2021年8月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】ポンペ病治療薬「Nexviazyme」や血液透析下での皮膚そう痒治療薬「Korsuva」など
「Nexviazyme」米ジェンザイム
「Nexviazyme」(一般名・avalglucosidase alfa)は、遅発型ポンペ病治療薬。ポンペ病に対する酵素補充療法の主要経路であるマンノース-6-リン酸(M6P)受容体を標的とする酵素補充療法で、筋肉細胞に蓄積されたグリコーゲンを効果的に除去します。臨床試験では、呼吸機能と歩行距離の改善が確認されました。
「Welireg」米メルク
HIF-2α阻害薬「Welireg」(belzutifan)は、フォン・ヒッペルリンドウ(VHL)病関連のがんに対する治療薬です。対象は、VHL病に伴う腎細胞がん、中枢神経系血管芽腫、膵神経内分泌腫瘍。がん細胞の増殖や血管新生などに関わるHIF-2αの転写と発現を減らすことで、抗腫瘍効果を発揮すると考えられています。日本では腎細胞がんを対象に臨床第2相(P2)試験が進行中です。
「Korsuva」米カラ
「Korsuva」(difelikefalin)は、血液透析を行う慢性腎臓病患者の皮膚そう痒(中等度から重度)に対する治療薬。末梢神経系を標的とするκ-オピオイド受容体作動薬です。米国での商業化にあたっては、スイス・ビフォーファーマとライセンス契約を結んでいます。日本では丸石製薬がP3試験を実施しており、開発・販売でキッセイ薬品工業と提携しています。
「Comirnaty」独ビオンテック
米ファイザーと独ビオンテックが共同開発した新型コロナウイルス向けmRNAワクチン「Comirnaty」は、正式承認を取得しました。同ワクチンは昨年12月、P3試験の初期データに基づいて緊急使用許可(EUA)を取得。米国ではすでに数億回分が接種されています。正式承認にあたっては、2回目接種から6カ月間の有効性・安全性データを含むデータパッケージが審査されました。
「Skytrofa」デンマーク・アセンディス
「Skytrofa」(lonapeg-somatropin)は、成長ホルモン製剤somatropinの長時間作用型プロドラッグ製剤。体重11.5Kg以上で、内因性成長ホルモンの分泌が不十分な成長障害の小児患者(1歳以上)に使用されます。従来製剤は毎日投薬する必要が必要ありましたが、同薬は週1回の投与で済み、治療負担の軽減につながると期待されています。欧州でも申請中で、日本と中国では小児患者対象のP3試験が行われています。
【適応拡大】「Keytruda」「Lenvima」併用療法の腎細胞がん、「Tibsovo」の胆管がんなど
「Evomela」米アクロテック
多発性骨髄腫治療薬のアルキル化薬「Evomela」(melphalan)は、経口投与が適切でない患者に対する「多発性骨髄腫の緩和的治療」の適応を自主的に取り下げました。これにより、同薬の適応は「造血幹細胞移植の前処置」のみとなりました。
「Keytruda」+「Lenvima」米メルク/エーザイ
米メルクの「Keytruda」(Pembrolizumab)とエーザイの抗がん剤「Lenvima」(lenvatinib)の併用療法は、成人の進行性腎細胞がんの一次療法に使用できるようになりました。P3試験では、sunitinibと比較して、無増悪生存期間または死亡のリスクを61%減少。2剤の併用療法としては子宮内膜がんに続く2つ目の適応で、日本と欧州でも両適応で申請を済ませています。
「Xywav」アイルランド・ジャズ
ナルコレプシー治療薬「Xyrem」(sodium oxybate)の低ナトリウム製剤である同「Xywav」(calcium, magnesium, potassium, and sodium oxybates)は、新たに成人の特発性過眠症で承認。一晩に1~2回投与します。同適応に対する治療薬は米国初。エプワース眠気尺度の点数の変化を評価した臨床試験では、プラセボと比べて統計学的に有意かつ臨床的に意味のある差を示しました。
「Jardiance」独ベーリンガーインゲルハイム
SGLT2阻害薬「Jardiance」(empagliflozin)は、左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)に適応拡大。糖尿病の合併の有無を問わず使用できます。同適応では米国に先駆け、今年6月に欧州で承認を取得。日本でも慢性心不全の適応で申請中です。
「Opdivo」米ブリストル
免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1抗体「Opdivo」(nivolumab)は、根治切除後の再発リスクの高い尿路上皮がんの術後補助療法として新たに承認されました。術前補助化学療法やリンパ節転移の有無、PD-L1 の発現レベルにかかわらず使用できます。承認の根拠となったP3試験では、プラセボと比べて無病生存期間の中央値を2倍近く延長し、再発または死亡のリスクを30%低減しました。日本と欧州でも同適応で申請済みです。
「Xarelto」米ヤンセン
抗凝固薬「Xarelto」(rivaroxaban)は、末梢動脈疾患(PAD)の適応で、症候性PADによる下肢血行再建術後の患者に対象が広がりました。アスピリンと併用することで、主要な血栓性血管イベントのリスク低減します。日本では開発・販売を行うバイエル薬品が冠動脈疾患(CAD)とPADの適応でP3試験を行っています。
「Tibsovo」仏セルヴィエ
IDH1阻害薬「Tibsovo」(ivosidenib)は、IDH1遺伝子変異陽性の局所進行または転移性胆管がんに適応拡大。既治療の患者が対象です。米国では胆管がん患者の最大20%でIDH1遺伝子変異が見られるといい、同変異を持つ胆管がんに対する初の治療薬として期待されています。承認のもととなったP3試験では、プラセボと比べて無増悪生存期間を有意に延長しました。
「Jemperli」英グラクソ・スミスクライン
抗PD-1抗体「Jemperli」(dostarlimab)は、ミスマッチ修復機能欠損(dMMR)を有する再発・進行固形がんに適応拡大しました。dMMR固形がん患者では、臨床試験で41.6%の客観的奏効率を示しました。同薬は今年4月、再発・進行dMMR子宮内膜がんの適応で迅速承認を取得しており、現在、卵巣がんや転移性がんなどで単剤・併用療法として開発が行なわれています。
「Keytruda」米メルク
免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1抗体「Keytruda」は、進行尿路上皮がんの1次治療の適応で完全承認を取得。あわせて、添付文書内の記載を、「プラチナ製剤を含む化学療法が使用できない、局所進行または転移性尿路上皮がん」に改訂しました。同適応では2017年に迅速承認を取得。検証的P3試験では、無増悪生存期間と全生存期間の有意な延長は確認されませんでしたが、FDAの諮問委員会が承認維持を支持しました。
「Brukinsa」中国ベイジーン
BTK阻害薬「Brukinsa」(zaubrutinib)は、成人のワルデンシュトレームマクログロブリン血症(WM、原発性マクログロブリン血症)に適応拡大。臨床試験では、Ibrutinibと比べて奏効率と忍容性を改善しました。同薬は米国で19年、マントル細胞リンパ腫治療薬として承認。WMの適応では、中国で今年6月に承認されています。日本では成熟B細胞性悪性腫瘍に対するP1/2試験が進行中です。