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ニュース解説

海外新薬承認情報(2021年11月分)

更新日

亀田真由

2021年11月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。

 

【新薬】軟骨無形成症治療薬「Voxzogo」や抗サイトメガロウイルス薬「Livtencity」など

 

【2021年11月に米FDAが承認した主な新薬】(*=優先審査、★=ブレークスルーセラピー)<製品名(一般名)>/<社名><適応>Dyanavel/XR(amphetamine)/米トリスファーマ/ADHD(経口徐放製剤〈錠剤〉、6歳以上)|Yutrepia(treprostinil)/米リキディア/肺動脈性肺高血圧症(吸入用粉末製剤)|Eprontia(topiramate)/米Azurity/てんかん、片頭痛予防(経口液剤)|Besremi(ropeginterferon/alfa-2b)/台湾ファーマエッセンシア/真性多血症(成人)|Voxzogo(vosoritide)*/米バイオマリン/軟骨無形成症(骨端板〈成長板〉が開いている5歳以上の小児)|Fyarro(sirolimus/albumin-bound/nanoparticles)*/米アーディ/局所進行の切除不能・転移性の悪性血管周囲上皮性細胞腫瘍(成人)|Lyvispah(baclofen)/米Saol/多発性硬化症、脊髄損傷など脊髄疾患(経口顆粒)|Livtencity(maribavir)*★/武田薬品工業/既存の抗サイトメガロウイルス療法に難治・抵抗性のCMV感染/感染症(12歳以上)|Cytalux(pafolacianine)*/米オンターゲットラボラトリーズ/卵巣がんの手術中の悪性病変発見の補助(蛍光造影剤)|※米FDA(食品医薬品局)や各社の発表資料をもとに作成

 

「Dyanavel XR」米トリスファーマ

「Dyanavel XR」は、注意欠陥・多動症(ADHD)治療薬amphetamineの経口徐放製剤(錠剤)。6歳以上の患者が対象です。主に成人患者に対する新たな治療選択肢として開発され、臨床試験では既存の経口徐放懸濁液との生物学的同等性が示されました。

 

「Yutrepia」米リキディア

「Yutrepia」は、肺動脈性肺高血圧症治療薬treprostinilの吸入用粉末製剤。リキディアは、treprostinilの噴霧製剤を販売する米ユナイテッドセラピューティクスから特許侵害訴訟を起こされており、今回の承認は暫定承認。来年10月以降もしくは訴訟が解決したあと、正式な承認を受けて販売を開始する見通しです。

 

「Eprontia」米Azurity

「Eprontia」は、抗てんかん薬topiramateの経口液剤。適応は▽2歳以上のてんかん部分発作、全般性強直間代発作に対する単剤療法▽2歳以上のてんかん部分発作、全般性強直間代発作、レノックス・ガストー症候群に伴う発作に対する補助療法▽12歳以上の片頭痛発作の予防――。錠剤の服用が難しい患者への使用が見込まれます。

 

「Besremi」台湾ファーマエッセンシア

「Besremi」(一般名・ropeginterferon alfa-2b)は、2週に1回または4週に1回皮下投与する長時間作用型の真性多血症治療薬。同適応に対するインターフェロン治療は米国初で、治療歴に関係なく使用できます。承認の根拠となった臨床試験では、61%の患者で血液学的完全奏効が認められました。欧州でも2019年に承認されています。

 

「Voxzogo」米バイオマリン

C型ナトリウム利尿ペプチドアナログ「Voxzogo」(vosoritide)は、軟骨無形成症患者の線形成長を増加させる治療薬として迅速承認を取得。5歳以上の骨端板(成長板)が開いている小児患者が対象です。軟骨無形成症は、軟骨内骨成長を抑制するFGFR3が活性化されることで起こる疾患で、VoxzogoはFGFR3の下流のシグナル伝達経路を調節することで骨成長を促します。欧州では今年8月に承認されており、日本でも申請中です。

 

「Fyarro」米アーディ

mTOR阻害薬「Fyarro」(sirolimus protein-bound particles)は、米国初となる局所進行の切除不能・転移性の悪性血管周囲上皮性細胞腫瘍治療薬。承認の根拠となったP2試験では、39%の全奏効率を示しました。

 

「Livtencity」武田薬品工業

「Livtencity」(maribavir)は、経口抗サイトメガロウイルス(CMV)薬。対象は、既存の移植後抗サイトメガロウイルス療法(ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネット、シドフォビル)に難治性・抵抗性の12歳以上の患者。Livtencity は英グラクソ・スミスクラインが創製したCMV pUL97を標的とする化合物で、ウイルスのDNA複製を阻害するなどの作用を持ちます。造血細胞移植の患者に対する1次治療を対象にP3試験が進行中です。

 

「EaseVRx」米AppliedVR

「EaseVRx」は、認知行動療法を使って慢性疼痛を緩和するバーチャルリアリティ(VR)機器。慢性腰痛と診断された18歳以上の患者に使用します。EaseVRxの治療プログラムには2~16分のVRセッションが56個含まれており、患者はプログラムを通じて痛みを緩和させるスキルを身に着けます。承認の根拠となった臨床試験では、6割を超える使用者で痛みが30%以上軽減しました。

 

【適応拡大】「Keytruda」の腎細胞がんに対する術後補助療法など

 

【2021年11月に米FDAが承認した主な適応拡大】<製品名(一般名)><社名><適応>Keytruda(pembrolizumab)/米メルク/特定の腎細胞がんの術後補助療法|Injectafer(ferric/carboxymaltose)/米アメリカン・リージェント/鉄欠乏性貧血(1歳以上の小児)| Kyprolis(carfilzomib)+「Darzalex/Faspro」(daratumumab/hyaluronidase)/米アムジェン/米ヤンセン/再発・難治性の多発性骨髄腫(+dexamethasone)|※米FDA(食品医薬品局)や各社の発表資料をもとに作成

 

「Keytruda」米メルク

免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1抗体「Keytruda」(pembrolizumab)は、腎細胞がんの術後補助療法に適応拡大しました。腎摘除術後の再発リスクが高い患者や、腎摘除術・転移巣切除術後の患者が対象となります。早期がんでの承認は米国では4つ目。承認の根拠となったP3試験では、プラセボと比べて再発・死亡のリスクを32%低下させました。日本でも申請中です。

 

「Injectafer」米アメリカン・リージェント

第一三共の米子会社アメリカン・リージェントの鉄欠乏性貧血治療薬「Injectafer」(ferric carboxymaltose)は、鉄分の経口摂取で十分な治療効果が得られない鉄欠乏性貧血の適応で1歳以上の小児に対象が広がりました。同薬はスイスのビフォーファーマが開発した静注鉄剤で、米国では成人患者を対象に2013年に承認。日本でもゼリア新薬工業が昨年発売しました。

 

「Kyprolis」+「Darzalex Faspro」米アムジェン/米ヤンセン

米アムジェンのプロテアソーム阻害薬「Kyprolis」(carfilzomib)と米ヤンセンの皮下投与の抗CD38抗体「Darzalex Faspro」(daratumumab/hyaluronidase)は、再発・難治性の多発性骨髄腫を対象にdexamethasoneとの3剤併用療法が承認されました。対象は1~3回の治療歴のある患者。すでにdaratumumab の点滴静注製剤「Darzalex」とKyprolis、dexamethasoneの3剤併用療法は承認済みですが、今回の承認で利便性向上が見込まれます。今後、世界各国で申請を行う予定です。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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