米国に本社を置くコンサルティング企業DRGのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。コロナ禍で急速に拡大する米国のオンライン薬局市場。向こう数年で年平均17%の成長が予想されています。
(この記事は、DRGのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら)
利用者が急増
処方薬を迅速かつ容易に入手できる「デジタル薬局」が、新たなテクノロジーを導入して調剤業務と配送の改善を図っている。デジタル化によって投薬ミスが減り、処方薬へのアクセスが拡大するとともに、薬剤師は患者対応により多くの時間を割けるようになる可能性がある。そうなると、患者のアドヒアランスも向上するかもしれない。
パンデミックのような市場のダイナミクスに加え、ソフトウェアの自動化、ロジスティクス、ロボティクス、マイクロフルフィルメントといったテクノロジーも、デジタル薬局の市場を発展させる重要な要素だ。たとえば、デジタル薬局のNowRxが使用している「クイックフィル」というエンドツーエンドのロボット調剤ソフトは、薬剤の選び出しから計数、瓶詰め、ラベル貼りまでロボットが30秒足らずで行う。このソフトは保険承認のプロセスを合理化し、患者は配達状況を簡単に追跡できる。
デジタル支援ツールへのニーズは、スペシャリティ薬局で特に高まっている。コロナ禍でソーシャルディスタンスを確保するため、こうしたプラットフォームにアクセスする患者が増えているからだ。米国では、昨年1年間でオンライン薬局の利用が17%増加した。利用率が最も高いのは18~34歳で、最も低かったのは65歳以上の世代だ。
デジタル薬局は、慢性疾患患者が自身の投薬履歴を把握する一助にもなり、服薬コンプライアンスをサポートするリマインダーを提供している。このリマインダーは、デジタル薬局の利用拡大を支えている重要な機能だ。
年平均17%成長
昨年8月に発表されたAxios-Ipsosの世論調査によると、薬剤を郵送してもらったことのある米国人の3人に1人が、配達が遅れたり、荷物を受け取れなかったりといったトラブルを経験している。
一方、デジタル薬局は配送のプロセスを迅速化しており、当日配送にも対応している。ウーバーもこの事業でシェアを獲得しようとしており、シアトルとダラスで処方薬のオンライン注文・配送を提供するためNimbleRxと提携した。処方薬配送のスタートアップ企業カプセルは最近、スライブ・キャピタルとグレード・ブルック・キャピタルから2億ドルを調達し、即日配送サービスの全国展開に乗り出す。
アマゾンは2018年のピルパック買収で、薬剤供給の事業に直接参入した。最近立ち上げたアマゾン・ファーマシーは、実店舗で販売を行っている既存薬局にとって脅威となる可能性がある。
デジタル薬局市場は、向こう6~7年で年平均17.3%の成長が見込まれる。多くのプレイヤーは、米国内の未開拓の地域に進出し、当日配送など進んだサービスを提供する方針だ。新型コロナウイルスの影響でデジタル薬局に登録する人は増えているが、患者が利便性を高く評価すれば、コロナ後もそうした傾向は続くとみられる。
高齢者は、若い世代に比べてデジタル薬局を利用する人が少ないものの、65歳以上の人の29%は関心を持っている。サービスが成長する余地は十分にあると言えるだろう。
(原文公開日:2021年2月26日)
(この記事は、DRGのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです)
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