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市場アクセスの優位性を確保するために、製薬会社が開発初期にやるべきこと|DRG海外レポート

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。市場へのアクセスをめぐる環境が厳しくなる中、製薬会社は新薬開発の初期段階で何をすべきなのでしょうか。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

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製薬会社にとって、米国市場へのアクセス環境はかつてないほど厳しいものとなっている。保険者や政策立案者は薬価への圧力を強め、費用対効果に関するデータを要求している。市場へのアクセスを確保するためには、以下に示す問題を開発初期の段階に検討しておく必要がある。

 

安全性・有効性以外の側面にも目を向けているか

製薬会社の研究開発部門にも、開発の初期段階から市場アクセスを考慮する姿勢が不可欠だ。製薬会社のトップは社内の研究開発部門に対し、市場アクセスの課題を解決するような研究を行うよう働きかける必要がある。特に重要なのは、以下の3点だ。

 

・最も重要なのは、医薬品のバリューストーリーの伝達に役立つ臨床試験計画を採用することだ。ここでは、最適な被験者集団を選択すること、測定が用意な臨床転帰を主要評価項目や副次評価項目とすること、アドヒアランスの確保に最も効果的な用法・用量を設定すること、などを検討する必要がある。

 

・研究開発部門は、新薬開発に対する投資が採算のとれるものになっているか判断しなければならない。米タフツ大の調査によると、新薬の開発費用は約26億ドルと推定されている。競合に勝てないとなれば、パイプラインの優先順位の見直しを迫られるかもしれない。採算性の判断には、薬剤給付管理会社(PBM)や保険者の償還戦略をしっかりと理解しておくことが役に立つだろう。

 

・治療のアルゴリズムは急速に変化する。パイプラインを次のステップに進める前に、この点を考慮することが大切だ。

 

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経済性の評価は適切に行われているか

有効性・安全性にとどまらない新薬の価値を訴える際、中心的な役割を担うのがHEOR(Health Economics and Outcomes Research=費用対効果分析とアウトカムリサーチ)だ。従来、中小製薬企業はHEORを外部委託しており、社内で本格的に行うのは臨床第3相試験の結果が出てからだった。しかし、開発の後期段階になってからHEORを行っているようでは、販売面での成功は限られる。

 

米国では、バリューベースの医療費償還という概念が優勢となっており、競合製品と比べて自社製品にはどんな価値があるのか、臨床と経済の両面から証明するために、発売のかなり前から準備をしなければならない。HEOR部門は、次のようなことを考慮しておく必要がある。

 

・臨床試験中に、研究開発チームと共同で医薬品の価値となるエビデンスを示すことは必須だ。HEORチームは、これを活用して、製品の市場アクセスと販売面での成功を支援するロバストなバリューストーリーを構築する。

 

・臨床的に差別化が難しい薬剤が多数発売されるような治療領域では、費用対効果で大きな差をつけることが重要だ。これは、保険者やPBMのフォーミュラリーで有利なポジションを得る上で、極めて大きなポイントとなる。

 

 ・米国でICER(Institute for Clinical and Economic Review=臨床経済的評価研究所)が政府に準ずる医療技術評価機関として存在感を増す中、疾患負担を質調整生存年(QALY)に換算して検討することが必要になる。臨床的に差別化できず、なおかつ価格も高いとなれば、ICERの費用対効果基準を満たせず、保険者ばかりか政府機関からも却下される可能性がある。

 

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・保険者は、薬剤のパフォーマンスと償還を紐付けるアウトカム重視の契約を模索するだろう。われわれの調査によれば、保険者と医薬品メーカーの間でこれまでに約35件のバリューベース評価が結ばれている。HEORチームは、薬剤のアウトカム(例えば、入院件数の減少やアドヒアランスなど)の中から、バリューベース契約への対応に最適な要素を見極める必要がある。

 

保険者の意向に配慮しているか

すでに、医薬品の表示価格は製薬会社の思惑だけでは設定できなくなっている。今後、販売で最大限の成功を収めるには、公式・非公式問わず、保険者の意向に配慮しなければならないだろう。製薬会社の価格設定部門が考慮すべきポイントを挙げる。

 

・開発の初期段階で保険者と対話し、どういった償還戦略がとられるのかを可能な限り把握しておくことが必須となる。保険者の業界では、垂直統合(エクスプレス・スクリプツとシグナ、エトナとCVSなど)や大規模合併(2020年上半期にCenteneとWellcareが合併の予定)が進んでおり、このポイントは重要性を増していると言える。

 

・トランプ政権による薬価抑制策も大きな影響を及ぼす。政策が実行に移されれば、医薬品メーカー間の競争は激しくなり、PBMと製薬会社の間の取引の透明性も高まるだろう。そうなれば、製薬会社は表示価格を抑えざるをえなくなり、患者負担の低下につながる。州レベルではすでに、表示価格や許容最高価格、正味価格の開示を求める80余りの議案が検討されている。こうした状況で投資利益率を最大化するには、より柔軟な価格戦略をとる必要がある。

 

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最適な市場を開拓しているか

アクセスをめぐる交渉には長い時間を要する場合もあるため、マーケティング部門は交渉相手の要となる保険者をあらかじめ見極めておく必要がある。これ以外に、マーケティング部門が検討すべきことには、以下のようなことがある。

 

・地域の医療計画をきちんと理解し、市場シェアや疾患管理計画に関する州特有の情報をつかめば、フォーミュラリーで有利なポジションを獲得することにつながるだろう。

 

・営業・マーケティング部門は、臨床データや経済モデルを理解するだけでなく、自ら費用対効果を分析して保険者と交渉できるよう、スキルを磨いていかなければならない。

 

・医療提供者の勢力図も変化している。営業チームは、どの施設の訪問回数を増やせば利益につながるか、逆にそうではない施設はどこか、といったことを判断しなければならない。

 

まとめ

開発過程では有効性に焦点を当て、成功すれば販売をマーケティングチームに任せ、あとは市場アクセスのハードルをうまく越えてくれるのを祈るだけ、という従来のやり方は、もはや通用しない。研究開発、HEOR、そして営業・マーケティングの各部門が、それぞれの課題として市場アクセスに取り組むことで、絶え間なく変化する米国の市場環境に対応していくことが重要になる。

 

(原文公開日:2019年6月10日)

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

 

【記事に関する問い合わせ先】
ディシジョン・リソーシズ・グループ日本支店
斎藤(カスタマー・エクスペリエンス・マネージャー)
E-mail:ssaito@teamdrg.com
Tel:03-5401-2615(代表)

 

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