米国に本社を置くコンサルティング企業DRGのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。 2020年、世界のバイオテック業界の資金調達は記録的な水準となりました。
(この記事は、DRG発行のレポート「Biotech set for good start to 2021」の一部を日本語に翻訳したものです。レポートのダウンロードはこちら)
総額1340億ドル
2020年、バイオテック企業の業績は、ほかの多くの業界と比較して好調だった。コロナ禍の中、バイオ医薬品企業は研究開発のリソースを総動員してこの感染症に挑みながら、記録的な資金調達を達成した。新型コロナウイルスワクチンの開発はかつてない速さで進み、2020年末時点で649の治療薬候補と191のワクチン候補が開発中となっており、一部はすでに承認を取得している。
投資と取引の状況を見れば、バイオテック業界の現在と未来を見通すことができる。医薬品の研究開発の経済的な側面は、各社にとっていまだ大きな課題となっている。研究開発の期間はこの10年で短縮したものの、かかる費用は上昇を続けている。そのため、バイオテック企業は、自社の研究開発活動をまかなうための資金を調達する必要性に絶えず迫られることになる。
バイオテック業界を網羅する「BioworldTM」の記事によると、2020年はこの分野の資金調達にとって記録に残る年となった。世界のバイオテック業界が2020年に調達した総資本は約1340億ドルに上った。
IPOは107社
2020年、バイオテック企業107社が新規株式公開(IPO)で225億8000万ドルを調達し、過去最高を更新した。これまでの最高は2018年の80社107億ドルで、2019年は64社86億4000万ドルだった。
さらに、世界中の株式市場では、フォローオンや社債による追加調達が行われ、バイオテック企業への投資意欲は高い状態が続いた。フォローオンを通じた2020年のバイオテック企業の追加調達は336件505億ドルに達し、2019年の242件212億1000万ドル、2018年の238件290億ドルを大きく上回った。そのほかの方法による追加調達は326億8000万ドルで、2019年の113億1000万ドル、2018年の100億ドルから大きく増加している。
ナスダック・バイオ指数は25.6%上昇
投資家が求めるのは、新型コロナウイルスによる不景気の影響が少ないアセットクラスだ。そうしたこともあり、バイオ医薬品業界への資金の流れは堅調に推移している。実際、ナスダック上場のバイオ医薬品企業213社で構成するナスダック・バイオテクノロジー指数は好調だ。2020年は3786.54でスタートし、3月20日は3084.58まで下落したものの、12月23日にはこの5年で最も高い4940.10を記録。最終的には、年初から25.6%高い4759.14で2020年を終えた。
一方、米国証券取引所に上場している大手企業500社で構成するS&P500は2020年、3230.78でスタートし、3月23日には2237.40まで下落。その後は回復し、12月31日は年初から16.26%高の3756.07で終了した。
提携の5分の1がコロナ関連
株式市場での調達に加え、バイオ医薬品企業は1960件のパートナリング契約を通じて少なくとも1840億ドルの資金を確保した。成立した取引のおよそ5分の1が新型コロナウイルス関連で、総取引額の17%を占めた。2019年の同じ時期、バイオ医薬品企業は1041件の取引を通じて約1130億ドルを調達したが、この中には、米セルジーンが乾癬治療薬「オテズラ」とその関連資産を米アムジェンに売却した134億ドルが含まれている。
M&Aは19年を下回る
一方、M&Aは2019年と比べると緩やかだった。2019年は武田薬品工業によるシャイアー買収(620億ドル)など、173件2237億2000万ドルのM&Aが完了した記録的な年だった。これに対し、2020年に完了したM&Aは129件1729億2000万ドルで、2019年は下回ったが、2018年や2017年と比べると多い。
パートナリング契約は、M&Aや株式上場とともに、ベンチャーキャピタル(VC)や個人投資家が新興バイオテック企業に注目する1つの要因だ。
2020年は、世界のバイオ医薬品業界がVCや個人投資家から調達した資金も記録的な水準となった。599件281億6800万ドルを調達しており、2018年の172億9000万ドル、2019年の164億6000万ドルを上回った。
(この記事は、DRG発行のレポートの一部を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです)
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