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新型コロナワクチン:接種後の血栓症についてこれまでにわかっていること

更新日

ロイター通信

[チューリッヒ ロイター]米国の医薬品規制当局は、米ジョンソン・エンド・ジョンソンの新型コロナウイルスワクチンの接種を受けた女性6人が血栓を発症したことを受け、同ワクチンの使用を一時中止するよう勧告した。同社は、欧州でのワクチン供給を延期すると発表している。

 

こうした動きは、欧州の医薬品規制当局が今月初め、英アストラゼネカの新型コロナウイルスワクチンと、同ワクチンの接種を受けた一部の人に発生した非常に稀な血栓との間に関連性がある可能性があると発表したことに端を発している。

 

英国の保健当局は、30歳未満の人に対しては、可能な限りアストラゼネカ製ではないワクチンを接種するよう勧告している。

 

新型コロナウイルスワクチン接種後の血栓症について、これまでにわかっていることは次の通りだ。

 

何が起こっているのか

アストラゼネカとJ&Jの新型コロナウイルスワクチンで、接種後に非常に稀な血栓が発生したと報告されている。血栓には、脳静脈洞血栓症(CVST)と呼ばれるタイプの血栓も含まれ、血小板減少を伴う。

 

米CDC(疾病対策センター)の委員会は、J&J製ワクチン接種後に血栓を発症した症例について分析しており、米FDA(食品医薬品局)はその結果を検討する。両機関は、欧州の当局と同様に、この血栓症は極めて稀であると説明している。

 

EMA(欧州医薬品庁)のワクチン副反応監視システムには、4月4日時点で、脳の静脈に血栓ができるCVSTの報告が169件、腹部の静脈に血栓ができる内蔵静脈血栓症(SVT)の報告が55件寄せられている。

 

過去3カ月の間、アストラゼネカ製ワクチンは英国と欧州経済領域で計3400万回接種されている。EMAの安全性委員会は、寄せられた報告のうち62例のCVSTと24例のSVTについてレビューを行った。このうち18例は死亡に至っており、ほとんどの症例は1回目の接種から2週間以内に発生している。

 

ドイツの予防接種当局は、アストラゼネカのワクチンを接種後、16日以内に20~59歳の女性で29例のCVSTが報告されたが、これは同期間に予想されるCVSTの発生と比較して20倍高かったと述べた。ドイツ保健省は、通常予想されるCVSTは1~1.4件としている。

 

誰に起こっているのか

J&Jのワクチン接種後に血栓症を発症したのは、18~48歳の女性。症状は接種の6~13日後に発生した。同社のワクチンは、4月12日までに米国で計680万回以上接種されている。

 

欧州で報告されている症例も、ほとんどが60歳以下の女性で発生している。ただ、ドイツや英国では、アストラゼネカのワクチンを接種された人は男性より女性が多いとされており、この点には注意が必要だ。

 

両社の見解は

J&Jは、各国の規制当局と緊密に連携しており、報告されている血栓とワクチンの間に明確な因果関係はないとしている。

 

アストラゼネカは「この極めて稀な事象を説明できる可能性のあるメカニズムの理解に努めている」とコメントしている。

 

規制当局の見解は

CDCは、医療従事者が潜在的な副反応を認識し、適切な管理を計画できるようにするため、J&Jのワクチンの使用を念のため一時中止することを勧告するとしている。

 

一方、英国の医薬品・医療製品規制庁は、19件の死亡例(女性13人、男性6人)を含む79件の症例を検討した結果、30歳未満の人にはアストラゼネカ以外のワクチンを使用するよう勧告した。死亡例のうち11件は50歳以下、3件は30歳以下だった。

 

治療法は

米国の保健当局によると、J&Jのワクチン接種後に起こった血栓は非常に稀な症状であり、その治療は血栓症の標準的な治療法とは異なるという。当局は「通常、血栓の治療にはヘパリンと呼ばれる抗凝固薬が使用される。しかし、この状況でヘパリンを投与するのは危険で、別の治療法が必要だ」としている。

 

一方、アストラゼネカのワクチン接種後に起こった血栓症について調べているドイツの医師や研究者は、高濃度のヘパリン、Fc受容体ブロッキング抗体、免疫グロブリンの投与を勧めている。

 

規制当局の判断の根拠は

EMAが3月18日に発表した調査結果によると、通常、50歳未満の人にCVSTが発生する頻度は14日間で1.35件と想定されるのに対し、アストラゼネカのワクチンを接種した人では12件報告されたという。

 

英国政府は、英ケンブリッジ大ウィントンセンターの統計データをもとに、若年層にはアストラゼネカ製でないワクチンを接種し、高齢者にはアストラゼネカのワクチンの接種を継続するよう勧告した。

 

同センターによると、ワクチン接種による血栓のリスクは高齢者で低い一方、予防接種によって集中治療室への入院数は大幅に減少することから、同社ワクチンのリスクとベネフィットの比は高いという。センターは、50~59歳の人でワクチンに関連した害を被るのは10万人あたり0.4人だが、10万人あたり95.6人の集中治療室への入院を回避できると結論付けている。

 

EUの対応は

EMAは、アストラゼネカのワクチンは依然としてベネフィットがリスクを上回るとした上で、血小板減少を伴う異常な血栓を非常に稀な副反応として添付文書に記載し、実際の接種については各国が決めるべきだとしている。感染の状況や代替ワクチンの有無といった要因により、各国で異なる判断になる可能性があるとEMAは指摘している。

 

血栓の原因は

原因は調査中だが、ワクチンが稀に特殊な抗体の発生を誘発する可能性が指摘されている。今のところ、年齢や性別といったリスク因子は特定されていない。

 

独グライフスヴァルト大の研究者らは、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)に掲載された論文の中で、ワクチン接種後に起きる血小板減少を伴う血栓を「ワクチン起因性免疫性血栓性血小板減少症」と呼び、ワクチンを接種したことでつくられた抗体が発症の引き金になっている可能性があると結論付けている。

 

ノルウェーの研究グループも、同じくNEJMに掲載された論文で、同様の結論を発表した。

 

グライフスヴァルト代のアンドレアス・グレイナッハー氏は、ワクチン接種を受けた大多数の人は血栓や血小板減少を発症しなかったのに、ごく一部の人でそれが見られたのはなぜなのか、理由の手がかりを探している。

 

(John Miller/Ludwig Burger、翻訳:AnswersNews)

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