローチを検討する必要があると指摘。「アルツハイマー病治療は将来的に、生活習慣への介入に加え、疾患のさまざまな段階で異なる側面にアプローチする薬剤を組み合わせていくことになるだろう」としている。

 

世界保健機関(WHO)によると、認知症患者は世界で5500万人いるとされ、そのほとんどがアルツハイマー型だと考えられている。認知症患者は2030年に7800万人に達すると予想されている。

 

イーライリリーの抗アミロイドβ抗体ドナネマブの主要な後期臨床試験のデータは、2023年半ばまでに明らかになる見込みだ。

 

(Ludwig Burger/John Revill/Khushi Mandowara、編集:Christopher Cushing/ Bradley Perrett/Kirsten Donovan,/Sriraj Kalluvila/Louise Heavens、翻訳:AnswersNews)

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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