2019年7月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】XpovioやRecarbrioなど
「Xpovio」米カリオファーム
米国初の経口選択的核外輸送タンパク質阻害薬「Xpovio」(一般名・selinexor)は、再発・難治性の多発性骨髄腫を対象に、dexamethasoneとの併用療法で承認されました。4回以上の治療歴があり、プロテアソーム阻害薬、免疫調整薬、抗CD38抗体に耐性のある患者が対象です。日本では、導出先の小野薬品工業が多発性骨髄腫と非ホジキンリンパ腫で臨床第1相(P1)試験を行っています。
「Katerzia」米シルバーゲート
米シルバーゲートの「Katerzia」は、カルシウムチャネル拮抗薬amlodipineの経口懸濁液です。小児に使用する際の利便性向上が期待されています。
「Recarbrio」米メルク
3剤配合の抗菌薬「Recarbrio」は、成人の複雑性尿路感染症と複雑性腹腔内感染症で承認を取得しました。同薬はカルバペネム系抗菌薬imipenemと腎デヒドロペプチダーゼ阻害薬のcilastatin、β-ラクタマーゼ阻害薬のrelebactamの配合剤。薬剤耐性を防ぐため、FDAは治療選択肢が限られた患者に限定して使用することを推奨しています。日本では現在、P3試験を実施中です。
「Baqsimi」米イーライリリー
糖尿病に伴う重症低血糖の治療薬glucagonの点鼻粉末剤「Baqsimi」が承認。重症低血糖は治療緊急性が高いにもかかわらず、これまでは注射剤しかなく、投与に時間がかかることが課題でした。Baqsimiは持ち運び可能ですぐに吸入できます。同剤は日本でも申請中です。
「Accrufer」英シールド
英シールドが開発した鉄剤「Accrufer」(ferric maltol)は、鉄欠乏症に対する鉄補充療法で承認されました。同薬は塩をベースとしない新規の経口鉄剤。従来の鉄塩には悪心や便秘といった副作用があり、静注剤に頼らざるを得ない患者も少なくありませんでした。Accruferは、こうした患者に安全な治療を提供できると期待されます。欧州では既に販売されています。
「Nubeqa」独バイエル
「Nubeqa」(darolutamide)は非転移性の去勢抵抗性前立腺がんで承認。アンドロゲン遮断療法(ADT)との併用療法を評価した臨床試験では、プラセボに比べて無転移生存期間を有意に延長しました。同薬は、フィンランド・オリオンコーポレーションと共同開発した非ステロイド性の経口アンドロゲン受容体阻害薬。日本でも今年3月に申請しています。
【適応拡大】Keytrudaの食道がん、Otezlaのベーチェット病による口腔潰瘍など
「Otezla」米セルジーン
ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬「Otezla」(apremilast)は、新たにベーチェット病による口腔潰瘍の適応で承認されました。2014年に発売した同薬は、尋常性乾癬と乾癬性関節炎を対象に米国で25万人以上に処方されています。日本では17年に25年ぶりの経口乾癬治療薬として発売。ベーチェット病による口腔潰瘍でも申請中です。
「Gadavist」独バイエル
造影剤「Gadavist」(gadobutrol)は、心臓MRIへの適応拡大が承認。虚血性心疾患が疑われる患者の心筋灌流などを評価するために用いられます。日本では15年に「MRI撮影における脳・脊髄造影、躯幹部・四肢造影」の適応で発売。100カ国以上で使用されています。
「Keytruda」米メルク
免疫チェックポイント阻害薬「Keytruda」(pembrolizumab)は、「再発・局所進行または転移性の食道扁平上皮がん」で承認。PD-L1陽性で、少なくとも1回は全身療法以外の治療を受けている患者が対象です。
【バイオシミラー】サムスンのadalimumab、ファイザーのrituximab
「Hadlima」韓サムスンバイオエピス
抗TNFα抗体「Hadlima」は、米国で4つ目のadalimumab(先発品名・Humila、米アッヴィ)のバイオシミラーとして承認。米国では米メルクが商業化を行い、2023年7月以降の発売を予定しています。欧州や韓国などでも承認済みです。
「Ruxience」米ファイザー
抗CD20抗体「Ruxience」はrituximab(Rituxan、米ジェネンテック)のバイオシミラーとして承認されました。米国では18年11月の韓セルトリオンに続き2剤目。欧州でも審査中です。
(亀田真由)