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ニュース解説

好結果相次ぐ新型コロナワクチン、ゲームチェンジャーはどこか

更新日

11月23日、大規模臨床試験の良好な中間解析結果を発表した英アストラゼネカ。同社がオックスフォード大と開発した新型コロナウイルスワクチンは、安価で保管・輸送がしやすいのが特長だ(ロイター)

 

新型コロナウイルスワクチンの大規模臨床試験で好結果が相次ぎ、実用化への期待が高まっています。90%超の有効性が示されたと発表した米ファイザー、同モデルナに続き、11月23日には英アストラゼネカが70%の予防効果を示したと発表。先行する2つのmRANワクチンと比べ、安価で保管・輸送がしやすいのが特長で、グローバルな供給でゲームチェンジャーになるとも言われています。

 

ファイザーが申請…モデルナとアストラゼネカも好結果

英アストラゼネカが英オックスフォード大と共同開発している新型コロナウイルスワクチン「AZD1222」は、チンパンジーのアデノウイルスを使ったウイルスベクターワクチン。11月23日に発表された英国とブラジルでの臨床第2/3相(P2/3)試験の中間結果によると、発症者131人に基づく解析で平均70%の発症予防効果が示されました。半量を接種した1カ月後に全量を接種したグループ(2741人)では有効性が90%に達し、1カ月間隔で全量を2回接種したグループ(8995人)では62%だったといいます。

 

接種量の異なる2つのグループで有効性に差が出た理由は、現時点ではわかっていません。オックスフォード大でワクチンの臨床試験をリードするアンドリュー・ポラード教授は「1回目に半量を接種するレジメンを採用した場合、より多くの人がワクチンの接種を受けられる可能性がある」としています。

 

アストラゼネカの発表によると、ワクチン接種群では入院や重症例は見られませんでした。安全性にも問題はなかったといいます。11月19日には、英医学誌ランセットで、高齢者にも若者と同程度の免疫反応をもたらしたとのP2試験結果を発表。最終結果を待つ必要はありますが、現時点では一定の期待が持てる結果と言えるでしょう。

 

新型コロナウイルスワクチンの開発をめぐっては、米ファイザーと独ビオンテックが11月9日、mRNAワクチン「BNT162b」のP3試験で90%超の予防効果が確認されたとの中間解析結果を発表。17日には米モデルナが同じくmRNAワクチン「mRNA-1273」のP3試験の中間解析で94.5%の予防効果が示されたと発表し、翌18日にはファイザー/ビオンテックが95%の発症予防効果が示されたとの最終解析結果を発表しました。

 

いずれのワクチンも、短期ではありますが「重大な安全性の懸念は報告されていない」としており、高齢者でも効果があることが確認されました。ファイザーは試験結果に基づき、11月20日に米FDA(食品医薬品局)に緊急使用許可を申請。海外メディアの報道によると、米政府高官は12月11日にもワクチン接種が始まるとの見通しを示しています。モデルナとアストラゼネカも近く、FDAに緊急使用許可を求める方針。欧州の規制当局も、これら3つのワクチンについて、入手可能なデータから順次審査を進める「ローリングレビュー」を始めています。

 

「価格」と「保管・輸送のしやすさ」

ファイザー/ビオンテック、モデルナ、アストラゼネカのワクチンは、それぞれ保管や輸送の条件が異なります。

 

ファイザー/ビオンテックのワクチンは、マイナス70度前後で管理する必要があり、保存期限は超低温の冷凍庫で最長6カ月間、一般的な冷蔵庫(2~8度)で5日間。ファイザーは、ドライアイスを使ってマイナス70度前後でワクチンを管理できる輸送用の保冷箱を開発しており、ドライアイスを補充することで15日間、一時的にワクチンを保管することができるとしています。モデルナのワクチンは、マイナス20度で最大6カ月間保存でき、一般的な冷蔵庫でも30日間保存することが可能です。

 

一方、アストラゼネカのワクチンは普通の冷蔵庫で少なくとも6カ月間保存が可能。超低温での輸送・管理には特別な設備が必要で、特に貧困国に供給する上でネックになる可能性があり、グローバルなアクセスを考えるとアストラゼネカのワクチンが有利です。

 

もう1つ、アストラゼネカのワクチンのメリットとして挙げられるのが、価格です。ロイター通信によると、同社のワクチンは1回あたり約4ドルで、ファイザー/ビオンテックの約20ドル、モデルナの約33ドルに比べて安価。さらにアストラゼネカは、新型コロナウイルスワクチンを「非営利で」供給すると宣言しており、10億回分を低・中所得国に配分する方針を示しています。

 

同社のパスカル・ソリオCEOは「シンプルなサプライチェーンと非営利での取り組みにより、ワクチンを手頃な価格で世界中で利用することが可能になる」としています。

 

開発中の新型コロナウイルスワクチンの多くは2回接種が必要ですが、米ジョンソン・エンド・ジョンソンは、2回接種のP3試験と並行して、1回接種での有効性・安全性を検討するP3試験を実施中。米メルクも、国際エイズワクチン推進構想(IAVI)と1回接種のウイルスベクターワクチンを開発しています。臨床試験の結果によっては、接種回数が少ないこれらのワクチンが次のゲームチェンジャーとなるかもしれません。

 

国内の開発状況は

日本政府は、ファイザー/ビオンテックから1億2000万回分、アストラゼネカから1億2000万回分、モデルナから5000万回分の供給を受けることで合意。来年前半から供給が始まる見通しとなっています。

 

国内では現在、ファイザーとアストラゼネカ、ジョンソン・エンド・ジョンソンが初期の臨床試験を実施中。モデルナのワクチンの国内供給を担う武田薬品工業も、日本での臨床試験に向けて準備を進めています。

 

日本企業では、大阪大とアンジェスのDNAワクチンが近く500人規模のP2/3試験を開始する予定。塩野義製薬は組換えタンパクワクチン、KMバイオロジクスは不活化ワクチンの臨床試験を年内に始める考えです。第一三共はmRNAワクチン、IDファーマはセンダイウイルスベクターワクチンを開発しており、来春の臨床試験開始を予定しています。

 

1年未満という過去に例を見ないスピードで開発が進み、大規模臨床試験で好結果が相次いで発表されている新型コロナウイルスワクチンですが、長期の有効性や安全性など未だ不明な点も多く、予断を許さない状況は続きます。

 

(前田雄樹)

 

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