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ニュース解説

アステラス 芽吹く新規事業…「Rx+」屋台骨への期待

更新日

「Rx+事業」と称し、医療用医薬品の枠を超えた新規事業の創出に取り組んでいるアステラス製薬。運動支援アプリ、精密手術ガイド、超小型埋め込み医療機器といったユニークなプログラムが揃う中、取り組みはどこまで進んでいるのでしょうか。

 

 

「薬ではできなかったことを」

「アステラスのグローバルの従業員1万6000人のうち、Rx+事業に直接携わっているのは100人にも満たない非常に小さな組織だ。しかし、もしかすると将来、このRx+事業から生まれたビジネスが、アステラスの屋台骨を支えているかもしれない。そんな思いも込めて、この3年間取り組んできた」

 

3月25日、アステラス製薬が投資家やメディアを対象にオンラインで開いた説明会「Rx+ Day」。冒頭、同社の岡村直樹副社長は、新規事業への期待をこのように語りました。

 

アステラスの「Rx+事業」は、医療用医薬品(Rx)事業で培った強みに、異分野の技術や知見を融合させることで、ヘルスケア関連の新たな製品・サービスを展開する事業のこと。2018~20年度の中期経営計画で3つの戦略目標のうちの1つに掲げ、医薬品の枠を超えたヘルスケアソリューションの創出を目指しています。医薬品に付随するものではなく、単独で収益を生む事業性を求めていることが特徴です。

 

現在、Rx+事業のポートフォリオにあるのは、
▽蛍光造影剤で尿管の場所を可視化する精密手術ガイド
▽ゲーミフィケーションを取り入れた運動支援アプリ
▽科学的エビデンスに基づいた運動メニューを提供するフィットネスサービス
▽糖尿病などの慢性疾患に対するデジタルセラピューティクス
▽AI(人工知能)を活用したホルター解析装置用プログラム
▽極小デバイスを使ってセンシングと電気刺激を行う埋め込み医療機器
――など。

 

【アステラス「Rx+事業」のポートフォリオ】(プログラム/状況/見通し): 運動支援アプリ:ウェアラブルデバイスを用いたスマホアプリ/製品開発中/― |フィットネスサービス:科学的エビデンスに基づいた運動メニューを提供/地域限定で販売開始/― |デジタルセラピューティクス:糖尿病治療用アプリ「BlueStar」/製品開発中/2021年度に国内臨床試験開始 |精密手術ガイド:子宮全摘術や消化器外科手術などで尿管の場所を可視化する、蛍光造影剤を使った精密手術ガイド/P2試験/2023年度中の米国承認が目標 |超小型埋め込み医療機器/極小デバイスを使ってセンシングや電気刺激を行う埋め込み医療機器/前臨床段階/2020年代後半に発売予定 |ホルター解析装置用プログラム/AIを使い、クラウド上で解析を行うホルター心電図解析プログラム/日本で薬事認証を取得/2021年度中にビジネス化

 

岡村副社長は「Rx+事業では、ペイシェントジャーニー全体をエンドツーエンドでカバーし、薬にはできなかったこと、薬には難しかったことを、違う技術と融合することによってソリューションを考え、価値を想像し、提供していこうと考えている」と話します。

 

「埋め込み医療機器コアビジネスに」

中でも「アステラスのコアビジネスになる」と期待しているのが、米アイオタ・バイオサイエンシズを買収して獲得した超小型の埋め込み医療機器です。アイオタのデバイスは、大きさが10立方ミリメートルと極めて小さく、体外から無線で給電・通信するため、バッテリーやケーブルは不要。センシングによる疾患のモニタリングや、電気刺激による疾患の治療・制御を目指して開発を行っています。

 

現在、センシングと電気刺激のそれぞれで複数のプロジェクトが走っており、今後、臨床試験を経て2020年代後半の発売を想定。それぞれのコンセプトがヒトで検証されれば、1つのデバイスでセンシングをして電気刺激による治療を行う自動制御デバイスを開発し、さらには複数のデバイスを同時に自動制御することを目指します。

 

ビジネスプロデューサーを務める阿部邦威氏は「これら実現すれば、もはや人は自分が病気であることに気づかず過ごす時代を迎えるかもしれない」と強調。適用できる可能がある疾患の範囲は広く、阿部氏は「アステラス全体の何分の一かはこのプロジェクトから収益を上げることを目指して取り組んでいる」と話しました。

 

実用化が近づいているものもあります。腹部や骨盤内を手術する際、尿管を光らせて可視化する蛍光造影剤「ASP5354」は、2023年の米国承認を目指して臨床第2相(P2)試験を実施中。手術中に誤って尿管を傷つけてしまう医原性尿管損傷(IUI)は死亡率が高く、入院期間の延長や医療費の増加にも関連しており、米FDA(食品医薬品局)はASP5354をファストトラックに指定しています。検出デバイスとのコンビネーションで開発していて、米国に加えて日本や中国、欧州での事業展開も検討しています。

 

「いつまでも薬が同じ形と考えないほうがよい」

医薬品の枠を超えた新規事業の創出には、異分野との協業がカギになります。アステラスはこれまで、バンダイナムコエンターテインメント(運動支援アプリ)や米ウェルドック(デジタルセラピューティクス)、米アクチニウム・ファーマシューティカルズ(分子標的型放射線治療)などと提携。バンナムとの協業は試験販売用のアプリ開発に入っており、ウェルドックから導入した糖尿病治療用アプリ「BlueStar」は来年度から日本で臨床試験を始める予定です。

 

【アステラス「Rx+事業」の主な働き】 <2018年> 4月/Rx+事業創製部を新設 |10月/バンダイナムコエンターテインメントと運動支援アプリの共同開発契約を締結 <2019年> 8月/横浜市立大、東京芸術大と、ゲーミフィケーションを用いた新たなデジタルヘルスケアソリューションの創出を目指し、「Health Mock Lab.」を発足 |8月/米アイオタと超小型埋め込み医療基金の共同研究開発契約を締結 |11月/米ウェルドックとデジタルセラピューティクスに関する戦略的提携 <2020年> 4月/バンダイナムコエンターテインメントと運動支援アプリの共同開発・試験販売などに関する契約を締結 |6月/横浜市、横浜市立大とともに、科学的混世のある運動プログラムを開発 |8月/科学的根拠に基づくフィットネスサービス「Fit-eNce」を開始 |10月/精密手術をガイドする蛍光造影剤「ASP5354」が米FDAからファストトラックの指定を受ける |10月米アイオタを買収 <2021年> 1月/米アクチニウム・ファーマシューティカルズと、分子標的型放射線治療の共同研究を開始

 

Rx+事業創成部の渡辺勇太部長は「Rx+事業では、異分野の技術やノウハウに対するアクセスの強化が必須」と強調。ベンチャーキャピタルとの緊密な連携などを通じてポートフォリオの拡充に注力し、アイオタの買収やウェルドックとの提携に結びついたと振り返りました。

 

「いつまでも薬が今と同じ形をとっていると考えないほうがよい。Rx+事業を通して、急激な技術革新や産業構造の変化に耐えうる強靭かつ柔軟な企業体質を作っていきたい」。岡村副社長は、アステラスがRx+事業に取り組む理由の1つをこう語ります。芽吹いてきた新規事業は、大きな花を咲かせるのか。医薬品産業を取り巻く環境が大きく変化する中、事業の成否が注目されます。

 

(前田雄樹)

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
アステラス製薬

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