日本の医薬品市場は2026年にドイツに抜かれ世界4位に後退する――。米IQVIAが今月発表した最新の世界市場予測で、こんな見通しが示されました。22~26年の日本市場の年平均成長率はマイナス2%~プラス1%となり、先進10カ国の中で唯一のマイナス成長が見込まれています。
日本市場 年平均マイナス0.5%
米調査会社IQVIAが今月発表した最新の医薬品市場予測レポート「The Global Use of Medicines 2022 OUTLOOK TO 2026」によると、2021年の日本の医薬品市場は854億ドル。17~21年の5年間の成長率は年平均マイナス0.5%で、先進10カ国に中国、ブラジル、インド、ロシアを加えた14カ国で唯一のマイナス成長となりました。
21年の世界市場は1兆4235億ドルに達し、過去5年で年平均5.1%拡大。最大市場の米国は5804億ドルで年平均4.9%成長し、2位の中国も1694億ドルで年平均6.1%の伸びとなりました。日本に次いで成長率が低かったオーストラリアは年平均0.6%増、フランスとイタリアは年平均3.0%増で、ほかの先進国は5~6%の成長率でした。
レポートでは日本市場について「長引く(新型コロナウイルスによる)パンデミックの影響と中間年改定により成長鈍化が続く結果となった」と指摘。過去10年間で市場全体に占める長期収載品の割合は27%から13%へと半減しました。新薬(特許で保護されているブランド薬)の割合は47%から54%に上昇しましたが、長期収載品の薬価引き下げと後発医薬品のシェア拡大によるマイナスがそれを上回っています。
22~26年 マイナス2%~プラス1%を予測
日本市場の低成長は、向こう5年間も続く見通しです。レポートでは、22~26年の市場成長率を年平均マイナス2%~プラス1%と予測。マイナス成長が見込まれるのは、先進10カ国と主要新興国4カ国の中で日本だけです。長期収載品の市場は22~26年に年平均12%のマイナスとなり、市場全体に占める割合は7%まで縮小する見込み。「毎年の薬価改定がイノベーションの進展を相殺し、日本市場は26年まで減少傾向が続く」と見通しています。
世界の医薬品市場は22年から26年にかけて年平均3~6%成長し、26年には最大で1兆7800億ドルに達する見込み。米国は年平均2.5~5.5%の拡大で6850~7150億ドルとなり、中国は2000億ドルを超える市場になる可能性があります。
26年までの世界市場の拡大を支えるのは、がん(年平均成長率9~12%)、免疫疾患(6~9%)、糖尿病(6~9%)といった領域。がんの世界市場は26年に3060億ドルに達する予測です。抗凝固薬と皮膚疾患も年平均8~11%増と高い成長が見込まれています。
米国市場を100として各国市場を数値化した場合、26年の日本市場は11.9と21年から2.8ポイント低下。21年は米国と中国に次ぐ3位でしたが、26年にはドイツに抜かれて4位に後退する見込みです。ドイツ市場は21年の11.1から26年に12.3まで上昇すると予測されています。