2020年3月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】多発性骨髄腫治療薬「Sarclisa」やクッシング病治療薬「Isturisa」など
「Sarclisa」仏サノフィ
抗CD38抗体「Sarclisa」(一般名・isatuximab)は、再発・難治性の多発性骨髄腫の適応で承認。ポマリドミド、デキサメタゾンと併用します。レナリドミドやプロテアソーム阻害薬など、少なくとも2つ以上の治療を行った患者が対象。抗CD38抗体としては2015年に米国で承認された「Darzalex」(daratumumab)に続く2剤目。日本と欧州でも申請中です。
「Durysta」アイルランド・アラガン
「Durysta」(bimatoprost)は、開放隅角緑内障・高眼圧症を対象に承認されました。前房内に埋め込んで使われる生分解性の徐放製剤。承認のもととなった臨床試験では、患者の眼圧を約30%低下させました。
「Isturisa」スイス・ノバルティス
クッシング病治療薬「Isturisa」(osilodrostat)が承認を取得しました。対象は下垂体外科手術を受けられない、もしくは手術後も症状のある成人患者。11β-水酸化酵素を阻害してコルチゾールの合成を抑制する作用があり、疾患の原因となるコルチゾールの過剰生成に直接アプローチします。欧州でも今年1月に承認されました。
「Zeposia」米ブリストル
スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)受容体調節薬「Zeposia」(ozanimod)は、再発性の多発性硬化症を対象に承認を取得。再発寛解型と二次性進行型のほか、発症早期の症状にも使用できます。欧州でも近く承認される見通しです。
「Triferic」米ロックウェル
慢性腎臓病に伴う血液透析患者に対する鉄補充療法で使用される「Triferic」(ferric pyrophosphate citrate)は、新たに静注剤が承認されました。従来品は重炭酸塩の透析液と混ぜて使用しますが、静注剤は患者に直接投与できるため、利便性の向上が期待されています。
【適応拡大】「Ofev」の間質性肺疾患、「Opdivo/Yervoy」の肝細胞がんなど
「Ofev」独ベーリンガーインゲルハイム
特発性肺線維症治療薬「Ofev」(nintedanib)は、新たに進行性線維化を伴う慢性間質性肺疾患の適応で承認されました。間質性肺疾患では、特発性肺線維症に似た臨床経過をたどり、進行性の線維化が見られることがあるといいます。日本でも15年に発売されており、進行性線維化を伴う間質性肺疾患を対象に適応拡大を申請中です。
「Opdivo」「Yervoy」米ブリストル
免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1抗体Opdivo(nivolumab)と抗CTLA-4抗体Yervoy(ipilimumab)は、肝細胞がんに対する併用療法が承認されました。対象は、抗がん剤ソラフェニブによる治療歴のある患者。両剤の併用療法としては▽悪性黒色腫▽腎細胞がん▽高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)/DNAミスマッチ修復機構欠損(dMMR)の大腸がん――に続く4つ目の適応となります。日本では肝細胞がんなどを対象に併用療法の臨床第3相(P3)試験を行っています。
「Epclusa」米ギリアド
C型肝炎治療薬「Epclusa」(sofosbuvir/velpatasvir)は、6歳以上の小児患者(もしくは体重17kg以上の小児患者)への使用が承認。全てのジェノタイプに使用でき、プロテアーゼ阻害薬が配合されていない小児向けの治療法は初めてとなります。同薬は日本や欧州で成人患者を対象に承認されており、欧州では小児の適応で申請中です。
「Eucrisa」米ファイザー
アトピー性皮膚炎治療薬の軟膏「Eucrisa」(crisaborole)は、生後3カ月~2歳までの軽・中等症の小児患者への使用が可能となりました。アトピー性皮膚炎の半数以上は乳児期に発症するとされており、ステロイドフリーの同剤は新たな治療選択肢として期待されています。日本では現在、2歳以上の小児と成人を対象にP2試験を行っています。
「Taltz」米イーライリリー
抗IL-17A抗体「Taltz」(ixekizumab)は、6歳以上の小児に対する尋常性乾癬治療薬として承認されました。中等度から重度の患者が対象です。
「Imfinzi」英アストラゼネカ
免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-L1抗体「Imfinzi」(durvalumab)は、進展型小細胞肺がん(ファーストライン)への適応拡大が承認されました。標準的な化学療法(抗がん剤エトポシドとプラチナ製剤)と併用します。日本と欧州でも同適応で申請中です。
(亀田真由)