2018年度末時点の国内のMR数は5万9900人で、前年度から2533人減ったことが、MR認定センターのまとめでわかりました。相次ぐ早期退職を背景に、減少幅としては過去最大。減少は5年連続で、ピークとなった13年度と比較すると5800人あまり減少しました。
5年で5800人減少
MR認定センターが8月に公表した2019年版「MR白書」によると、18年度(19年3月31日時点)の国内のMR数は5万9900人で、前年度から2533人(4.1%)減りました。6万人を下回るのは09年度(5万9712人)以来9年ぶり。国内のMR数は13年度の6万5752人をピークに減少を続けており、この5年間で5852人減ったことになります。
薬価の引き下げや後発医薬品の普及を背景に国内市場は厳しさを増しており、製薬各社は組織体制の見直しを迫られています。IQVIAの調査によると、国内の医療用医薬品市場は17年(1.0%減)、18年(1.7%減)と2年連続で前年を下回りました。収益環境の悪化に加え、製品構成が大型の生活習慣病治療薬からがんや難病といったスペシャリティ領域にシフトしていることや、デジタルチャネルを通じた情報提供が広がっていることも、MR削減の要因となっています。
MRの削減はこれまで外資系企業で先行していましたが、18年度は内資系企業が1266人減らし、外資(1210人減)を上回りました。内資ではここ数年、早期退職が相次いでおり、今年もアステラス製薬やエーザイ、協和キリン、中外製薬などが数百人規模の早期退職を実施。IQVIAが向こう5年の成長率をマイナス3~0%と予測するなど国内市場の先行きは暗く、MRの減少に歯止めがかかる気配は見られません。
6割の企業が新卒採用せず
MRの採用も低調です。
MR認定センターに登録する203社のうち、19年春にMRとして新卒者を採用した企業は87社と半数を下回り、全体の6割近い116社は新卒採用を行いませんでした。新卒採用を行わない企業の割合は年々増加しており、19年は前年から1.9ポイント増加。MRの削減傾向が強まる中、新卒採用を抑制する流れが続いています。
一方、18年度にMRの中途採用を行った企業は127社で、全体に占める割合は前年度から1.2ポイント上昇しました。ただ、正社員として採用した企業は85.8%で前年度比3.3ポイントの減少。かわりに、契約社員として採用した企業の割合が3.0ポイント増えました。
中途採用者の前職を見てみると、製薬他社のMRを採用した企業が73.2%で最も多く、コントラクトMR(55.9%)、特約店関係者(MSなど、15.0%)、他業界(10.2%)と続きました。傾向としては例年と同じですが、18年度は製薬他社MRが前年から7.4ポイントも低下した一方、コントラクトMRが5.5ポイント増加。他業界からの人材を受け入れた企業は7.6ポイント減少しました。
強まる規制 狭まる活動
MRをめぐっては、数だけでなく、業務のあり方も転換点を迎えています。
今年4月には、厚生労働省の「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」の運用がスタートし、MRのプロモーション活動に対する規制が強化。医療機関によるMRの訪問規制も厳しくなっています。人材紹介会社のコンサルタントによると、「活動が狭まったことで介在価値を感じられなくなった」「MRという仕事の将来が不安になった」といった理由でキャリアチェンジの相談に訪れるMRが、特に販売情報提供活動ガイドラインが施行された今年4月以降、増えているといいます。
財務省の財政制度等審議会は、今年6月にまとめた建議で「製薬企業は費用構造の見直しに取り組むべき」と指摘。財務省は建議のとりまとめに向けた議論の中で「他業種と比較して研究開発費率は高いが、それ以上に営業費用など研究開発費以外の販管費の比率が高い」と注文を付けました。
医療費削減の観点からも厳しい視線が注がれる製薬企業の営業活動。国内市場の先行きに明るい材料はなく、MR削減の流れは止まりそうにありません。
(前田雄樹)