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ニュース解説

感染相次ぐサル痘、ワクチンや治療薬にはどんなものがあるのか

更新日

ロイター通信

サル痘ウイルスに感染したサルの皮膚病変から採取した皮膚組織の断面(1968年、CDC/Handout via REUTERS)

 

「ロンドン ロイター]ウイルス性感染症の「サル痘」が、従来流行していたアフリカ以外の地域で不可解なほど広がっている。公衆衛生当局は、接触者の追跡、隔離、ワクチンによって拡大を抑制しようとしている。

 

世界の保健当局は5月初旬以降、感染が確定したり疑われたりしている19カ国200人以上を追跡している。サル痘ウイルスの致死率は約1%とされるが、これまでのところ死亡例は報告されていない。

 

ワクチン

サル痘と天然痘のウイルスは近しく、WHO(世界保健機関)は第1世代の天然痘ワクチンがサル痘に対しても最大85%の予防効果を示すと発表している。

 

現在、天然痘ワクチンには2つの種類がある。

 

1つは、デンマークのババリアン・ノルディックが製造しているもので、地域によって「Jynneos」「Imvamune」「Imvanex」の製品名で販売されている。このワクチンは、天然痘やサル痘を引き起こすウイルスに近いものの害が少ない、増殖力のない改変ワクシニアアンカラを利用したものだ。

 

米国では、天然痘とサル痘の両方の予防ワクチンとして承認されている。EU(欧州連合)では天然痘用として承認されているが、医師はサル痘にも適応外使用することができる。ババリアン・ノルディックは、サル痘を対象に含めるためEUの規制当局に適応の拡大を申請する考えを示している。このワクチンで報告されている副反応としては、接種部位の腫れや痛み、頭痛、倦怠感などがある。

 

もう1つは古いワクチンで、現在は米国のエマージェント・バイオソリューションズが製造している「ACAM2000」だ。同ワクチンは感染性のある生きたワクシニアウイルスを使っており、ヒトの体内で増殖することができる。ワクチンを受けた人の接種部位に未接種の人が密接に接触すると感染する可能性がある。

 

同ワクチンは、接種部位の痛みや倦怠感といったワクチンとしては一般的な副反応のほかに、心臓の炎症、失明、死亡など重篤な副反応の可能性があり、重大な警告が示されている。免疫が低下している人など、特定の集団には接種することができない。

 

ACAM2000は、天然痘への感染リスクが高い人を対象に米国で承認されている。EUでは未承認だ。

 

抗ウイルス薬

サル痘の主な症状は、発熱、頭痛、発疹、膿をもった皮膚病変など。症状は2~4週間程度続き、多くの場合は自然に治る。

 

サル痘に感染した場合、輸液や二次的な細菌感染に対する治療が行われる。米国と欧州では、tecovirimatと呼ばれる抗ウイルス薬(製品名は「TPOXX」。米国のSIGAテクノロジーズが製造)が天然痘治療薬として承認されている。欧州の承認には、サル痘と牛痘も含まれている。

 

米国では、米チメリックスが開発した「Tembexa」というブランド名の薬剤も天然痘治療薬として承認されている。サル痘に効果があるかどうかは不明だ。

 

いずれの薬剤も、予防接種によって天然痘が根絶されたあとに開発されたため、動物での研究で効果が期待できるとして承認された。

 

備蓄

WHOは1980年に天然痘を根絶疾患に分類したが、生物兵器として使用される懸念があり、各国はワクチンを備蓄している。

 

WHOはスイスの本部で、根絶プログラムの最後の年から240万回分のワクチンを保管している。加えて、追加接種についてドナー国と3100万回分の誓約を交わしている。

 

米国当局によると、ババリアン・ノルディックのワクチンの国家備蓄は1000万回分以上あり、今後数週間でこのレベルは急速に上昇する見込みだ。ACAM2000も1億回分保有している。

 

ドイツは、ババリアン・ノルディックのワクチンを4万回分注文し、感染者に接触した人に必要に応じてワクチンを接種できるようにしたと発表している。英国やフランスなどほかの国でも、感染者と密接に接触した人や医療従事者にワクチンを提供したり、接種を勧めたりする動きが出ている。

 

ババリアン・ノルディックは、年間3000万人分のワクチン生産能力を持つ。同社の広報担当社はロイターの取材に、複数の国がワクチンの購入に関心を示しているものの、生産を拡大する必要はないと語った。

 

(Natalie Grover、翻訳:AnswersNews)

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