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ニュース解説

アルツハイマー病「タウ」も苦難の道へ?

スイスのACイミューンが、アルツハイマー病を対象に開発している抗タウ抗体の臨床第2相試験で主要評価項目を達成できなかったと発表しました。タウを標的とするアルツハイマー病治療薬が臨床試験に失敗したのは2016年のタウリックス(シンガポール)以来、2つ目。BACE阻害薬や抗アミロイドβ抗体が相次いで開発に失敗する中、頼みの綱として期待がかかる抗タウ抗体ですが、こちらも苦難の道をたどることになるのでしょうか。

 

 

P2試験で主要評価項目未達

スイスのバイオ医薬品企業ACイミューンは9月23日、ロシュグループの米ジェネンテックと共同開発している抗タウ抗体セモリネマブについて、早期アルツハイマー病(前駆症状から軽度)を対象とした臨床第2相(P2)試験で主要評価項目を達成することができなかったと発表しました。同試験の主要評価項目は臨床症状指標CDR-SBの低下抑制で、副次的評価項目の認知機能指標ADAS-Cog13と日常生活動作指標ADCS-ADLも未達に終わりました。

 

ACイミューンのアンドレア・ファイファーCEO(最高経営責任者)は、試験の失敗について「アルツハイマー病の症状・病理とタウの相関に関するわれわれの知見から考えると、驚くべきことであり、残念だ」とコメント。詳細な結果は今後、ジェネンテックが関連学会で発表するとし、中等度のアルツハイマーを対象としたセモリネマブのP2試験は続けるといいます。

 

アルツハイマー病の原因は明確にはわかっていませんが、アミロイドβタンパク質が脳の神経細胞外に蓄積して老人斑を形成し、神経細胞に存在するタウタンパク質の異常凝集を引き起こして神経細胞を死に至らしめると考えられています。

 

「BACE」「アミロイドβ」軒並み失敗

この仮説をもとに、世界中の製薬企業がアミロイドβやタウを標的としたアルツハイマー病治療薬の開発に着手。これまで、▽アミロイドβの産生を防ぐ薬剤(BACE阻害薬)▽アミロイドβを除去する薬剤(抗アミロイドβ抗体)▽タウを除去したり、タウの凝集を阻害したりする薬剤(抗タウ抗体、タウ凝集阻害薬)――などの開発が進められてきました。

 

ただ、開発に成功した薬剤は1つもありません。

 

開発が先行していたアミロイドβを標的とする薬剤では、BACE阻害薬のベルベセスタット(米メルク)やラナベスタット(米イーライリリー/英アストラゼネカ)、エレンベセスタット(米バイオジェン/エーザイ)などが相次いで開発を中止。抗アミロイドβ抗体でも、バピネオズマブ(米ファイザー)やソラネズマブ(イーライリリー)、クレネズマブ(スイス・ロシュ)などがP3試験に失敗しています。

 

【主なアルツハイマー病薬の開発状況】(※は過去に試験に失敗し、対象患者を変更するなどして開発を続けている品目)(<標的>品名/社名/開発状況): <BACE>ベルベセスタット/メルク/開発中止 |ラナベスタット/イーライリリー・アストラゼネカ/開発中止 |ウミベセスタット/ノバルティス・アムジェン/開発中止 |エレンベセスタット/バイオジェン・エーザイ/開発中止 <アミロイドβ>アデュカヌマブ/バイオジェン・エーザイ/申請 |BAN2401/エーザイ・バイオジェン/P3 |ソラネズマブ/イーライリリー/P3※ |ガンテネルマブ/ロシュ/P3※ |クレネズマブ/ロシュ/P3※ |バピネオズマブ/ファイザー/開発中止 <タウ>LMTX/タウリックス/P2/3※ |セモリネマブ/ACイミューン・ロシュ/P2※ |ABBV-8E12/アッヴィ/P2 |ザゴテネマブ/イーライリリー/P2 |ゴスラネマブ/バイオジェン/P2 |BIIB076/バイオジェン/P1 |E2814/エーザイ/P1 |各社のパイプラインやプレスリリースをもとに作成

 

抗タウ抗体 アッヴィやリリーが開発

アミロイドβで開発失敗が続く中、相対的に期待が高まっていたタウですが、セモリネズマブのP2試験失敗でこちらも雲行きが怪しくなってきました。タウを標的とする薬剤では、2016年にシンガポールのタウリックス・ファーマシューティカルズがタウ凝集阻害薬「LMTX」のP3試験で有効性を示すことができなかったと発表。セモリネズマブはこれに続く開発後期段階での失敗となります。

 

抗タウ抗体は、ACイミューンのほかにも、▽米アッヴィの「ABBV-8E12」(P2試験)▽イーライリリーの「LY3303560」(ザゴテネマブ、P2試験)▽バイオジェンの「BIIB092」(ゴスラネマブ、P2)▽同社の「BIIB076」(P1試験)▽エーザイの「E2814」(P1試験)――が臨床試験を実施中。ロシュとジェネンテックは今年7月、ベルギーのUCBから新規の抗タウ抗体「UCB0107」を導入しました。

 

ゴスラネマブは昨年末、アルツハイマー病と同じタウオパチー(神経原線維変化を示す神経変性疾患の総称)である進行性核上麻痺のP2試験で主要評価項目を達成できず、同疾患での開発を中止。一方、アルツハイマー病を対象とした開発は続けています。

 

アデュカヌマブ 来年3月までに承認判断

バイオジェンは今年7月、エーザイと共同開発している抗アミロイドβ抗体アデュカヌマブを米国で申請。無益性解析の結果2本のP3試験を中止したものの、その後の追加解析によって片方の試験で主要評価項目を達成したため、申請に踏み切りました。疾患修飾薬の実用化へ望みをつなぎましたが、実際に承認されるかどうかはまだわかりません。米FDA(食品医薬品局)はアデュカヌマブに優先審査を適用し、審査終了目標日を来年3月7日に設定しました。バイオジェンとエーザイは、欧州や日本でも申請に向けた準備を進めています。

 

抗アミロイドβ抗体では、リリーがかつてP3試験に失敗したソラネズマブの開発を続けており、プレクリニカル期のアルツハイマー病を対象にP3試験を実施中。エーザイはアデュカヌマブとは別の「BAN2401」をバイオジェンと共同開発しているほか、ロシュも家族性アルツハイマー病を対象にクレネズマブの開発を継続しています。

 

各社のパイプラインを見ると、タウのリン酸化を防ぐO-GlcNAcase阻害薬や、ミクログリアの貧食能を高めてアミロイドβを除去する抗TREM2抗体など、新たな作用機序の薬剤も初期の臨床開発に入ってきており、アルツハイマー病への挑戦は続きます。

 

(前田雄樹)

 
AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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