EUとの新型コロナウイルスワクチンの供給契約が終了する可能性が高まり、株価が急落した仏バルネバ(ロイター)
[パリ/ロンドン ロイター]6月13日の株式市場で、仏製薬企業バルネバの株価が急落した。欧州委員会(EC)は同社が開発した新型コロナウイルスワクチンを最大6000万回分購入する契約を解消する意向を示しており、バルネバは同月10日、契約の修正が合意に達する可能性が低いことを示唆。これを受けて同社は時価総額の4分の1を失った。
バルネバのトーマス・リンゲルバッハCEOはロイターに「ECがワクチンの在庫過多という問題に直面していることは理解している」と語った。同社はECに対し、数量や納期の変更、保存期間の延長など、契約の見直しを柔軟に提案しているという。同社は、今後数日中にECから回答が得られることを期待しており、リンゲルバッハCEOは「われわれは、あらゆる可能性を試すまであきらめない」と話している。
一方で同社は、ECが非公式かつ予備的に示唆している供給量は、同社のコロナワクチンプログラムの持続可能性を保証するのに十分ではないと指摘。リンゲルバッハ氏は、当初の契約と予備的な修正案の間には「非常に大きな隔たり」があると言い、これが正式に提案された場合、同社は応じることができないと話した。
英証券会社Rxセキュリティーズはこれまで、バルネバ製ワクチンの売り上げを4億ユーロ(4億1900万ドル)と予測していたが、最近の状況は明らかに期待外れの展開だと指摘。最新のレポートでは「当社の予測では、もはやECへのコロナワクチンの販売による収入は想定していない」とした。
供給過剰に懸念
バルネバのコロナワクチンプログラムは、EMA(欧州医薬品庁)から追加の情報を求められ、申請が遅れた。EMAは今年5月に申請を受理したが、ECとの購入契約で期限とされている4月中の承認取得を逃した。EMAの医薬品委員会(CHMP)は、同ワクチンの承認の可否について今月21日に見解を出す予定だ。
英国は今年4月にバルネバ製のコロナワクチンを承認したが、供給契約は昨年解消した。同社製コロナワクチンはほかに、バーレーンとアラブ首長国連邦でも承認されている。
バルネバのコロナワクチンは不活化ワクチンで、ポリオやインフルエンザ、肝炎などの予防接種で何十年にもわたって使われてきた技術を採用している。同社は、mRNAなど新しい技術を使ったコロナワクチンを忌避する人たちを取り込めるのではないかと期待していた。
コロナワクチンの需要は不透明だ。米ノババックスのワクチンはバルネバと同じく従来からある技術を使ったものだが、欧州での普及は限定的で、これまで供給した1260万回分のうち22万回分しか接種されていない。
英アストラゼネカや米ジョンソン・エンド・ジョンソンなど一部のワクチンメーカーは、新型コロナワクチンの世界的な供給過剰に懸念を示している。
(Natalie Grover、翻訳:AnswersNews)