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日本の「費用対効果評価」を海外はどう見ているのか|DRG海外レポート

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。2019年4月に日本で本格導入された薬価の費用対効果評価を、海外はどうみているのでしょうか。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

ICERに大きく依拠

平均寿命が最も長い国の1つであると同時に高齢化も進んでいる日本は、医療サービスを受ける人の数が生産年齢人口を上回るという危機に瀕している。医療費削減の圧力は図り知れず、持続可能な医療システムの構築は切迫したニーズだ。

 

2019年4月、日本政府は、3年に及ぶパイロット導入を経て日本版の医療技術評価(HTA)制度を正式に導入した。日本では「費用対効果評価」と呼ばれ、現行の薬価算定システムを補完するツールとして考案された。日本の医療システムに適合した患者アクセスとすることを最優先した取り組みであると同時に、エビデンスに基づいた意思決定を促すことも目指している。

 

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費用対効果評価では、革新性が高く財政への影響が大きい医薬品が対象となり、結果に応じて価格の調整が行われる。評価はICER(増分費用効果比、すなわち質調整生存年=QALYを1獲得するのにかかる費用)に大きく依拠しており、疾病の負荷や重篤度、社会的影響といた要素は十分に加味されていない。価格調整率は厚生労働省が定義するICERの閾値に基づいており、収載時の加算部分または薬価の営業利益部分に適用される。抗がん剤など特殊な医薬品についてはICERの閾値が緩和され、指定難病やHIV、血友病の治療薬は費用対効果評価の対象から除外される。

 

2019年のPharma Japanの報告によれば、小野薬品工業の「オプジーボ」(一般名・ニボルマブ)に対し、費用対効果評価による値下げ調整が行われた。同薬の価格は、すでに2018年にも引き下げられている。

 

アレクシオンの「ユルトミリス」(ラブリズマブ)は、国の指定難病である発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療薬であるにもかかわらず、費用対効果評価の対象となった。一方、アルナイラムの「オンパットロ」(パチシラン)は、指定難病(トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー)を適応とする点ではユルトミリスと同様だが、対象にはならなかった。

 

業界からは疑義も

費用対効果評価の導入以来、ICERに過度に依拠している点や、イノベーション、治療ニーズ、社会的・倫理的要因が見過ごされている点に、製薬業界が疑問を呈している。

 

米国研究製薬工業協会(PhARMA)と欧州製薬団体連合会(EFPIA)は、疾患の重篤度とアンメットニーズ、社会的影響といった要素を評価するポイント制の枠組みをICER中心の方法論に加えるよう、共同で提案した。

 

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費用対効果評価による引き下げ率は、加算部分の90%および薬価全体の10~15%となっている。業界は、この引き下げ率は過度であり、イノベーションを原則させて患者アクセスを阻害すると考えている。革新性に報いる価格設定が日本を魅力的な市場として際立たせているのであり、有用性系加算部分を90%も失う可能性によって、その魅力が損なわれるというのだ。

 

日本製薬団体連合会(FPMAJ)は、原価計算方式で薬価算定された品目のうち原価の開示度が低いものが費用対効果評価の対象となる点を指摘している。類似薬効比較方式で薬価算定した医薬品で費用対効果評価の対象となるのは、加算が適用された品目だけなのに、との申し立てである。FPMAJは加算が適用された製品だけを対象とするよう、選定基準の見直しを主張している。

 

対象は拡大?

日本では承認から90日以内に新薬が保険適用となり、市場アクセスの期間が最も短い国の1つであると自負している。今のところ費用対効果は保険適用の判断には用いられないが、日本の財務省はそうすることを目指しているようだ。費用対効果評価はいずれ、医薬品のコストを最適化するツールとなり、財政への影響度とは無関係にすべての医薬品を対象とするよう、範囲が拡大されるだろう。

 

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ごく初期の段階ではあるが、保険償還は医療システムを補完する形で日本のHTAシステムに取り込まれる可能性がある。この動きの中で、薬価収載と市場アクセスに必然的な遅れが生じると業界は示唆している。

 

患者の関与はまた別の領域であり、日本のHTAシステムとして改善の余地がある、というのが専門家の意見だ。彼らはまた、利害関係者の情報や意見を徹底的に取り入れる英国やオーストラリアなどが日本のベンチマークになるだろうと考えている。

 

日本の当局は、費用対効果評価の実施に伴う諸課題を把握しているようだ。透明性の確保を中心に据えて業界と効果的に連携し、持続可能な患者アクセスを最優先する経験を、今後も積み重ねていくだろう。費用対効果評価が成熟するにつれて研究と習得が進み、実践の発展に向けた道が開けることを当局は期待している。

 

(原文掲載日:2020年3月3日)

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

 

【記事に関する問い合わせ先】
ディシジョン・リソーシズ・グループ日本支店
野地(アカウントマネージャー)
E-mail:hnoji@teamdrg.com
Tel:03-6625-5257(代表)

 

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