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新型コロナワクチン、変異株との闘い

更新日

ロイター通信

[シカゴ ロイター]記録的なスピードで開発され、世に送り出された新型コロナウイルスワクチン。しかし、製薬企業はすでにウイルスの変異という課題に直面している。これに対応するには、数カ月におよぶさらなる研究と巨額な投資が必要になる。

 

米モデルナと米ファイザー/独ビオンテックは、これまでに特定された最も懸念される変異株に対応するため、ワクチンのバージョンアップを検討している。これは、ウイルスとの競争で先行するのに必要な作業のほんの一部に過ぎない、と12人近くの専門家がロイターに語っている。

 

ウイルスの変異に対応するには、新たに出現した変異株を評価する世界的な監視ネットワークを構築しなければならない。科学者たちは、新型コロナウイルスから人々を保護するのに必要な抗体のレベルを検討し、ワクチンをどの時点で変更すべきかを判断する必要がある。そして規制当局は、最新のワクチンが安全かつ有効であることを証明するために何が必要となるのか、メッセージを発信することが重要だ。

 

米ミネソタ大の感染症専門家であるマイケル・オスターホルム博士は「現時点では、変異株がワクチンによる予防という方程式を変えたという証拠はない」としながらも「われわれはそのための準備をしなければならない」と話す。

 

米ジョンソン・エンド・ジョンソンは、南アフリカで最初に特定された変異株に注目しており、必要に応じてワクチンの微調整を行うとロイターに語った。ファイザーは、新バージョンのワクチンは比較的迅速に製造することが可能だとしているが、同社ワクチン部門の幹部は製造には課題もあると話している。

 

取り組みの緊急性は明らかだ。

 

モデルナは1月25日、同社ワクチンの変異株に対する効果を調べたところ、南アフリカで見つかった変異株では中和抗体の産生量が従来型に比べて6分の1に減少したと発表した。同27日、ピアレビューに先立って発表された研究によると、南アフリカ型はモデルナとファイザー/ビオンテックの両方のワクチンで、従来型より中和抗体が少ないことがわかった。モデルナは、潜在的なブースターショットの開発に着手したことを明らかにしている。

 

数カ月かかる可能性

新型コロナウイルスワクチンの変更が必要になったとして、それまでにワクチンによる防御効果がどれくらい低下するかはわかっていない。インフルエンザの場合、ワクチンによって誘導された抗体の防御力は8分の1に低下するため、毎年ワクチンを接種する必要がある。しかし、これがコロナウイルスに当てはまるとは限らない。

 

米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)ワクチン研究センター長のジョン・マコラス博士は「問題は、コロナウイルスのカットポイントがわからないことだ」と指摘する。マスコラ氏によると、南アフリカ型に対するモデルナのワクチンをテストした両方の研究は、おおよそ“同じ球場”にあるという。ワクチンが誘導する抗体による防御は十分高く、中和抗体が少なくても効果がある可能性がある、と彼は話す。

 

NIAIDの研究者は、モデルナのワクチンの後期試験のデータを分析し、予防に必要な中和抗体のレベルを調べている。彼らは、予防接種を受けたにもかかわらず発症した人と、そうでなかった人を比較している。

 

急速に変異するインフルエンザウイルスに対して行われているように、問題のある変異株が出現した場合、それを特定するためのグローバルな監視ネットワークも必要だ。それには、米国だけで数千万ドルから数億ドルもの費用がかかる可能性がある。

 

セントジュード・チルドレン・リサーチ・ホスピタルのインフルエンザサーベイランス専門家、リチャード・ウェビー氏は、米国はかなり迅速に変異株を特定するシステムを構築することができるだろうと話している。ただ、変異株に対するワクチンの効果を判断する能力を開発するには、もっと時間がかかるだろう。

 

米国は、変異株を探すため、検査で陽性となった検体の0.3%でゲノム解析を行っているが、これは感染力の強い変異株を発見した英国の10%と比べると少ない。専門家は、ウイルスの重大な変異を検出するためには、陽性例の少なくとも5%でゲノム解析を行う必要があると指摘する。

 

ファイザーのワクチン部門幹部であるフィリップ・ドリミッツァー氏は、企業側は変異株への対応について米FDA(食品医薬品局)のメッセージを待っていると話す。インフルエンザの場合、企業は新たな試験を行わなくてもワクチン株を変更することができるが、「それは50年もの間続けられてきたことだ」と彼は言う。

 

FDAのワクチン承認プロセスを監督するピーター・マークス氏は、更新されたワクチンは、400人程度を対象とした試験を求められる可能性があるとしている。小規模ではあるが、それでもプロセスは数カ月に及ぶ可能性がある。

 

米薬事コンサルティング会社バイオロジクス・コンサルティングの最高経営責任者で、元FDAワクチン担当者のノーマン・ベイラー氏は、当局は規制に関する何らかの道筋を示すだろうと話している。米CDC(疾病管理センター)やWHO(世界保健機関)といった公衆衛生当局は、インフルエンザの場合と同じように、ワクチンを更新すべき時期を決めることになる。

 

ファイザーのドリミッツァー氏は、新バージョンのワクチンには「非常に小さな変更」が必要になるだろうと言う。同社のワクチンは、モデルナのそれと同様に、メッセンジャーRNA(mRNA)を利用しており、合成・製造は数週間で行うことができる。同氏によると、ファイザーは1週間程度で新バージョンのプロトタイプを作り、さらに2カ月かけてスケールアップし、ラボテストをアップデートすることになると見積もっている。

 

J&Jの最高科学責任者ポール・ストッフェルス氏は、同社は問題となっているウイルス変異に対処するための基礎を築いたとロイターに語った。同社の後期試験には南アフリカも含まれているため、同社は変異株に関する洞察を得ることができるはずだ。仮に変更が必要になれば、J&Jは開発中のワクチンに第2の株を追加する可能性が高いと同氏は述べている。

 

(Julie Steenhuysen/Michael Erman、翻訳:AnswersNews)

 

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