2019年8月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】TuralioやRozlytrekなど
「Turalio」第一三共
抗がん剤のCSF-1R阻害薬「Turalio」(一般名・pexidartinib)は、腱滑膜巨細胞腫の適応で承認。手術による切除以外に有効な治療法のなかった同疾患の新たな治療選択肢として期待されています。臨床試験では重篤な肝障害が報告されており、これを軽減するために、処方はREMS(Risk Evaluation and Mitigation Strategy)と呼ばれる管理プログラムに従って行われます。欧州でも申請中です。
pretomanid TBアライアンス
国際非営利団体The Global Alliance for TB Drug Development(TBアライアンス)の抗菌薬pretomanidは、高度の薬剤耐性結核を対象に、ベダキリンとリネゾリドとの併用療法が承認されました。効果的な治療法のない感染症に対する治療薬の開発を支援するLPAD pathway(Limited Population Pathway for Antibacterial and Antifungal Drugs)プログラムの下で承認された薬剤としては2剤目。FDAの認定感染症製品にも指定されています。
「Wakix」仏バイオプロジェクト
選択的ヒスタミン3受容体拮抗薬/逆作動薬「Wakix」(pitolisant)は、成人ナルコレプシー患者の日中の過度の眠気を対象に承認を取得。同薬はヒスタミンの合成と放出を増加させる新規作用機序の薬剤で、米国ではライセンス先の米ハーモニー・バイオサイエンシズが2019年10~12月に発売する見込みです。
「Rozlytrek」米ジェネンテック(スイス・ロシュ)
ROS1/TRK阻害薬「Rozlytrek」(entrectinib)は、NTRK融合遺伝子陽性の固形がんとROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんで承認されました。NTRK融合遺伝子陽性がんに対しては、独バイエルの「Vitrakvi」(larotrectinib)に続く薬剤。日本ではNTRK融合遺伝子陽性固形がんの適応で19年6月に承認されており、ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんでも申請中です。
「Rinvoq」米アッヴィ
「Rinvoq」(upadacitinib)は、抗リウマチ薬メトトレキサートで効果不十分の、中等度から重度の関節リウマチ患者の適応で承認。同薬は1日1回投与のJAK阻害薬で、日本と欧州でも申請中。潰瘍性大腸炎や乾癬性関節炎などを対象にグローバルで後期開発を進めています。
「Inrebic」米セルジーン
「Inrebic」(fedratinib)は、米セルジーンが18年の米インパクト・バイオメディシンズ買収で獲得したJAK2阻害薬。骨髄線維症治療薬としてはほぼ10年ぶりの新薬です。中間-2リスクまたは高リスクの原発性疾患または続発性疾患(真性多血症や本態性血小板血症の後に発症)で使用されます。
「Xenleta」アイルランド・Nabriva
抗菌薬「Xenleta」(lefamulin)は市中感染性細菌性肺炎の適応で承認。同薬は、細菌を増殖させるタンパク質の合成を阻害する半合成プレウロムチリン抗菌薬で、経口剤と静注製剤があります。FDAから認定感染症製品の指定を受けています。
「Nourianz」協和キリン
「Nourianz」(istradefylline)は、レボドパ製剤の効果が切れる「ウェアリングオフ現象」のある成人パーキンソン病を対象に、レボドパ/カルビドパとの併用療法で承認されました。同薬は協和キリンが創製したアデノシンA2A受容体拮抗薬。日本では「ノウリアスト」の製品名で13年から販売しています。
「Ga 68 Dotatoc」米アイオワ大病院・クリニックPETイメージングセンター
「Ga 68 Dotatoc」は、ポジトロン断層法による神経内分泌腫瘍の放射性検査への使用が承認されました。同剤は、神経内分泌腫瘍で過剰に発現するソマトスタチン受容体に特異的に反応を示します。
【適応拡大】Taltzの強直性脊椎炎、Myoblocの慢性流涎症など
「Clenpiq」スイス・フェリング
大腸内視鏡検査前の結腸洗浄に用いられる「Clenpiq」(sodium picosulfate/magnesium oxide/anhydrous citric acid)は、新たに9歳以上の小児での使用が承認されました。同剤は刺激性下剤と浸透圧性下剤を組み合わせた製剤で、経口液剤のため、すぐに使用できるのが特徴です。
「Sirturo」米ヤンセン
多剤耐性肺結核治療薬「Sirturo」(bedaquiline)は、体重30kg以上の12歳から18歳の小児適応で承認を取得。多剤併用療法で利用されます。同薬はジアリルキノリン系の抗結核薬で、日本では成人の適応で18年5月に発売しています。
「Myobloc」アイルランド・エラン
B型ボツリヌス毒素製剤「Myobloc」(rimabotulinumtoxinB)は、成人の慢性流涎症を対象に承認。同薬は2000年から痙性斜頸治療薬として販売されており、日本ではエーザイが同適応で2013年に発売しました。
「Tybost」米ギリアド
抗HIV薬の作用を増強する「Tybost」(cobicistat)は、体重35kg以上の小児への適応拡大が承認されました。他の抗レトロウイルス薬との併用療法で使用されます。
「Taltz」米イーライリリー
抗ヒトIL-17A抗体「Taltz」(ixekizumab)は、活動期の強直性脊椎炎(X線基準を満たす体軸性脊椎関節炎)への適応拡大が承認されました。同薬は16年に日本と米国で乾癬治療薬として発売。日本でも強直性脊椎炎の適応で申請しており、グローバルでX線上所見の見られない体軸性脊椎関節炎のP3試験を実施中です。
(亀田真由)