2021年10月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】再生医療製品「Rethymic」や慢性骨髄性白血病治療薬「Scemblix」など
「Tavneos」米ケモセントリックス
補体 C5a 受容体阻害薬「Tavneos」(一般名・avacopan)は、多発性血管炎性肉芽腫症や微鏡的多発性血管炎といったANCA(抗好中球細胞質抗体)関連血管炎の補助療法。標準治療と併用します。日本ではキッセイ薬品工業が今年9月に承認を取得。欧州でも申請中です。
「Rethymic」大日本住友製薬
再生医療製品「Rethymic」は、小児先天性無胸腺症の免疫再構築に対する米国初の治療薬。大日本住友製薬の子会社エンジバント・セラピューティクスが開発した他家培養胸腺組織で、1993年から2020年までに105人の患者を対象に行った臨床試験をもとに承認されました。19年4月に行った最初の申請はFDAからCMCに関する指摘を受けて承認見送りとなりましたが、今年4月に再申請して承認を取得。大日本住友にとって初めての再生医療製品となります。
「Seglentis」スペイン・エステベ
選択的COX-2阻害薬celecoxibとオピオイド鎮痛薬tramadolの共結晶製剤「Seglentis」は急性疼痛治療薬。米国では興和の米子会社が商業化を行う予定で、2022年初頭の発売を見込んでいます。
「Tyrvaya」米オイスター・ポイント
「Tyrvaya」(varenicline tartrate)はドライアイの兆候や症状に使用される点鼻薬。コリン作動性受容体に結合して三叉神経の副交感神経経路を活性化し、涙液膜の産生を増加させる作用を持っています。ドライアイ治療に対する点鼻薬は米国初です。
「Xipere」米クリアサイド
合成副腎皮質ホルモン剤「Xipere」(triamcinolone acetonide)は、ぶどう膜炎に伴う黄斑浮腫に対する米国初の治療薬。網膜上腔に注射し、網膜と脈絡膜に治療薬を送達する独自のドラッグデリバリー技術を使っています。同技術を使った治療薬としては初の実用化となりました。
「Susvimo」米ジェネンテック
眼科用VEGF阻害薬ranibizumabの埋め込み型製剤「Susvimo」は、滲出型加齢黄斑変性治療薬。対象は抗VEGF注射を2回以上投与して効果が認められた患者。月1回の投与が必要な既存製剤に対し、埋め込み型製剤は年に2回の投与で済みます。欧州でも申請中です。
「Vuity」米アッヴィ
ムスカリン性コリン受容体作動薬「Vuity」(pilocarpine hydrochloride)は、1日1回投与の老眼治療薬。750人の患者を対象とした臨床第3相(P3)試験では、遠方視力を低下させずに近・中距離視力を改善させました。
「Scemblix」スイス・ノバルティス
STAMP阻害薬「Scemblix」(asciminib)は、慢性期のフィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病治療薬。2つ以上のチロシンキナーゼ阻害薬による治療を受けた患者に対する適応で迅速承認を、T315I遺伝子変異を持つ患者に対する適応では完全承認を取得しました。承認のもととなった臨床試験では、bosutinibと比べて24週時点の分子遺伝的大寛解(MMR)率が約2倍となりました。日本でもP3試験が進行中です。
【適応拡大】「Verzenio」の早期乳がんの術後補助療法や「Tecentriq」の非小細胞肺がんの術後補助療法など
「Dextenza」米オキュラー
眼球内に挿入するdexamethasone製剤「Dextenza」は、新たにアレルギー性結膜炎に関連する目のかゆみに使用できるようになりました。承認のもととなった3つの臨床試験では、対照群と比べてかゆみを有意に減少させました。同薬は18年に眼科手術後の眼痛治療の適応で承認。翌年6月には手術後の炎症に適応拡大しています。
「Verzenio」米イーライリリー
CDK4/6阻害薬「Verzenio」(abemaciclib)は、ホルモン受容体(HR)陽性・HER2陰性の高リスク早期乳がんに対する術後補助療法として新たに承認されました。内分泌療法と併用します。臨床試験では、内分泌療法のみと比べ、乳がんの再発・死亡リスクを37%低下させました。日本でも同適応で開発後期段階にあります。米国では、HR陽性・HER2陰性の進行・転移性乳がんの男性患者に、アロマターゼ阻害薬との併用療法やfulvestrantとの併用療法が使用できるようになりました。
「Keytruda」米メルク
免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1抗体「Keytruda」(pembrolizumab)は、PD-L1陽性の治療抵抗性、再発・転移性子宮頸がんに適応拡大。化学療法との併用療法、もしくは化学療法とベバシズマブとの併用療法で使用します。FDAはまた、化学療法による治療を受けたPD-L1陽性の再発・転移性子宮頸がんに対するKeytruda単剤療法を完全承認しました。日本では今年10月、進行・再発子宮頸がんの適応で申請を行いました。
「Tecentriq」米ジェネンテック
免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-L1抗体「Tecentriq」(atezolizumab)は、PD-L1発現1%以上のステージ2~3Aの非小細胞肺がんの術後補助療法として承認されました。手術とプラチナベースの化学療法を受けた成人患者が対象。がん免疫療法が非小細胞肺がんの術後補助療法として承認されるのは初めてです。臨床試験では、支持療法と比較して再発・死亡のリスクを34%減少させました。スイスや英国、欧州、日本などでも申請中です。
「Dupixent」米リジェネロン
抗IL-4/13受容体抗体「Dupixent」(dupilumab)は、中等度から重度の喘息の追加維持療法として、6~11歳の小児患者に使用できるようになりました。好酸球性表現型喘息、経口コルチコステロイド依存性喘息の患者が対象です。欧州でも申請中です。