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ニュース解説

中外製薬 好業績導く「収益構造の大転換」

中外製薬の業績拡大が止まりません。1月30日に発表された2019年12月期決算は売上収益18.4%増、営業利益72.6%増で、今期も大幅な増収増益を予想。自社創製の新薬がスイス・ロシュの販売網に乗って世界で売り上げを伸ばしています。

 

3年連続で過去最高業績を更新

「新製品の好調な市場浸透で、3年連続で過去最高の業績を達成した」。1月30日の決算説明会で中外製薬の小坂達朗社長CEOはこう語りました。19年12月期連結業績(コアベース)は、売上収益が前期から1064億円増の6862億円、営業利益が946億円増の2249億円に達し、営業利益率は32.8%と前期から10.3ポイント上昇。20年12月期は7.8%の増収、22.3%の営業増益を見込み、4期連続で過去最高を更新する見通しです。

 

中外製薬の業績推移(コアベース)

 

業績を牽引するのは、自社創製した▽関節リウマチ治療薬「アクテムラ」▽肺がん治療薬「アレセンサ」▽血友病A治療薬「ヘムライブラ」――3つの新薬です。ロシュの決算によると、アクテムラが19年に世界で23億1100万スイスフラン(約2588億円、前年比8%増)を売り上げたほか、アレセンサが8億7600万スイスフラン(約981億円、38%増)、ヘムライブラが13億8000万スイスフラン(約1546億円)を販売。これら3製品の輸出とロイヤリティが収益を押し上げています。

 

海外売上収益比率が上昇

自社新薬の好調な販売によって、中外の収益構造は大きく変化しています。これまで20%前後だった海外売上収益の比率は19年12月期に35%まで拡大。20年12月期はさらに増えて44%を見込みます。こうした傾向は今後も続く見通しで、「将来的には(海外と国内が)フィフティ・フィフティというのも十分あり得ると考えている」(小坂社長CEO)。ロシュからの導入品を日本で売って収益を上げるスタイルから、自社新薬をグローバルに展開して稼ぐ構造へと変わりつつあります。

 

中外製薬 売上収益構成比の推移(国内・海外)

 

もう1つ、19年12月期決算で象徴的だったのは、中外として初めて営業利益率が経費率を上回ったこと。ロシュからもたらされるロイヤリティはそのまま利益となって営業利益率を押し上げ、経費率は前期から3.8ポイント減の28.6%まで低下しました。ただ、研究開発費は実額で大きく増加しており、「研究開発に積極的に投資する方針は変わらない」(板垣利明CFO)。19年12月期は研究開発費が初めて1000億円を超え、今期はさらに10%以上の増加を見込みます。

 

「成長源は海外」

ただ、こうした収益構造の変化は厳しい国内事業の裏返しでもあります。全社で増収を見込む今期も、国内は5.9%の売り上げ減となる見通し。主力の「アバスチン」「ハーセプチン」などがバイオシミラーの影響を受けるほか、4月の薬価改定では「パージェタ」「ヘムライブラ」「アクテムラ」の3製品が市場拡大再算定による薬価の引き下げを受けます。

 

小坂社長は「バイオシミラーや後発医薬品の普及と薬価抑制策で国内の環境は厳しい」と指摘。「中外にとって日本はホームマーケット。基本的な収益の基盤としてしっかりやっていく」としながらも、「成長源は自社新薬の海外展開だ」と強調します。

 

3月下旬には、小坂社長CEOが会長CEOに就き、社長COO(最高執行責任者)に奥田修・プロジェクト・ライフサイクルマネジメント共同ユニット長が昇格する新体制がスタート。全社戦略に関する意思決定と業務執行上の意思決定を分担することで、意思決定の迅速化を図る考えです。四半世紀以上にわたり同社の経営を率いてきた永山治会長は特別顧問・名誉会長となり、取締役を退きます。

 中外製薬・奥田新社長

3月下旬に中外製薬の社長COOに就任する奥田修氏(1月31日の決算説明会で)

 

中計目標を大幅引き上げ

「ライフサイエンス業界でトップイノベーターと呼ばれるような企業になりたい」。奥田新社長は昨年末の就任発表後初めての取材の場となった30日の決算説明会でこう抱負を述べました。

 

自社新薬では昨年、抗原に繰り返し結合できるリサイクリング抗体サトラリズマブを日米欧で申請したほか、ヘムライブラの後継品となる血友病A治療薬NXT007が臨床第1/2相(P1/2)試験を開始しました。今年は疾患部位で特異的に抗原に結合する「スイッチ抗体」が臨床入りする予定で、来年には第3の柱と位置付ける中分子医薬品の臨床試験を始める方針です。

 

奥田新社長は「中外は画期的新薬を作れる会社になってきている。さらなる画期的な医薬品やソリューションを作り、患者に届けるという好循環を、永続的に回していける会社にしていきたい」と意気込みます。

 

好調な業績を受け中外は、19~21年の中期経営計画で目標とするコアEPS(1株あたり純利益)の年平均成長率を、従来の1ケタ台後半から30%前後へと大幅に引き上げました。今期は「年功序列を崩していく」(小坂社長CEO)新たな人事制度を導入するほか、デジタル人材の獲得・育成を強化する方針。中長期の成長に向けた事業基盤の構築・強化に力を入れます。

 

(前田雄樹)

 

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