2020年に世界で最も売れた医薬品は、前年に続いて米アッヴィの抗TNFα抗体「ヒュミラ」だったことが、米IQVIAの調査でわかりました。2位は米ブリストル・マイヤーズスクイブと米ファイザーの抗凝固薬「エリキュース」で、3位は米メルクの免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」。上位20製品のうち9製品が日本円で1兆円を超える売り上げを記録しました。
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ヒュミラ 3兆円を突破
米IQVIAが発表した世界の医薬品市場に関するデータによると、2020年の製品別売上高が世界一となったのは米アッヴィの抗TNFα抗体「ヒュミラ」。売上高は為替変動の影響を除いて前年から7.5%増加し、290億1100万ドル(約3兆1912億円)に達しました。
2位は173億9000万ドル(前年比28.3%増、約1兆9129億円)を売り上げた米ブリストル・マイヤーズスクイブ/米ファイザーの抗凝固薬「エリキュース」、3位は151億1300万ドル(32.9%増、約1兆6624億円)の免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」(米メルク)。4位は117億2900万ドル(12.0%、約1兆2902億円)の抗凝固薬「イグザレルト」(独バイエル)で、上位4製品は前年と同じでした。
上位20製品のうち、売り上げが日本円で1兆円を超えたのは9製品。5位の抗IL-12/23p40抗体「ステラーラ」(111億4400万ドル、約1兆2258億円)や7位のGLP-1受容体作動薬「トルリシティ」(98億5000万ドル、約1兆835億円)は、前年から売り上げを大きく伸ばして順位を上げました。前年は20位圏外だった米ギリアド・サイエンシズの抗HIV薬「ビクタルビ」は、69.6%増の92億5000万ドル(約1兆175億円)を売り上げ、8位にランクインしています。
オプジーボは10位
日本企業が創製した医薬品では、免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」(ブリストル/小野薬品工業)が唯一トップ20入り。売上高は83億8800万ドル(約9227億円)で、前年から2.1%増加したものの、順位は10位へと2ランクダウンしました。
11位以下では、独ベーリンガーインゲルハイム/米イーライリリーのSGLT2阻害薬「ジャディアンス」や、デンマーク・ノボノルディスクのGLP-1受容体作動薬「オゼンピック」、バイエルの眼科用VEGF阻害薬「アイリーア」などが大きく売り上げを拡大し、新たにトップ20入り。一方、抗がん剤「アバスチン」「リツキサン」「ハーセプチン」(いずれもスイス・ロシュ)や喘息・COPD治療薬「シムビコート」(英アストラゼネカ)はトップ20から姿を消しました。
上位20製品を疾患領域別に見ると、最も多かったのは糖尿病で6製品。がんと自己免疫疾患が5製品で続きました。
世界市場は約130兆円に
2020年の世界市場は1兆1814億5900万ドル(約129兆9605億円)。新型コロナウイルス感染拡大の影響はあったものの、前年比4.4%増と堅調でした。
疾患領域・薬効別に見ると、最大市場の「がん」は1569億4300万ドル(約17兆2637億円)で前年から11.8%拡大。2位は1138億7700万ドル(10.5%増、約12兆5265億円)の「糖尿病」、3位は653億3400万ドル(6.6%増、約7兆1867億円)の「自己免疫疾患」でした。
がんや糖尿病以外で前年からの増加が大きかったのは、「抗凝固薬」(11.1%増)と「免疫抑制剤」(22.6%増)。一方、「抗菌薬」(11.1%減)や「神経疾患」(8.1%減)などは落ち込みました。
医療用医薬品と一部OTCを合わせた企業別の製品売上高では、アッヴィが7.6%増の599億1000万ドル(約6兆5901億円)で初の首位を獲得。2位は米ジョンソン・エンド・ジョンソン(596億7900万ドル、8.7%増)、3位はスイス・ノバルティス(542億6200万ドル、2.7%増)でした。武田薬品工業は281億7000万ドル(4.5%増)で前年と同じ15位。特許切れ製品を分社化したファイザーは前年4位から9位に後退し、同社の特許切れ製品と米マイランが合併して誕生した米ヴィアトリスが19位に入りました。