市場拡大が著しく、開発競争も熾烈ながん領域。国内外の製薬大手の後期開発パイプラインを、2022年3月時点で各社が公表している情報をもとにまとめました。(全5記事。全記事まとめはこちら)
情報は2022年3月の調査時点で各社がホームページで公表していた情報に基づく。いつ時点の情報かは会社によって異なるため、承認・申請など直近のイベントが反映されていない場合もある。 |
米アッヴィ
【新規有効成分】epcoritamab 23年の迅速承認目標
デンマーク・ジェンマブと共同開発する抗CD3/CD20二重特異性抗体epcoritamab(開発コード・Gen-3013)は、再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の適応でピボタル試験を進めており、2023年の迅速承認取得を目指しています。
抗cMet 抗体薬物複合体(ADC)のtelisotuzumab vedotin(ABBV-399)は、非小細胞肺がんの適応で23年に申請を行う予定。PARP阻害薬veliparib(ABT-888)は、卵巣がんや乳がんで開発中です。
【適応拡大など】イブルチニブとベネトクラクスの併用 年内申請へ
米ヤンセンと共同開発するBTK阻害薬イブルチニブ(製品名・イムブルビカ)は、BCL-2阻害薬ベネトクラクス(ベネクレクスタ)との併用療法などで年内の申請を予定。ベネトクラクスは骨髄異形成症候群やt(11:14)陽性再発・難治性多発性骨髄腫でも開発の最終段階に入っています。
米ギリアド
【新規有効成分】抗PD-1抗体と抗TIGIT抗体の併用がP3
戦略提携を結ぶ米アーカスから導入した抗PD-1抗体zimberelimab(開発コード・GS-0122)は、同社の抗TIGIT抗体domvanalimabとの併用で非小細胞肺がんを対象とした臨床試験を実施中。大腸がんや前立腺がんで開発が進むetrumadenant(ARC-9)も、アーカスが創製したA2aR/A2bRデュアルアンタゴニストです。
新規有効成分としてはこのほか、米フォーティー・セブン買収で獲得した抗CD47抗体magrolimab(GS-4721)の開発を進めています。今年1月には、アザシチジンとの併用療法を評価する臨床試験で重篤な副作用に群間の不均衡が認められたため、該当する試験の一時保留を発表。従来は骨髄異形成症候群での迅速承認取得を目指していましたが、その目標は取り下げています。
【適応拡大など】Trodelvy、HR陽性・HER2陰性乳がんに適応拡大へ
20年の米イミュノメディクス買収で獲得した抗TROP2 ADC sacituzumab govitecan(製品名・Trodelvy)は昨年、欧州でもトリプルネガティブ乳がん治療薬として承認を取得。ホルモン受容体陽性・HER2陰性乳がんに対する臨床第3相(P3)試験では主要評価項目である無増悪生存期間の改善を達成しており、年内にも申請するとみられます。
米イーライリリー
【新規有効成分】BTK阻害薬pirtobrutinib、23年に承認目指す
中国のイノベント・バイオロジクスと共同開発している抗PD-1抗体sintilimab(開発コード・LY3342901)は、非扁平上皮非小細胞肺がん1次治療の適応で21年5月に申請しましたが、米FDA(食品医薬品局)は今年3月、標準治療との比較試験の実施を推奨するとして承認を見送りました。同薬は中国で「TYVYT」として販売されている製品で、中国国内で行われた試験結果で米国承認を目指しましたが、出直しを求められた格好です。
米ロキソオンコロジー買収で獲得したBTK阻害薬pirtobrutinib(LY3527727)は、再発・難治性のマントル細胞リンパ腫治療薬として段階的申請を開始しています。22年中に申請を完了し、23年はじめの迅速承認を期待しています。
【適応拡大など】レットヴィモ、日本で小児固形がん対象に開発中
ロキソ由来のRET阻害薬セルペルカチニブ(製品名・レットヴィモ)は、日本でも22年2月に甲状腺がん、甲状腺髄様がんへの適応拡大が承認。小児固形がんでも開発中です。日本ではこのほか、21年末にCDK4/6阻害薬アベマシクリブ(ベージニオ)が再発高リスクのHR陽性・HER2陰性乳がんの術後薬物療法として承認を取得しました。
米アムジェン
【新規有効成分】抗FGFR2b抗体bemarituzumab 胃がんでP3
21年3月の米ファイブ・プライム買収で獲得した抗FGFR2b抗体bemarituzumab(開発コード・AMG 552)は、胃がん、胃食道接合部腺がんを対象にP3試験を進行中。同薬は下流の腫瘍促進シグナル伝達を阻害し、がんの進行を遅らせると期待されています。
抗DLL3/CD3 二重特異性抗体のtarlatamab(AMG 757)は、小細胞肺がんを対象に開発を進めています。同薬は、ブリナツモマブ(製品名・ビーリンサイト)で活用する独自の二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体技術を使った薬剤。BiTE抗体はP1段階にも複数控えています。
【適応拡大など】ルマケラス 結腸直腸がんでP2
KRAS G12C阻害薬ソトラシブ(製品名・ルマケラス)は、21年に米国で、22年に日欧で非小細胞肺がん治療薬として承認。結腸直腸がんの適応でグローバル開発を進めています。