2019年に世界で最も売れた医薬品は、前年に続いて米アッヴィの抗TNFα抗体「ヒュミラ」だったことが、米IQVIAの集計でわかりました。2位は米ブリストル・マイヤーズスクイブと米ファイザーの抗凝固薬「エリキュース」で、3位は米メルクの免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」でした。
ヒュミラ 売上高は約2.8兆円
米IQVIAが公表した2019年の世界の医薬品市場に関するデータによると、売上高トップとなったのは、抗TNFα抗体「ヒュミラ」(米アッヴィ)。売上高は前年比6.7%増の268億5100万ドル(約2兆8731億円)に上りました。
2位は134億7300万ドル(前年比34.5%増、約1兆4416億円)を売り上げた抗凝固薬「エリキュース」(米ブリストル・マイヤーズスクイブ/米ファイザー)で、3位は113億6100万ドル(59.6%増、約1兆2156億円)の免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」。エリキュースは前年4位から、キイトルーダは同9位から、それぞれ順位を上げました。
4位も抗凝固薬で、独バイエルの「イグザレルト」(103億7800万ドル、15.0%増)がランクイン。5位のインスリン製剤「ランタス」(仏サノフィ)と6位のTNFα阻害薬「エンブレル」(米ファイザー)はバイオシミラーとの競合で売り上げを落とした一方、7位の抗IL-12/23p40抗体「ステラーラ」(米ジョンソン・エンド・ジョンソン)は30.0%の売り上げ増で前年12位から急上昇しました。
オプジーボは8600億円で8位
日本企業が創製した医薬品として唯一トップ20に入った8位の免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」(ブリストル/小野薬品工業)は、8.2%増の80億3300万ドルを売り上げたものの、前年7位から後退。ライバルのキイトルーダに逆転されました。
11位以下では、米イーライリリーのGLP-1受容体作動薬「トルリシティ」(73億400万ドル、43.7%増)が前年のトップ20圏外から11位にランクイン。17位の抗がん剤「イムブルビカ」(ジョンソン・エンド・ジョンソン)や19位の同「レブラミド」(ブリストル)、20位の同「イブランス」(ファイザー)も新たにトップ20入りした一方、ファイザーの疼痛治療薬「リリカ」(前年11位)は姿を消しました。
世界売上高トップ20の医薬品を疾患領域別に見ると、最も多かったのはがんの8製品。次いで多かったのは5製品の糖尿病で、自己免疫疾患が4製品、抗凝固薬が2製品と続きました。
がん 市場は15兆円規模に
2019年の世界市場は1兆1346億9900万ドル(約121兆4218億円)で、前年から5.7%拡大しました。
疾患領域別で最大の市場は「がん」。19年は前年比17.5%増の1398億3000ドル(約14兆9618億円)に達しました。2位の「糖尿病」(1032億100万ドル、8.1%増)は初めて1000億ドルを突破。3位は641億8400万ドル(8.0%増)の「自己免疫疾患」でした。
前年比で2ケタの伸びとなったのは、がんのほか、6位の「抗凝固薬」(13.3%増)と15位の「免疫抑制剤」(27.1%増)、17位の「ワクチン」(13.0%増)。一方、「その他循環器疾患」(1.1%減)と「神経疾患」(6.1%減)、「脂質調整薬」(1.5%減)は前年から市場が縮小しました。
医療用医薬品と一部OTCの製品売上高では、ジョンソン・エンド・ジョンソンが547億9000万ドル(6.4%増、約5兆8625億円)で前年に続いてトップ。2位はスイス・ノバルティス(529億1700万ドル、8.3%増)、3位はスイス・ロシュ(483億2400万ドル、8.9%減)でした。昨年11月に米セルジーンを買収したブリストルは9位に入り、前年15位からジャンプアップ。武田薬品工業は269億6500万ドル(4.4%増)で15位でした。
(前田雄樹)
【AnswersNews編集部が製薬企業をレポート】