米国に本社を置くコンサルティング企業DRGのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。積極的なM&Aで市場を拡大させている米民間保険モリナ・ヘルスケア。業界での存在感は高まっており、注目を集めています。
(この記事は、DRGのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら)
小規模プランを次々買収
企業買収で有名なモリナ・ヘルスケアは昨年、すでに参入しているメディケイドの市場で事業を拡大させ、いくつかの新市場にも参入した。規模の小さい民間保険プランを買収の対象とし、その実務経験を活用して市場を拡大させるモリナの戦略は、同社の成長をうまく後押ししている。
カリフォルニアに本社を置くモリナ・ヘルスケアは、米国で最大のメディケイド・マネージド・ケア組織(MCO)の1つだ。同社の市場は、ワシントン、カリフォルニア、ミシガン、オハイオ、イリノイ、テキサスの各州とプエルトリコが上位を占めている。モリナは、個人向け民間保険プランの提供や、メディケア・メディケイドの二重資格者を対象とする小規模なメディケア・アドバンテージ事業も行っている。同社の加入者は全米で約300万人に上る。
モリナは昨年9月29日、ニューヨークを拠点とするアフィニティ・ヘルス・プランと3億8000万ドルで買収に合意したと発表した。このディールのポイントは、アフィニティが提供するプライマリケアと地域医療をモリナが支援することだ。アフィニティはニューヨーク地域で最大の医療提供者ネットワークの1つ。買収後は、モリナのポートフォリオに24万7000人のメディケイド受給者が加わることになる。
さらに、昨年7月1日には、ニューヨークを拠点とする別の保険プランであるユニケアも買収した。これでモリナは、ニューヨーク西部とフィンガーレイク地域7郡のメディケイド加入者4万3000人を獲得。これら2つの買収を通じ、モリナはニューヨーク地域で市場を拡大させる。
ケンタッキー州は、メディケイドMCOと5件の契約を結んでいるが、モリナは昨夏、そのうちの1件を獲得した。契約期間は今年1月~2024年12月となっている。
モリナは昨年9月1日、同州を拠点とするメディケイドMCOのパスポート・ヘルス・プランを買収した。両社の合意に基づき、モリナはパスポート・ヘルスの加入者に引き続き保険と医療を提供する。パスポートのブランド名も残し、従業員の雇用も継続する。
また、昨年4月30日には、米国6州で事業を展開するマゼラン・コンプリート・ケアを8億2000万ドルで買収している。これにより、モリナはバージニアとアリゾナの市場に参入し、ニューヨーク、フロリダ、ウィスコンシンのメディケイド市場も拡大する。マゼランは、マサチューセッツでメディケア・メディケイドの二重資格者を対象とするプランを提供している。買収に伴い、モリナの保険受給者や約12万4000人増えるとみられる。
注目集める戦略
モリナの競合となるのは、州のメディケイドプログラムや連邦政府との契約を通じて医療給付を行っている保険会社だ。センティーン、ヒューマナ、ユナイテッドヘルスグループなどがそれにあたる。
センティーンは昨年1月、ウェルケアの買収を完了した。これにより、センティーンのメディケイド市場は全米に広がり、住民の15人に1人をカバーすることとなった。この買収で、メディケイドの市場は統合が進み、市場独占によって保険料が上昇することが懸念されている。モリナのような新しいプレイヤーが市場に参入してくれば、メディケイドプランの選択肢が増え、利用者にとってはメリットがあると考えられる。マゼランやアフィニティの保険プランは各州で一定のシェアを獲得しており、これらを統合したモリナは新市場でも利益を上げられるだろう。
業績の振るわない保険プランを買収することは、モリナの成長戦略において必要不可欠かつ効果的な役割を担っている。革新的なアイデアを実行したり、実務経験を活用して事業を拡大したりできるような規模がないプランを買収して業績を拡大させるとともに、サービスが十分に行き届いてない人や保証内容が十分でない人にはプランの改善を図る。こうした戦略で、モリナは医療保険の重要なプレイヤーとして注目を集める存在となっている。
(原文公開日:2021年1月25日)
(この記事は、DRGのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです)
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