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ニュース解説

FDAの新薬承認が研究者を困惑させ、混乱させている

更新日

ロイター通信

 

[ロイターヘルス]米FDA(食品医薬品局)がアルツハイマー病治療薬「Aduhelm」を承認したことは、医療関係者を当惑させ、動揺させ、あるいは怒らせた。

 

臨床的ベネフィットのエビデンスが不十分だとして専門家による諮問委員会が満場一致で否定的な見解を示したにも関わらず、FDAは何を根拠にこの薬を承認したのだろうか。

 

9月21日、米国内科学会が発行する医学雑誌「Annals of Internal Medicine」のオンライン版に「U.S. Food and Drug Administration Reasoning in Approval Decisions When Efficacy Evidence Is Borderline, 2013–2018」と題する論文が掲載された。この中で著者らは「アデュカヌマブをめぐる決定は明らかにFDAの前例を破ったものであり、多くの人に衝撃を与えた」と書いている。

 

一方、著者の一人である米スタンフォード大のスティーブン・グッドマン博士は、価値に疑問がある医薬品に対してFDAは前例そのものを持たないと指摘する。同博士はロイターヘルスの電話インタビューに応じ、「FDAは前例に縛られない。だから、ちょっとした西部開拓時代のようなシステムが可能になっている」とし、「すべての決定はオーダーメイドだ。そのため、何が彼らの決定に影響を与えているのか、実際のところはよくわからない」と話した。

 

米国のAduhelmの薬剤費は年間5万6000ドル。同薬の承認をめぐっては、否定的な見解を示した諮問委のメンバー3人が、FDAの決定に抗議して辞任を表明した。

 

Annals of Internal Medicineに掲載された論文は、Aduhelmを直接の分析対象としているわけではない。そのかわり、研究では2013~18年に提出された22の医薬品の申請に焦点を当てている。それらは、有効性のエビデンスが不十分だとして一旦は承認が見送られたものの、のちにFDAが承認した医薬品で、ドライアイ治療薬「Xiidra」や女性向けバイアグラと言われる「Addyi」などが含まれる。

 

グッドマン博士によると、彼らの研究チームがこうした医薬品を分析の対象としたのは、未承認薬とは異なり、その記録が一般に公開されているからだという。彼らは、そこから連邦政府機関が承認の根拠を導くパターンや前例を探った。

 

「その結果、FDAが結論に至る経緯を理解するのは非常に困難だった。私たちは、それぞれの決定の間に一貫した論理を見出すことはできなかった」とグッドマン博士は話す。

 

分析対象とした医薬品のうち、いくつかは新たなエビデンスが提出されたあとに承認され、またいくつかは矛盾した試験結果が明らかになったあとに承認されていた。問題が解決していないにも関わらず、FDAの部門長が8つの薬を承認したこともあったし、別の部門に申請が移ってかから判断が変わったものもある。

 

FDAにはデータベースがあるが、それはほとんど構造化されておらず、まるで目次も索引もない取扱説明書のようだとグッドマン博士は言う。研究チームは何日もかけて資料を読み込んだが、当初承認が却下された22の事例の中には、過去のFDAの決定に関する記述は見当たらなかった。

 

Aduhelmの承認を受けてFDAの諮問委を辞任したワシントン大の神経科医ジョエル・S・パールマッター教授は、グッドマン博士らの論文に付随する論評をAnnals of Internal Medicineに書いている。パールマッター氏はその中で、グッドマン氏らの研究を「FDAの行動を解明する重要な第一歩だ」と評価した。

 

FDAが市民や科学者の信頼を得るには、どのようにして決定を下したかを明確にしなければならない。それは例えば、FDAはリスクとベネフィットをどう区別しているのか、諮問委をいつ、どのように招集しているのか、諮問委の提言をどのように評価しているのか、世論の圧力にどう対応しているのか、などだ。

 

論文の著者らは、FDAに対し、類似した事例を迅速に検索できるデータベースの構築を求めている。また、承認をめぐる判断を下す際は、過去の決定を引用することを義務付けるべきだとしている。

 

パールマッター博士は、FDAが規制対象とする業界との経済的なつながりを断つことを求めている。FDAの予算の半分以上は、承認を申請した企業が提供しているという。

 

パールマッター氏は「FDAと産業界との経済的なつながりを断ち切ることは、独立性の確保につながる。FDAの決定は、メディケアを通じて連邦政府の支出にも大きな影響を与える可能性があり、政府が100%資金を提供すれば実質的な投資収益をもたらす可能性がある」と書いている。Aduhelmは、メディケアの年間支出に数千億ドルもの影響を与える可能性があるとされる。

 

FDAのジャネット・ウッドコック長官代理は7月、Aduhelmの承認をめぐるFDAとバイオジェンの関係について、米保健福祉省の監査総監室に調査を求めた。今月はじめには、連邦議会議員が同薬の承認をめぐる文書を開示するようFDAに要求している。

 

SOURCE:https://bit.ly/2ZtO95Qhttps://bit.ly/3ESA4Pm (Annals of Internal Medicine, online September 20, 2021)

 

(Ronnie Cohen、翻訳:AnswersNews)

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