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「エンハーツ」HER2低発現乳がんP3で好結果―新たに数十億ドルの市場開拓へ

更新日

ロイター通信

[ロンドン ロイター]第一三共と英アストラゼネカが共同開発する抗HER2抗体薬物複合体(ADC)「エンハーツ」(一般名・トラスツズマブ デルクステカン)が、特定の進行乳がん患者を対象とした臨床第3相(P3)試験で生存期間を化学療法と比べて6カ月以上延長した。

 

エンハーツは2019年、乳がん患者の15%を占めるHER2陽性乳がんに対する3次治療の薬剤として米国で承認された。米シカゴで開催中の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表された今回のデータにより、同薬は新たに年間数十億ドルという大規模な市場を開拓する可能性がある。

 

現在進行中のP3試験には、HER2低発現乳がん(多くはホルモン受容体陽性)で、病変が拡大し、化学療法による前治療を少なくとも1回以上受けた550人以上の患者が登録されている。

 

同試験の中間解析の結果、エンハーツを投与されたホルモン感受性の患者は、化学療法を行った患者に比べて全生存期間(OS)を6.4カ月延長した。この集団のOSの中央値は、化学療法が17.5カ月だったのに対し、エンハーツでは23.9カ月だった。ホルモン非感受性の少数の患者集団では、エンハーツはOSを6.3カ月延長した。

 

アストラゼネカのオンコロジー部門担当副社長のデビッド・フレデリクソン氏はロイターに「中間解析の時点でOSに対するベネフィットが明らかになったのは驚くべきことだ。このことは、私たちが見ているベネフィットが本物であるという確信をもたらした」と語った。

 

HER2低発現乳がんで年間25億ドルの予想

抗HER2療法の進展により、HER2陽性進行乳がん患者の予後は大きく改善した。しかし、がんがほかの臓器に広がり、HER2をほとんど、あるいは全く発現していない(HER2-Lowと呼ばれる)患者の多くは、治療の選択肢が限られている。

 

中間解析の結果によると、エンハーツを投与されたホルモン感受性の患者の無増悪生存期間(PFS)は10.1カ月で、化学療法の5.4カ月に対して統計学的に有意な延長を示した。ホルモン非感受性の患者のPFSも、化学療法の2.9カ月に対してエンハーツは6.6カ月と2倍以上に延長した。

 

アストラゼネカと第一三共は、HER2低発現乳がんでの承認に向け、世界各国の規制当局と協議を進めている。ジェフリーズのアナリストは先月、HER2低発現乳がんでのエンハーツのグローパルピークセールスを年間25億ドル、全適応症では66億ドルと予想した。

 

一方、安全性では間質性肺疾患との関連が指摘されている。今回の試験では、化学療法群で1人、エンハーツ群で45人にさまざまな程度の間質性肺疾患が認められた。

 

エンハーツはADCと呼ばれる薬剤で、腫瘍細胞に結合し、殺細胞性の化合物を放出するように設計された抗体医薬だ。HER2陽性乳がんの2次治療では、標準治療であるスイス・ロシュの「カドサイラ」(トラスツズマブ エムタンシン)に比べて病勢進行・死亡リスクを72%抑制することが示され、先月米国で適応拡大の承認を取得した。ほかにも、早期乳がんや肺がん、大腸がんなどで臨床試験が行われており、HER2陽性胃がんではすでに承認を取得している。

 

インフォーマ・ファーマ・カスタム・インテリジェンスのコンサルタント、タラ・ハンセン氏は「乳がんについて言えば、少なくとも今後数年間は、エンハーツが治療パラダイムに革命を起こすことは間違いないだろう」と話している。

 

アストラゼネカの決算によると、エンハーツの2021年の売上高は2億1400万ドルだった。同社は2019年、最大69億ドルのディールで第一三共からエンハーツの権利の一部を獲得した。

 

(Natalie Grover、編集:Bill Berkrot、翻訳:AnswersNews)

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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