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【インフルエンザ】19/20シーズン 市場の動向は…ゾフルーザ「慎重営業」も昨季並みのシェア目指す

例年より早く流行の兆しを見せている今季のインフルエンザ。治療薬の市場では、「ゾフルーザ」が耐性変異や安全性に関する情報の提供に力を入れつつ、昨季並みのシェア獲得を目指す一方、「イナビル」はネブライザーで吸入する新剤形を投入してテコ入れを図ります。「タミフル」の後発医薬品も好調で、今季も激しいシェア争いが繰り広げられそうです。

 

塩野義 MRに売り上げ目標課さず

「今シーズンはMRに売り上げ目標を課していない。『どの病院に行って、耐性変異と安全性の話をしたか』ということをノルマとして与えている。その結果として最も適切な治療をしてもらうのが我々の理想だ」

 

10月23日、塩野義製薬の手代木功社長は、同社が開いたインフルエンザに関するメディア向けセミナーで、抗インフルエンザウイルス薬「ゾフルーザ」の今季の販売方針についてこう述べました。

 

ゾフルーザは2018年3月に発売され、18/19シーズンは医薬品卸から医療機関への供給量ベースで約4割のシェアを獲得。一方で、シーズン後半には耐性ウイルスの出現がクローズアップされ、塩野義のプロモーションのあり方にも批判的な声が上がりました。

 

有効性に偏りとの指摘「真摯に受け止める」

「医療機関からも『(情報提供が)有効性に偏っていたのではないか』というフィードバックがあり、これは真摯に受け止める」(手代木社長)。昨シーズンの反省に踏まえ、今季は耐性変異や安全性を重視した情報提供活動に力を入れる方針です。

 

【18/19シーズン抗インフルエンザウイルス薬のシェアを示したグラフ(卸から医療機関への供給量ベース)】※薬名・シェア(卸から医療機関への供給量):ゾフルーザ・39.3%(528.3万人分)、イナビル・20.0%(268.6万人分)、タミフル・19.1%(257.1万人分)、タミフル後発品・14.7%(197.7万人分)、リレンザ・4.4%(59.7万人分)、ラピアクタ・2.4%(32.0万人分)※厚生労働省の公表資料をもとに作成

 

国内で主に使用される抗インフルエンザウイルス薬は、

▽「リレンザ」(ザナミビル)
▽「タミフル」(オセルタミビル)
▽「ラピアクタ」(ペラミビル)
▽「イナビル」(ラニナミビル)
▽「ゾフルーザ」(バロキサビル)

――の5種類。ゾフルーザはCapエンドヌクレアーゼ阻害薬で、ほかの4剤(ノイラミニダーゼ阻害薬)とは違ってウイルスの増殖そのものを抑えるのが最大の特徴です。1回の服用で治療が完結するという利便性を背景に、昨シーズン、売り上げとシェアを大きく伸ばしました。

 

感染症学会「小児は慎重に投与検討を」

塩野義は今年度、ゾフルーザの売上高を前年度比6.5%増の280億円と計画。手代木社長は「ノイラミニダーゼ阻害薬とCapエンドヌクレアーゼ阻害薬が適切に使い分けられる中で、マーケットシェアの40%程度をとれればということを売上高目標にしている」とし、安全性や耐性変異に関する情報提供を重視しながらも、昨季並みのシェア獲得を目指す考えを明らかにしました。

 

一方、関係学会はゾフルーザの慎重な使用を呼びかけています。日本感染症学会は10月24日、「12歳未満の小児では耐性ウイルスの出現頻度が高いことを考慮し、慎重に投与を検討する」との提言を発表。日本小児科学会も同21日に「12歳未満の小児には積極的な投与を推奨しない」との治療指針を公表しました。

 

