2020年4月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】トリプルネガティブ乳がん治療薬「Trodelvy」や胆管がん治療薬「Pemazyre」など
「Koselugo」英アストラゼネカ
MEK阻害薬「Koselugo」(selumetinib)は、小児の神経線維腫症1型に対する治療薬。症候性の手術不能な叢状神経線維腫を有する2歳以上の患者が対象です。同薬は英アストラゼネカと米メルクが共同で開発しており、欧州でも申請中。日本では固形がんなどを対象に臨床第1相(P1)試験を行っています。
「Jelmyto」米ユーロジェン
「Jelmyto」(mitomycin)は、低悪性度の上部尿路上皮がんを対象とする新規のマイトマイシン製剤。米ユーロジェン独自の徐放性ヒドロゲルベース製剤技術を使い、有効成分を長時間にわたって尿路細胞に作用させるようにしました。腎尿管を切除する手術に代わる非外科的治療法として期待されています。
「Emerphed」米ネクサス
「Emerphed」(ephedrine sulfate)は麻酔使用によって起こる臨床的低血圧の治療薬。米国初となる混合済みのエフェドリン注射剤で、すぐに使用でき、人的ミスや投与までの時間削減が期待されます。
「Tukysa」米シアトルジェネティクス
「Tukysa」(tucatinib)は経口のHER2阻害薬で、適応は切除不能な進行性または転移性のHER2陽性乳がん。抗HER2抗体トラスツズマブ、抗がん剤カペシタビンと併用します。抗HER2療法既治療の患者や、脳転移を有する患者にも使用できるのが特徴。FDAが主導する多国間共同審査の枠組み「プロジェクトOrbis」が適用され、カナダ、オーストラリア、シンガポール、スイスでも審査中です。
「Pemazyre」米インサイト
FGFR阻害薬「Pemazyre」(pemigatinib)は、FGFR2融合遺伝子陽性の切除不能な局所進行または転移性の胆管がんが対象。胆道がんに対する初の分子標的薬です。欧州でも申請中で、日本では1次治療を対象としたP3試験などが行われています。
「Trodelvy」米イミュノメディクス
「Trodelvy」(sacituzumab govitecan)は、再発・難治性の転移性トリプルネガティブ乳がんを対象とした抗TROP2抗体薬物複合体(ADC)。少なくとも2つ以上の治療を受けた患者が対象です。乳がんのほかにも、尿路上皮がんや非小細胞肺がんなど、8つの固形がんを対象に欧米で臨床試験を行っています。
「Ongentys」米ニューロクリン
「Ongentys」(opicapone)はカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害薬で、適応は「レボドパ/カルビドパ併用治療によるパーキンソン病におけるウェアリングオフ現象」。同薬はポルトガルBIALが創製した1日1回投与のカプセル剤で、欧州では2016年に承認を取得。日本では小野薬品工業が19年2月に申請しています。
「Milprosa」スイス・フェリング
「Milprosa」は黄体ホルモンprogesteroneの膣内リング。不妊治療に使う薬剤で、胚着床と早期妊娠を補助します。同剤はイスラエル・テバが開発し、スイス・フェリングは2015年に全世界でのライセンスを獲得しました。
【適応拡大】「Braftovi」の転移性大腸がんや「Imbruvica」の慢性リンパ性白血病など
「Braftovi」米ファイザー
BRAF阻害薬「Braftovi」(encorafenib)は、BRAF遺伝子変異陽性の転移性大腸がんに適応拡大。治療歴のある成人患者が対象で、抗EGFR抗体セツキシマブ(米国製品名「Erbitux」)と併用します。日本では今年3月、小野薬品工業が結腸・直腸がんに対するMEK阻害薬「メクトビ」(ビニメチニブ)、セツキシマブとの3剤併用療法を申請しました。
「Cymbalta」米イーライリリー
抗精神病薬「Cymbalta」(duloxetine)は、13~17歳の線維筋痛症患者への使用が可能となりました。同薬はセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬。繊維筋痛症の適応では、日本では2015年に成人患者を対象に承認を取得しています。
「Imbruvica」米アッヴィ
血液がん治療薬「Imbruvica」(ibrutinib)は、慢性リンパ性白血病と小リンパ球性リンパ腫の一次治療として、リツキシマブとの併用療法が新たに承認されました。同薬はアッヴィ傘下のファーマサイクリックスと米ヤンセンが共同開発しているBTK阻害薬で、欧州でも同適応で今年1月に申請。「プロジェクトOrbis」が適用されており、今後オーストラリア、カナダ、スイスでも申請が見込まれています。
「Jublia」カナダ・バウシュ
爪真菌症治療薬「Jublia」(efinaconazole)は6歳以上の小児へと対象が広がりました。同薬は科研製薬が創製したもので、米国とカナダではカナダ・バウシュが2014年に発売。日本でも同年から「クレナフィン」の製品名で販売されていますが、添付文書では「小児への安全性は確立していない(使用経験がない)」とされています。
「Keytruda」米メルク
免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1抗体「Keytruda」(pembrolizumab)は、成人を対象に承認されている全ての適応で、400mgを6週間に1回投与する新たな用法・用量が承認されました。これまでの3週1回投与(200mg)に比べ、通院などによる患者負担を軽減できると期待されています。
「Zejula」英グラクソ・スミスクライン
PARP阻害薬「Zejula」(niraparib)は、プラチナ製剤感受性の進行卵巣がん(ファーストラインの維持療法)に適応拡大。同薬は2017年に再発卵巣がんの維持療法を対象に承認されており、今回の承認でより早期の治療にも使用できるようになりました。日本では昨年11月、導出先の武田薬品工業が卵巣がんの維持療法とサルベージ療法を対象に申請しました。
(亀田真由)
【AnswersNews編集部が製薬企業をレポート】