2022年2月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】寒冷凝集素症治療薬「Enjaymo」や抗BCMA CAR-T細胞療法「Carvykti」など
【暫定承認に変更】「Ruzurgi」米Jacobus
小児のランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)治療薬「Ruzurgi」(一般名・amifampridine)は19年に承認を取得しましたが、同成分の「Firdapse」(米カタリスト)の独占権利を侵害していると裁判所に判断され、暫定承認に変更されました。Firdapseは18年に承認された成人のLEMS治療薬。カタリストはRuzurgiの承認後すぐにFDAを提訴していました。
「Fleqsuvy」米Azurity
「Fleqsuvy」はbaclofenの経口懸濁液。多発性硬化症に伴う痙縮に対する治療薬で、脊髄損傷やその他の脊髄疾患にも効果が期待されます。
「Enjaymo」仏サノフィ
抗補体(C1s)抗体「Enjaymo」(sutimlimab)は、米国初の寒冷凝集素症治療薬。疾患に伴う溶血を抑える作用を持ち、赤血球輸血の必要性を低減します。承認の根拠となった臨床試験では、治療開始から1週間以内に貧血と疲労を改善する効果が確認されました。日本と欧州でも申請中です。
「Pyrukynd」米アジオス
ピルビン酸キナーゼ(PK)活性化薬の「Pyrukynd」(mitapivat)は、成人のPK欠乏性貧血に対する経口疾患修飾薬。臨床試験では、定期的な輸血を行っていない患者のヘモグロビンを有意に増加したほか、定期的に輸血している患者の負担を軽減しました。欧州でも申請中。日本では臨床第3相(P3)試験が行われています。
「Vonjo」米CTIバイオファーマ
「Vonjo」(pacritinib)は、重度の血球減少症を伴う中~高リスクの原発性/二次性骨髄線維症に対する治療薬として迅速承認されました。骨髄線維症はJAK2のシグナル伝達を調節できないことと関連するとされる疾患。同薬はJAK1を阻害することなく、JAK2とIRAK1を特異的に阻害するキナーゼ阻害薬です。
「Carvykti」米ヤンセン
再発・難治性の多発性骨髄腫治療薬「Carvykti」(ciltacabtagene autoleucel)は、BCMAを標的とするCAR-T細胞療法。対象は、プロテアソーム阻害薬や免疫抑制剤、抗CD38抗体など4つ以上の前治療を受けた患者です。米レジェンド・バイオテックと共同開発した製品で、ヤンセンにとっては初のCAR-T細胞療法。日本と欧州でも申請中です。
【適応拡大】「Jardiance」のHFpEFなど
「Xigduo XR」英アストラゼネカ
SGLT2阻害薬dapagliflozinとビグアナイド薬metforminの配合剤「Xigduo XR」は、左室駆出率が低下した心不全に適応拡大しました。2型糖尿病の有無にかかわらず、患者の心血管死や入院リスクを軽減します。dapagliflozin単剤の「Farxiga」は20年5月に同適応の承認を取得しています。
【適応取り下げ】「Zydelig」米ギリアド
米ギリアドは「Zydelig」(idelalisib)について、再発濾胞性リンパ腫と再発小リンパ球性リンパ腫に対する適応を自主的に取り下げました。両適応では2014年に承認を取得していましたが、その後の検証的試験への被験者登録が思うように進まなかったため。米国では今後、慢性リンパ性白血病治療薬として販売される予定で、欧州やカナダでは濾胞性リンパ腫治療薬としても販売を続ける方針です。
「Jardiance」独ベーリンガーインゲルハイム
米イーライリリーと共同開発するSGLT2阻害薬「Jardiance」(empagliflozin)は、左室駆出率が低下しているか否かを問わず心不全治療に使用できるようになりました。新たに対象となるのは左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)患者。昨年8月、左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)に適応拡大していました。左室駆出率40%以上の患者5988人を対象に行ったP3試験では、プラセボと比べて心血管死や入院のリスクを21%低下。欧州でも近く承認される見通しです。日本では昨年11月に慢性心不全(HErEF)の適応を取得しています。
【バイオシミラー】米アムニールのfilgrastim
「Releuko」米アムニール
「Releuko」は、米アムジェンのG-CSF製剤「Neupogen」(filgrastim)のバイオシミラー。filgrastimのバイオシミラーは米国では3剤目です。アムニールは同剤で米国のバイオシミラー市場に参入します。