【日本小児科学会のインフルエンザ治療指針(19/20シーズン)】※1歳未満/1~4歳/5~9歳/10歳以上/呼吸器症状が強い・呼吸器疾患がある:オセルタミビル→(全対象)推奨、ザナミビル→推奨されない/吸入困難と考える/吸入可能と判断された場合に限る/推奨/要注意、ラニナミビル→推奨されない/吸入困難と考える/吸入可能と判断された場合に限る/推奨/要注意、ペラミビル→(全対象)左記3剤の使用が困難なときに考慮、バロキサビル→12歳未満の小児に対する積極的な投与は推奨しない

 

使用制限は設けず

「タミフル」や「ラピアクタ」でも耐性ウイルスは検出されており、08/09シーズンにはタミフル耐性ウイルスが流行しましたが、次のシーズンには例年と同じ状況に戻っています。塩野義はサーベイランスを継続的に行っていく考えで、手代木社長は「経時的に見ることでいろいろなことが分かる。今は1年(の使用経験で)言えることについて話しているが、これから2年3年と続けていかなければならない」と言います。

 

耐性ウイルスが実際の治療効果にどう影響するか判断できる十分なデータはなく、感染症学会は「ゾフルーザ耐性ウイルスが臨床経過に与える影響についてはエビデンスが十分でない」と指摘。小児科学会の治療指針では「現時点では使用制限は設けない」とし、感染症学会の提言は「12歳以上の患者については、臨床データが乏しい中、現時点で推奨/非推奨を決められない」としています。

 

日本臨床内科医会インフルエンザ研究班の池松秀之リサーチディレクターは、塩野義主催のセミナーで「使い始めてまだ1年。何が起こるかわからないので乱用されると心配だが、絶対に使ってはいけないということではない」と強調。耐性ウイルスの広がりや治療への影響を注視する必要があると指摘しています。

 

イナビルは新剤形を投入

塩野義の手代木社長は学会などの動きについて、「データがまだ1年分しかない中で、臨床の先生方が考えを公表したことは受け止める。淡々と受け止めた上で、安全性や耐性のことをどう伝えられるかということをやっていきたい」と話します。

 

一方、昨シーズン、ゾフルーザにシェアトップを奪われた第一三共のイナビルは、ネブライザーで吸入する新たな剤形を近く投入する予定です。従来の吸入容器では吸入が難しかった小児などへの使用が期待され、ピーク時に31億円の売上高を予想。第一三共は新剤形の投入によって売り上げの回復を図る考えで、19年度は前年度比15.4%増の210億円を計画しています。

 

18年9月に沢井製薬が発売したタミフルの後発品は昨季、卸から医療機関への供給量ベースで先発品に対して43.5%のシェアを獲得。タミフルは後発品とゾフルーザの影響で大きく売り上げを落としており、19年12月期も前期比11.3%の減少(行政備蓄分を除くと38.6%の減少)を見込んでいます。

 

【抗インフルエンザ薬の売上高(19年度は予想。単位:億円、%)】※製品名(社名)/用法/売上高:ゾフルーザ(塩野義製薬)/経口1回/17年度24億円・18年度263億円・増減+995.8%・19年度予想280億円・増減+6.5%、イナビル(第一三共)/吸入1回/17年度253億円・18年度182億円・増減-28.0%・19年度予想210億円・増減+15.4%、タミフル(中外製薬)/経口5日間/17年度179億円・18年度101億円・増減-43.6%・19年度予想-、ラピアクタ(塩野義製薬)/点滴1回/17年度33億円・18年度20億円・増減-39.4%。19年度予想26億円・増減+30.0%、リレンザ(GSK)/吸入5日間/-、※中外は12月決算だが、四半期ごとの売上高を合計して年度(4月~翌年3月)に読み替え。各社の決算資料をもとに作成。

 

ゾフルーザの登場とタミフルへの後発品参入で勢力図が大きく塗り替わった昨季の抗インフルエンザウイルス薬市場。今シーズンはどうなるのか。耐性ウイルスの検出状況も含め、各製品の販売動向が注目されます。

 

(前田雄樹)

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