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新規事業、健康食品に照準…小野や東和、提携・買収で取り組み加速

更新日

前田雄樹

機能性表示食品の開発で協業を発表した小野薬品工業の辻󠄀中聡浩経営戦略本部長(右)とマルハニチロの昌子有常務執行役員(2月24日の記者会見で)

 

製薬企業が、新規事業として健康食品分野での取り組みを強めています。小野薬品工業はマルハニチロと機能性表示食品の開発で協業。東和薬品は健康食品を手掛ける三生医薬を477億円で買収します。医薬品をめぐる事業環境が厳しくなる中、収益の柱として育てたい考えです。

 

 

小野 マルハニチロと協業

小野薬品工業は2月24日、機能性表示食品の商品開発でマルハニチロと協業すると発表しました。小野薬品は、マルハニチロから提供を受けた素材を使って開発した製品について、2つの臨床試験で有用性が証明されたとし、今後、サプリメント事業の立ち上げに向けた取り組みを進める方針。小野にとっては、初めての一般消費者向け事業となります。

 

「製薬業というのは、調子の良いときは利益率も高く効率が良いが、創薬は失敗の連続であり、浮き沈みの激しい業態だ」。小野薬品の辻󠄀中聡浩・取締役専務執行役員経営戦略本部長はこの日の記者会見でこう話し、「創業300年を超えて持続的に成長していくために、事業ドメインを広げていきたいという希望はかねてから持っていた」と述べました。

 

今回、小野薬品とマルハニチロを結びつけたのが「油」です。小野薬品は長年、生理活性脂質プロスタグランジン(PG)の研究に取り組み、陣痛誘発・促進/分娩促進剤「プロスタルモン」(1974年発売、現在は丸石製薬が販売)を皮切りに12のPG製剤を開発。一方のマルハニチロは、魚油に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)のトップサプライヤーの一角を占めています。

 

研究資産生かす

小野薬品の辻󠄀中氏は「生理活性脂質に関する研究資産を生かせるような、シーズドリブンな事業を起こせないかと考えていた」と言い、マルハニチロの昌子有・常務執行役員は「われわれもDHAやEPAという機能性脂質を長年取り扱っており、方向性は一致している」と話しました。

 

両社が手掛けるのは、イクラから抽出・精製した油(イクラオイル)を使った機能性表示食品。イクラオイルにはDHAやEPAのほか、DHAを体内に取り込みやすくするリン脂質が豊富に含まれるといいます。

 

小野薬品は昨年2月、健康食品・機能性表示食品事業を手掛ける子会社「小野薬品ヘルスケア」を設立しており、販売は同社が担います。製品の発売時期や事業規模の目標などについては明らかにしていませんが、辻󠄀中氏は「ライフサイエンス領域で治療以外のところに踏み出していきたいという希望を持っている。健康食品事業で一定の足場を築き、さらにほかのものにもチャレンジしていきたい」と話しました。

 

東和やサワイも進出

医薬品をとりまく環境の変化を背景に製薬各社が新規事業を模索する中、健康食品分野への参入を目指す動きが目立っています。健康志向の高まりから国内のサプリメント市場は拡大を続けており、民間調査会社の富士経済によると2020年の市場規模は9742億円。21年は前年比3.4%増の1兆77億円と見込まれています。

 

【健康食品分野での主な取り組み】小野薬品工業/健康食品・機能性表示食品を手掛ける子会社「小野薬品ヘルスケア」を設立(2021年2月)|東和薬品/健康食品分野での機能性表示食品の商品開発でマルハニチロとの協業を発表(2022年2月)/2021~23年度の中期経営計画で健康食品やサプリメントを含む健康関連事業に進出する方針を表明(2021年5月)/健康食品などを手掛ける三生医薬を477億円で買収すると発表(2021年12月)|サワイGHD/2021~23年度の中期経営計画で健康食品を含む新規事業への進出を表明(2021年5月)|各社のプレスリリースなどをもとに作成

 

製薬企業にとっては、ライフサイエンスに関する知見やエビデンスの構築力といった強みを生かしやすい分野でもあります。マルハニチロの昌子氏は「臨床開発力のある小野薬品と組むことで、食品と医薬品の中間に位置する予防・未病の分野を開拓したい」と話します。

 

後発医薬品大手の東和薬品は、昨年5月に発表した21~23年度の中期経営計画で、健康食品やサプリメントを含む健康関連事業の展開を掲げています。同12月には、健康食品や医薬品の受託製造を手掛ける三生医薬(静岡県富士市)を約477億円で買収すると発表。東和は「三生医薬が培ってきた高い技術力や広範な顧客基盤、健康食品関連のノウハウを活用でき、健康関連事業の多角的な展開が実現される」としています。

 

強みを差別化につなげらるか

サワイグループホールディングスも、昨年5月発表の中計(21~23年度)で、新規領域として▽新薬▽デジタル・医療機器▽健康食品――の3領域への進出を表明。中計期間中にこれら3領域で300億円の投資枠を設定しており、健康食品ではロコモティブシンドロームやフレイル、認知症、生活習慣病をターゲットに参入を検討しています。

 

女性医療に力を入れる富士製薬工業は、周産期領域を対象とした医家向けのサプリメントを22年9月期中に発売予定。日本ケミファも、強みとするアルカリ化技術を応用した機能性表示食品の開発を進めており、すでにクエン酸を使った製品について消費者庁への届け出を済ませています。

 

未病・予防への関心が高まる中、健康食品の市場も競争が激しくなっています。製薬企業としての強みを差別化につなげられるかが、成否のカギとなりそうです。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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