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テバとサンド、バイオシミラーに注力…市場拡大も課題多く

更新日

ロイター通信

(写真:ロイター)

 

[ロイター]大手後発医薬品メーカーのテバ・ファーマシューティカル・インダストリーズ(イスラエル)とサンド(スイス)が、バイオシミラーの製造を大幅に増強し、成長する市場でシェア拡大を目指している。

 

向こう10年で55以上のブロックバスターが特許切れ

業界では、ピーク時の年間売上高が10億ドルを超えるブロックバスターのうち、55以上の生物学的製剤が向こう10年で特許切れを迎える見込みだ。

 

テバとサンドの幹部は、欧州ですでに特許が切れ、米国でも来年特許切れを迎える米アッヴィの抗TNFα抗体「ヒュミラ」のようなトップセラーの生物学的製剤をターゲットにしていると話している。ただ、両社とも商業面や規制面で問題に直面しており、特に米国ではバイオシミラーが消費者に劇的な薬剤費負担の軽減をもたらすには至っていない。

 

生物学的製剤は生きた細胞で培養する複雑な分子であり、化学合成でつくる従来の医薬品のように正確なコピーを製造するのは不可能だ。

 

世界で最も大きい後発品メーカーの1社であるテバは、最終的にバイオシミラーの世界市場で10%のシェアを獲得することを目指している。同社は現在、3種類のバイオシミラーの承認を取得しており、13品目を開発中だ。テバのコーレ・シュルツCEO(最高経営責任者)はロイターとのインタビューで「われわれは現在、全力で取り組みを進めている」と強調。がん免疫療法薬「キイトルーダ」(米メルク)のような大ヒット製品を含め、「今後10年間で特許切れを迎える生物学的製剤の8割」をターゲットにしていると語った。

 

IQVIAのデータによると、サンドはバイオシミラーの世界売上高で米ファイザーに次ぐ2番手につけている(3位は米アムジェン)。サンドはこれまでに8つのバイオシミラーを市場に投入している。

 

同社のクレア・ダブリュ=ヘイリングCSO(最高科学責任者)はロイターに対し「現在、15品目以上を開発中で、今後5年間で販売中のポートフォリオの価値を倍増させたい」とし、ターゲットとする予定の生物学的製剤には「本当に明白な機会」があると述べた。

 

スイス・ノバルティスの後発品部門であるサンドは、2023年にスピンオフする予定だ。ノバルティスは今年初め、同部門の将来の選択肢を検討する中、真剣な買い手を引き付けることができなかったと述べている。

 

大市場を狙うか、参入企業少ない品目を狙うか

マッキンゼーの分析によると、向こう10年の間に米国と欧州で特許が切れる55以上の生物学的製剤のピーク時年間売上高は、合わせて2700億ドル(約37兆5000億円)以上に達すると予想されている。一方、世界のバイオシミラー市場は2030年までに現在の3倍以上となる740億(約10兆3000億円)ドルまで拡大する見通しだ。

 

ヒュミラは、関節リウマチ、乾癬、クローン病といった自己免疫疾患を対象に承認されており、年間150億~200億ドルを売り上げている。

 

テバとサンドはいずれもヒュミラのバイオシミラーに取り組んでいるが、こうした競合は難しい問題を提起している。バークレイズの医薬品アナリスト、エミリー・フィールド氏は「ヒュミラのように市場の大きい生物学的製剤を狙うべきか、参入企業が少ないと思われる小さなブランドを狙うべきか」と話している。

 

テバの北米コマーシャル担当副社長、スヴェン・デスレフス氏によると、同社は開発するバイオシミラーについて3番手以内の発売を目指している。同社は複数のバイオシミラーの開発プログラムに着手する予定だが、3番手に入れなければ製造をストップするという。

 

サンドはヒュミラを狙う一方、米バイオジェンの多発性硬化症治療薬「タイサブリ」のように対象患者数が少ない生物学的製剤もターゲットにしている。同社のピエール・ブルダージCOO(最高執行責任者)は、タイサブリのバイオシミラーの開発は活発でないとの認識を示した。

 

リーガルファイナンスを提供するバーフォード・キャピタルで医薬品の特許訴訟を担当するジョシュア・ハリス上級副社長は、特定の市場、特定の薬剤で唯一のバイオシミラーを開発することは勝利につながる可能性があるとしつつ、「そうした状況もまれになるだろう」と指摘する。

 

マッキンゼーによると、バイオシミラーの開発には一般的に1~3億ドルの費用がかかり、承認を取得するまでに6~9年の月日を要する。米国、欧州、日本で開始されたプログラムのおよそ半分は、初期段階で失敗に終わっているという。

 

後発品の開発コストは通常、数百万ドルほどで、先発医薬品の80~90%も安い価格で販売されている。バークレイズのフィールド氏は「バイオシミラーの収益性は従来の後発品よりはマシだが、ブランド薬には及ばないとみなされている」と言う。

 

米国は普及低調

商業的な見通しは規制環境にも左右される。欧州ではすでに50以上のバイオシミラーが市場に導入されているが、米国では規制の確立に時間を要した。

 

欧州の規制当局は、承認されたバイオシミラーはすべて先行品と同等とみなしており、これが普及を後押ししている。デューク大マーゴリス保険政策センターの2021年の報告書によると、欧州ではバイオシミラーが先行品の市場の多くを奪い、先行品の価格に対して75~90%の節約につながっているという。

 

アムジェンの分析によると、米FDA(食品医薬品局)は今年10月時点で39のバイオシミラーを承認し、このうち22品目が販売されている。米国では、FDAが先行品との互換性を認めない限り、薬剤師の判断でバイオシミラーに切り替えることはできない。

 

SVB証券のアナリストは先月の投資家向けメモで、米国で来年発売されるヒュミラのバイオシミラーについて、初年は多くのペイヤーが先行品を使い続けるものの、24年までに切り替え可能なバイオシミラーへの置き換えを真剣に検討するだろうと予測している。

 

デューク大の報告書によると、米国で発売されたバイオシミラーは先行品に対して約20%の数量シェアしか獲得できておらず、バイオシミラーは30~40%の値引きを行っている。

 

特許に焦点を当てた法廷闘争がバイオシミラーの上市を阻んでいるものもある。さらに、先行品を販売する製薬企業の積極的な価格戦略も、バイオシミラーの値引きを無力化させている。

 

(Natalie Grover/Steven Scheer、編集:Michele Gershberg/Suzanne Goldenberg、翻訳:AnswersNews)

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