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2020年、フォーミュラリーから32の医薬品を削除する米薬剤給付管理会社|DRG海外レポート

更新日

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。薬剤コストの削減に向けて、米国の薬剤給付管理会社がフォーミュラリーからの薬剤の削除を積極的に進めています。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

38億ドルのコスト削減

米国の薬剤給付管理会社(PBM)エクスプレス・スクリプツは2020年、複数のメーカーが供給する10のブランド薬と、1社供給の22のブランド薬、あわせて32の薬剤をフォーミュラリーから削除する。ちなみに、同社は2019年にも50の薬剤を削除している。

 

削除される複数社供給のブランド薬には安価な後発医薬品があり、エクスプレス・スクリプツのフォーミュラリーを利用する雇用主は、38億ドルの経費を削減できる見通しだ。削除される1社供給ブランド薬にも、フォーミュラリーに収載されている後発品がある。

 

エクスプレス・スクリプツのフォーミュラリーでは、位置付けが「推奨」から「非推奨」に引き下げられる薬も19ある。こうした変更はいずれも、薬剤の慎重な使用を促し、経費を抑えることを目的としたものだ。

 

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スペシャリティ医薬品のカテゴリでは、エクスプレス・スクリプツが収載を拒まない新薬も一部あるとはいえ、基本的には従来の薬剤クラスが中心となっている。

 

スペシャリティ領域で削除される薬剤

スペシャリティ医薬品のカテゴリで削除される薬剤には以下のようなものがある。

 

血液凝固第VIII因子製剤

2020年は「Nuwiq」を除外する。この薬は2019年、同社のフォーミュラリーで「Tier2」という有利な位置付けにあり、被保険者の約72%で保険適応となっていた。

 

顆粒球刺激薬

「Neupogen」の類似薬である「Granix」を2020年に除外する。2019年、GranixはTier 2の位置付けで、被保険者の約80%が保険適用を受けていた。フォーミュラリーではNeupogenのバイオシミラーである「Nivestym」「Zarxio」が推奨の位置付けになっている。

 

多発性硬化症治療薬(経口)

「Aubagio」が除外された一方、「Gilenya 」「Mayzent」「Tecfidera」が2020年の推奨リストに入っている。Aubagioは2019年、フォーミュラリーでTier 3の位置付けで、被保険者の約83%をカバーしていた。二次進行型多発性硬化症に対する経口薬で、ノバルティスのブロックバスターである「Mayzent」は、米国承認から1カ月のうちにTier 2の推奨となった。

 

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スペシャリティ領域以外で削除される薬剤

スペシャリティ医薬品以外で削除される薬剤には次のようなものがある。

 

インスリン製剤

「Relion Novolin」を削除する。2019年のフォーミュラリーには、「Novolin N」「Novolin R」「Novolin 70/30」といった製品からなるRelion Novolinが収載されていた。同薬はTier 2の位置付けだったが、提供を受けたのは被保険者の18%に過ぎず、加入者の70%が適用から外れていた。ノボノルディスクは、「Novolog」のオーソライズド・ジェネリックの発売を予定しており、同社はこれにより2020年のフォーミュラリーへの収載が増えるだろう。

 

血糖測定器

2020年、バイエルのテストストリップが削除され、かつて収載されていたナショナル・メディカル、オムニス・ヘルス、トリビディア、ユニストリップなどとともに削除リストに加わった。2020年は、ライフスキャンの「OneTouch」に加え、フリースタイルとプレシジョン・エクストラのテストストリップが追加された。OneTouchのテストストリップはTier 2で、被保険者の約80%に保険が適用。フリースタイルとプレシジョン・エクストラのテストストリップは被保険者の約75%が適用から外れていたが、2020年は推奨品目になったことで位置付けに変化が出てくるだろう。

 

2014年以降 積極的に削除

エクスプレス・スクリプツは、価格の安い薬へのアクセスを向上させてコストを削減しようと、2014年から積極的にフォーミュラリーからの薬剤の削除を進めている。

 

【ESIがフォーミュラリーから削除した薬剤の数の推移】(ESI=エクスプレス・スクリプツ):2014・48、2015・72、2016・80、2017・85、2018・64、2019・50、2020・32

 

同社は、コスト削減のためにフォーミュラリーから薬剤を削除するというトレンドを仕掛けた企業の1つと言える。2014年以降、同社は薬剤の削除を精力的に行い、C型肝炎治療薬Sovaldiを外してViekira Pakの採用でアッヴィと合意したことで大きな注目を集めた。

 

保険プランの出資者にとっては、これが大きなコスト削減につながった。その後、こうした削除によって先発医薬品同士の競争が激化し、後発品が優先品目に加わり、新たな臨床的情報が加入者のケアの改善に活用されるようになった。現在、薬剤の削除は、エクスプレス・スクリプツが正味コストの最小化を実現するための重要手段の1つとなっている。

 

堅固な削除リストを作れば、この先数年、新たに削除する薬の数を減らせるかもしれない。エクスプレス・スクリプツはシグナとの巨大合併もあって、自社のフォーミュラリーに収載する薬剤の費用と有効性を改善するため、さまざまな運用管理ツールの使用に挑戦している。

 

2021年、高額な新薬に対してエクスプレス・スクリプツが使うのは削除戦略なのか、あるいはシグナの医療管理チームと連携した多彩な運用テクニックなのか、関心が集まるところだ。

 

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エクスプレス・スクリプツは一方で、シグナとの合併によって医薬品メーカーとの交渉で新たな難題を抱えることになった。シグナが処方薬をより安価にする取り組みを始めているからだ。2020年に「Embarc Benefit Protection」という新サービスを開始し、シグナは実質的に保険会社ネットワーク加入の遺伝子治療薬提供企業になる。

 

このサービスでは、毎月のネットワークアクセス料金を保険プランが負担し、新サービスの中で最初に提供がスタートする「Luxturna」「Zolgensma」の2つの遺伝子治療薬について、消費者の自己負担がなくなる。将来、シグナがほかの治療薬を加える可能性があるため、ほかのスペシャリティ医薬品メーカーも計画に参加してくるかもしれない。

 

シグナはまた、イーライリリー、ノボノルディスク、サノフィと連携して、販売時にインスリン30日分の自己負担上限を25ドルとするサービスを提供する予定だ。この新たな「Patient Assurance Program」(患者確約プログラム)は、エクスプレス・スクリプツが管理する非政府出資の調剤プランの加入者が利用可能となっている。

 

(原文公開日:2019年11月12日)

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

 

【記事に関する問い合わせ先】
ディシジョン・リソーシズ・グループ日本支店
斎藤(コマーシャルエクセレンス ディレクター)
E-mail:ssaito@teamdrg.com
Tel:03-6625-5257(代表)

 

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