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医薬品卸 広がる「共同配送」…メディパルやアルフレッサが取り組み始動

医薬品卸の間で、共同配送の動きが広がっています。メディパルホールディングス(HD)は受託臨床検査のH.U.グループHD(旧みらかHD)と提携し、アルフレッサもヤマトロジスティクスとスキームの構築に着手。厳しい事業環境の中、流通の効率化を急ぎます。

 

メディパル、異業種と共同配送へ

メディパルホールディングス(HD)は6月、臨床検査受託の最大手であるH.U.グループHD(旧みらかHD)と、メディカル流通プラットフォームの構築を目指す業務提携に関する合意を結んだと発表しました。

 

業務提携では、メディパルHD子会社のメディセオとH.U.グループHD子会社のSRLの間で、共同配送の実現に向けた取り組みを展開します。まずは、メディセオの受発注システムをベースに、SRL顧客に向けた新たな発注サービスを提供。あわせて、SRLの検査資材の管理をメディセオの高機能物流センター(ALC)と共通化します。さらに両社は、地域を限定し、医薬品の配送ルートと検体の集荷ルートも共通化。来年1月にはインフラと物流機能を共通化(シェアリング・ロジスティクス)して運用を開始し、全国展開を検討します。

 

【共同配送に関する協業などの取り組み】 <メディパルHD>「H.U.グループHD(メディセオ×SRL)」▼受発注システムと倉庫インフラの共通化▼地域限定でのシェアリング・ロジスティクス(検査資材と医薬品などの共同配送)/▼シェアリング・ロジスティクスの全国展開、再生医療分野での連携検討 |<アルフレッサHD>「ヤマトHD(アルフレッサ×ヤマトロジスティクス)」▼配送業務量予測システムや適正配車システムの共同開発▼ヘルスケア商品の物量などの予測データに基づく配送人員の最適化▼商品の配送能力を増強するシステムの開発、業界全体への提供「三菱倉庫」▼メーカー物流のインフラ共同化・効率化などに関する研究会 |<スズケン>「東邦HD」▼共同配送や納品代行などの物流体制を検討(不測の事態に備えたもの)「八神製作所」▼医療機器、医療材料などの安定供給に向けた物流体制を検討|※各社のプレスリリースをもとに作成

 

アルフレッサはヤマトとスキーム構築

厚生労働省の「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン(流通改善ガイドライン)」では、共同配送について「薬価に対して流通コストの高い医薬品等の配送や、へき地における配送について共同配送など流通効率化を進めることが望ましい」と指摘されています。卸から医療機関・保険薬局への配送では、頻回配送や急配といった過剰なサービスも課題とされており、コスト負担などについて当事者間で契約を結ぶといった改善が求められてきました。

 

アルフレッサHDも今年、ヤマトHD傘下のヤマトロジスティクスと、ヘルスケア商品(医療用医薬品、一般用医薬品、医療機器、医療材料、診断薬など)の共同配送スキーム構築に向けた業務提携を始めました。まずはアルフレッサの業務効率化に向け、配送業務量を予測するシステムや適正配車システムを両社で共同開発し、配送人員を最適化。その後、配送能力を増強するためのシステムを開発し、それぞれのシステムを連携させた上で業界全体に提供することを目指しています。

 

新型コロナウイルスの感染拡大も協業を後押ししています。スズケンと東邦HDは4月、東京や大阪など7都府県で緊急事態宣言が出されたことを受け、協業を発表。不測の事態に備えて両社で連携をとりながら、共同配送や納品代行を含む物流体制を検討するとしていました。スズケンは愛知でも医療機器専門商社の八神製作所と同様の協業で合意しています。

 

スペシャリティ競争も深化

主要医薬品卸の20年3月期業績は、消費増税に伴う薬価改定の影響があったものの、抗がん剤などの新薬が伸長したことで各社とも堅調に推移。ただ、足元では新型コロナウイルスの感染拡大の長期化で医療機関の受診抑制が続いており、各社とも20年4~6月期は大幅な営業減益に見舞われました。21年3月期の業績予想は、メディパルとアルフレッサが減収減益の予想で、スズケンと東邦は「未定」としています。

