[ロイター]米FDA(食品医薬品局)は6月7日、米バイオジェンとエーザイが開発したアルツハイマー病治療薬アデュカヌマブの承認の可否を判断する予定だ。新薬の登場を求める声は切実で、承認を予想するアナリストがいる一方、その可能性は50%を大きく下回ると見るアナリストもいる。
アデュカヌマブが承認されれば、アルツハイマー病の根本原因にアプローチする初めての治療法となる。FDAの判断は、バイオジェンとエーザイだけでなく、米イーライリリーなどアルツハイマー病治療薬を開発しているほかの製薬企業にも影響を与える。さらには、当局の寛容さのシグナルとして広く製薬業界に波及する可能性もある。
アデュカヌマブは、脳内のアミロイドプラークを除去する作用を持つ抗体医薬だが、2つの大規模試験のうち1つでしか疾患の進行を有意に遅らせることができかなった。アルツハイマー病に対して同様のアプローチをとった過去の新薬候補は、すべて失敗に終わっている。
アルツハイマー病治療のアンメットニーズは高く、患者からは承認を求める声が上がっているが、医師の間では懐疑的な意見も少なくない。
承認の確率は
昨年11月、FDAの諮問委員会は、FDAのスタッフが「成功した試験には説得力がある」と報告したにもかかわらず、アデュカヌマブがアルツハイマー病の進行を遅らせることは証明されてないとの見解を示した。一方、アルツハイマー病協会でチーフ・ストラテジー・オフィサーを務めるジョアン・パイク博士は、「アデュカヌマブの承認を支持する。それは、アルツハイマー病治療の新時代到来を告げるものになる」とロイターに語った。
オッペンハイマーは先月、アデュカヌマブの販売開始に向けて準備を進めているとのバイオジェンのコメントを引用し、同薬の承認確率を33%から50%に引き上げた。
みずほ証券のアナリスト、サリム・サイード氏は最近のリサーチノートで「FDAがアデュカヌマブを承認すれば、バイオジェンの株価は400ドル程度まで上昇する可能性がある。逆に、承認されなければ200ドル程度まで下がるだろう」と述べている。バイオジェン株は6月3日時点で271ドル付近で取引されており、諮問委員会の会合前の昨年11月につけた355.63ドルから下落している。
バンク・オブ・アメリカのアナリスト、ジェフ・ミーチャム氏は、FDAがアデュカヌマブを承認しない確率を75%と見ていると語っている。一方で、承認の可能性を高く見積もる意見もあり、ISIグループのアナリストであるウマル・ラファット氏は最近のウェブキャストで「私はあえて3分の2の確率で承認されると言っている」と述べている。
厳格さのバロメーターに
アナリストたちは、FDAが狭い範囲での承認を提示する可能性もあると推測している。例えば、アデュカヌマブの使用を特定の患者に限定したり、有効性を証明するためのさらなるデータを要求したり、といった具合だ。
アデュカヌマブの承認の可否をめぐる判断は、まだFDA長官を指名していないバイデン政権下で、FDAがどれだけ厳格さを打ち出してくるかのバロメーターとして見られるかもしれない。FDAは現在、ジェネット・ウッドコック長官代理によって運営されている。
バンク・オブ・アメリカのミーチャム氏は「もしもFDAがアデュカヌマブを承認すれば、おそらく規制の柔軟性は増すことになるだろう」と述べている。
バイオジェンの予測では、米国で約150万人がアデュカヌマブの投与対象になるが、診断と治療の両方にコストがかかることが懸念されている。リフィニティブのデータによると、アナリストらはアデュカヌマブの年間売上高は2023年までに12億6000万ドルに達すると予想している。
(Deena Beasley、翻訳:AnswersNews)