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コロナで無保険者増加…存在感増す「医療保険取引所」|DRG海外レポート

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米国に本社を置くコンサルティング企業DRGのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。新型コロナウイルスの影響で失業し、雇用主が提供する医療保険を失う人が増える中、2010年のオバマケアで創設された医療保険取引所(health insurance exchanges)が受け皿として存在感を高めています。

 

(この記事は、DRGのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

医療保険取引所(health insurance exchanges)とは

2010年の医療保険制度改革法(通称・オバマケア)に基づいて創設された、インターネット上の医療保険加入サイト。保険料が高すぎるなどの理由で従来の民間医療保険に加入できなかった個人と小企業が対象。民間保険会社は、政府が定める最低限の保障を盛り込んだ商品を手頃な価格で出品し、消費者はそれらを比較した上で購入する。医療費のカバー率(60%//70%/80%/90%)によって4つの区分に分けられており、カバー率が低いほど保険料も安い。

 

雇用主提供保険からの移行進む

新型コロナウイルスの感染拡大により、米国ではエッセンシャルワーク以外の事業所が閉鎖を余儀なくされ、多くの人が失業し、同時に雇用主が提供する医療保険も失った。その影響で、無保険者の割合が急増し、雇用主が提供する医療保険からほかの医療保険への移行も進んだ。主な移行先は、州政府や連邦政府が運営する医療保険取引所(health insurance exchanges)で購入する保険、メディケイド、短期の医療保険プランなどである。

 

医療保険取引所は2010年の医療保険制度改革法に基づく改革の一環として導入され、その内容は州によって異なる。今年の医療保険マーケットプレイス(加入は年1回)は、州が独自で運営するものが15、連邦政府のプラットフォームを利用して州が主体で運営するものが6、州と連邦政府が共同運営するものが6、連邦政府が運営するものが24となっている。

 

 

連邦政府運営の保険取引所を利用している州には今年、次のような注目すべき動きがあった。

 

デラウェア州では、インスリンの自己負担額の上限を月100ドルとする法律が可決された。この法律により、州の規制を受けるすべての保険プランは、フォーミュラリーの「Tier1」にあるインスリン製剤を少なくとも1つカバーしなければならなくなった。デラウェア州がほかの州と異なるのは、州の取引所で保険プランを提供する保険会社が、今年はHighmark1社のみだという点である。

 

フロリダ州では、州の保険取引所にAyMedが新規参入。既存の保険会社(Ambetter, Oscar Health, Bright Health Insurance Company, Cigna and Florida Blue)も、対象とする郡を広げた。

 

ジョージア州は、2023年に保険取引ポータルサイト「HealthCare.gov」の利用を終了する予定で、トランプ政権時にメディケア・メディケイド・サービスセンターから承認を得ている。これに伴い、加入希望者は民間の仲介業者を通すか、保険会社から直接購入しなければならなくなる。

 

 

アイオワ州は、平均保険料を引き下げるとともに、標準プランの保険料も29%引き下げると発表した。標準プランとしては、米国内最大の値下げとなる。

 

新規登録者は10%増加

メディケア・メディケイド・サービスセンターは、HealthCare.govを利用している州の最新の登録情報を毎週、公開している。

 

今年の医療保険取引所への登録者は、昨年と比べてわずかに少なかった。保険更新者の割合は2.7%増加した一方、保険取引所への新規登録者は9.7%減少している。おそらくこれは、収入を失った人の多くがメディケイドの対象となるからだろう。

 

加入者数の増加率が最も高いのは、無保険者の割合が米国で最も高いテキサス州だった(昨年7月時点のデータ)。昨年12月まで、テキサス州のメディケイド加入者は保険取引所への登録者数よりも多く、これは全米の傾向と一致する。ただ、テキサス州の保険取引所への登録者は急増している。連邦政府が運営する保険取引所を利用している州のうち最も人口が多いことがその理由なのかもしれない。

 

 

標準プラン(2番目に保険料が低い「シルバープラン」)の平均保険料は2%引き下げられている。Oscar Health、Friday Health Plans、UnitedHealth Careといった保険会社が市場に新規参入または再参入したが、多くの保険会社は既存の市場で成長している。アイダホ州、ネブラスカ州、ユタ州ではメディケイドが拡大され、保険オプションが追加された。

 

ニュージャージー州とペンシルベニア州は今年、州主体の保険取引プラットフォームの使用を開始した。この2つの州は昨年、連邦政府が運営する保険取引ポータルサイトHealthCare.govによる加入の7%を占めていた。

 

新規参入が増加

バイデン大統領は、HealthCare.govに特別な加入申し込み期間を設ける大統領令に署名した。期間は2月15日~5月15日で、新型コロナウイルスに関連する保険の適用要件を緩和することが狙いだ。失業の場合は、州や連邦政府の保険取引所を通じていつでも加入できるとしている。

 

 

医療保険取引所は、昨年の経済的打撃の中、新たに無保険となった多くの米国人の選択肢として普及し、雇用主が提供する保険を失った人に手頃な保険を提供している。保険プランの採算性が予測しやすくなるにつれ、保険会社の参入も増えており、結果的に多くの州で価格競争が激化している。

 

経済が回復すれば、保険取引所で購入する保険プランから雇用主保険に戻ることも考えられるが、保険取引所はこのパンデミックを切り抜け、今後も利用者を増やし続けるとみられる。

 

(原文公開日:2021年2月23日)

 

(この記事は、DRGのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです)

 

【記事に関する問い合わせ先】
DRG(クラリベイト・ジャパン・アナリティクス株式会社)
野地(アカウントマネージャー)
E-mail:Hayato.noji@clarivate.com

 

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