 

【主要医薬品卸の19年度の売上高】(★以降は連結、☆以降は医薬品卸売事業)(社名・医薬品卸売事業の売上高比/売上高/前年度比/営業利益/前年度比/営業利益率): メディパルHD・65.8%/★3兆2531億円/2.2%/531億円/6.6%/1.6%/☆2兆1418億円/1.8%/261億円/16.0%/1.2% |アルフレッサHD・88.0%/★2兆6985億円/2.2%/476億円/6.4%/1.8%/☆2兆3755億円/2.1%/418億円/3.6%/1.8% |スズケン・96.0%/★2兆2135億円/3.8%/326億円/19.6%/1.5%/☆2兆1254億円/4.0%/281億円/22.9%/1.3% |東邦HD・96.1%/★1兆2637億円/3.4%/176億円/11.4%/1.4%/☆1兆2140億円/3.3%/180億円/12.0%/1.5% |※各社の決算資料をもとに作成

 

厳しい事業環境の中、21年度からは薬価の毎年改定がスタートする予定で、流通の効率化は急務です。一方、医薬品卸の間では近年、希少疾病用医薬品や再生医療等製品といったスペシャリティ医薬品の争奪戦が激化。高付加価値の流通をめぐり、各社が激しい争いを繰り広げています。

 

専門子会社のエス・ディ・コラボを有し、大手4社の中でもいち早くスペシャリティ領域の整備を進めていたスズケンは、CAR-T細胞療法「キムリア」に続いて、ノバルティスファーマから脊髄性筋萎縮症に対する遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ」の流通を受託。米国工場で製造された製品の国内流通業務を行います。また、ステラファーマからは、同社初の製品となる頭頸部がん向けのホウ素中性子捕捉療法(BNCT)用ホウ素薬剤「ステボロニン」の流通を一社受託しました。

 

【大手医薬品卸 この1年で受託した主なスペシャリティ製品】(時期/社名/受託製品): <スズケン>20年3月/ステラファーマ/ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)用ホウ素薬剤「ステボロニン」 |20年3月/日本セルヴィエ/イリノテカンリポソーム製剤「オニバイド」 |20年5月/ノバルティスファーマ/遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ」 <メディパルHD>// 19年11月/プロメセラ(ベルギー)/肝疾患向け再生医療等製品「HepaStem」(治験段階から) |20年3月/Heartseed/重症心不全向け再生医療等製品「HS-001」(治験段階から) <アルフレッサHD> 20年4月/ヒューマンライフコード/臍帯由来の間葉系細胞製品 |20年6月/ファーマバイオ/自家細胞型再生医療等製品 |20年6月/遺伝子治療研究所/アデノ随伴ウイルスベクター <東邦HD> 20年3月/クリングルファーマ/脊椎損傷急性期向けHGFタンパク質性医薬品「KP-100IT」 |※各社のプレスリリースをもとに作成

 

東邦HDは、スペシャリティ領域での取り扱い卸限定品が20年3月期に24品目と前期から10品目増加し、販売額も258億円アップの1080億円となりました。同社は今年9月に高機能物流センター「TBCダイナベース」の稼働を予定。TBCダイナベースが入る東京都大田区の京浜トラックターミナル「ダイナベース」は都指定の災害時広域輸送基地となっており、製薬会社が独占流通卸を選択する1つの指標になると同社はみています。

 

メディパルは、再生医療等製品の開発を手掛けるHeartseedやプロメセラ(ベルギー)に出資するとともに、治験段階から流通で提携。アルフレッサも同様に、開発段階の再生医療等製品を持つバイオベンチャー数社と資本提携を結びました。いずれも開発資金を支援しながら流通体制の構築を検討する契約で、スペシャリティ医薬品の流通をめぐる競争は、より早期の段階に及んできています。

 

(亀田真由)

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