1. Answers>
  2. AnswersNews>
  3. ニュース解説>
  4. 新型コロナワクチン、価格は「インフル並み」の 40ドル…米政府の契約、世界の指標となるか
ニュース解説

新型コロナワクチン、価格は「インフル並み」の 40ドル…米政府の契約、世界の指標となるか

更新日

ロイター通信

米ファイザーは、独ビオンテックと共同開発している新型コロナウイルスワクチンについて、1億回分を約20億ドルで供給する契約を米国政府と結んだ(ロイター)

 

[ロイター]米国政府は7月22日、米ファイザーと独ビオンテックが共同開発している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンについて、1億回分のワクチンを約20億ドルで調達する契約を結んだ。業界アナリストは、これがCOVID-19ワクチンの世界的な価格設定の指標になると見ている。

 

今回の契約はワクチンの承認が条件。ファイザー/ビオンテックのCOVID-19ワクチンは2回接種となる可能性が高く、1人あたりの価格は39ドル(約4100円、1回分は19.5ドル)となる計算だ。これは季節性インフルエンザの予防接種とほぼ同じで、COVID-19ワクチンの価格設定の目安を直接知ることができる初めてのケースとなった。この価格なら、製薬企業としてもCOVID-19ワクチンから利益を得ることも可能になる。

 

米政府がこれまで他のメーカーと結んだ契約とは異なり、ファイザーとビオンテックは、今月開始予定の大規模臨床試験で安全性と有効性が証明されるまで、米国政府から支払いを受けることができない。米国をはじめとする各国の政府は、COVID-19ワクチンの開発を支援するために製薬企業と契約を結んでおり、中には一定量の供給を保証するものもあるが、完成したワクチンの具体的な価格が示されたのは今回が初めてだ。

 

「合理的な範囲」

センター・フォー・メディシン・イン・ザ・パブリック・インタレストのピーター・ピッツ会長によると、米国のインフルエンザワクチンの平均価格は約40ドルだといい、「これと比べると(COVID-19ワクチンの価格設定は)良いように思える。合理的な範囲だ」と語った。

 

みずほのバイオテクノロジーアナリスト、バミル・ディバン氏は、開発中のCOVID-19ワクチンはどれも安全性と有効性において似たようなデータを示しており、どのメーカーも他社と比べて著しく高い価格を設定することはできないだろうと指摘する。

 

専門家は、世界中を襲ったパンデミックを打破するには、効果的なワクチンが不可欠だと考えている。ワクチンは何十億人もの人々に接種できるようにしなければならない。製薬企業は、世界的な健康危機から大きな利益を上げるべきではないという相当なプレッシャーを受けている。

 

SBVリーリンクのアナリストであるジェフリー・ポージェス氏は、1人あたり40ドルなら「メーカーは確実に利益を生み出すだろう」とし、地域によっては粗利益率が60~80%になる可能性もあるという。ただし、この粗利益率には研究開発コストは含まれておらず、ファイザーはワクチン開発に最大10億ドルの費用がかかるとしている。

 

今回の価格設定は製薬会社に一定の利益をもたらすことになりそうだが、アナリストや医薬品価格の専門家は、今回の価格はほかの一般的なワクチンと同程度であり、切実なニーズを考えると、政府にとっても良い条件だと述べている。

 

「重要なベンチマークに」

ポージェス氏は「今回の契約は、COVID-19ワクチンの価格設定において重要なベンチマークとなるだろう」と述べ、メーカーは世界中で単一の価格設定を目指す可能性が高いとの見方を示す。

 

ファイザーや米モデルナ、米メルクはいずれも、ワクチンを利益の出る価格で供給する計画を明らかにしている。

 

世界各国の政府や非営利団体は、有望なCOVID-19ワクチンを確保しようと争奪戦を繰り広げているが、どのワクチンも最終的に成功する保証はない。

 

米ジョンソン・エンド・ジョンソンはロイターに対し、欧州連合(EU)、日本、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ・財団とワクチン供給について協議していることを明らかにした。J&Jを含むいくつかの製薬企業は、パンデミック中はワクチンを非営利で供給するとしているが、同社は価格の詳細を明らかにしていない。

 

英アストラゼネカは、同オックスフォード大と共同開発しているワクチンについて、12億ドルの先行投資と引き換えに3億回分を米国に提供することで合意した。1回分のコストは約4ドルとなる計算で、ファイザー/ビオンテックよりもはるかに安い。ただ、アストラゼネカの場合、開発に失敗したとしても、先行して受け取った資金で研究開発に費やしたコストを回収することができる。

 

(Carl O’Donnell、翻訳:AnswersNews)

あわせて読みたい

メールでニュースを受け取る

  • 新着記事が届く
  • 業界ニュースがコンパクトにわかる

オススメの記事

人気記事

メールでニュースを受け取る

メールでニュースを受け取る

  • 新着記事が届く
  • 業界ニュースがコンパクトにわかる